以前「レアメタル」で取り上げた希少金属のリサイクルについて、最新技術に関する新聞記事があったので紹介しよう。
(引用開始)
レアメタル回収ザクザク
―果物の皮や古紙利用で吸着剤―
パソコンや携帯電話等には金のほか、プラチナやパラジウムなどレアメタル(希少金属)が含まれ、その廃棄物は「都市鉱山」とも呼ばれる。果物の皮と古紙から摘出した成分を用い希少金属を回収する吸着剤を、佐賀大理工学部の井上勝利教授(機能物質化学)らのグループが開発した。低コストで有害物質も出さないといいう、注目を集めそうだ。
井上教授らは、大量廃棄される小型家電や電子部品に含まれる金属資源を効率的に回収する方法を検討。その結果、身近にあるレモンや柿の皮に含まれるポリフェノールや、古紙が含有するリグニンとセルロースに金属を吸着する性質があることに着目した。
吸着剤は、これらの成分をアミノ基などと化学反応させて開発。管に吸着剤を充てんさせ、塩基で溶かした電気・電子部品の廃液をろ過すると、果実の吸着剤は金を100%回収でき、古紙の吸着剤はプラチナとパラジウムをいずれも80%以上回収できた。
従来の活性炭や高分子樹脂吸着剤は吸着量が少ない上、特定の金属を抽出できなかった。今回開発された吸着剤は、反応させるアミノ基の種類によって一種類の金属を選択的に吸着できる。
また活性炭は大掛かりな排水処理が必要で、高分子樹脂吸着剤はダイオキシンを発生させる弊害があったが、開発された吸着剤は環境に負荷をかけない。
従来の方法に比べ、コストは半分から十分の一で済み、吸着容量も従来の三倍以上という。
井上教授は『安価な材料で価値のあるものを回収できる。循環型社会の一翼を担う技術になれば』と語る。今後は連続的な回収実験を行い、実用化に向けた共同開発の企業を募集する計画だ。
(引用終わり)
<東京新聞「話題の発掘」1/8/2009>
これまで安定成長時代の産業システムとして挙げた、
1. 多品種少量生産
2. 食の地産地消
3. 資源循環
4. 新技術
について、「建築士という仕事」で書いたように、これら四つの産業システムが複数関連したビジネスは、一つだけの場合に比べて、当然時代を牽引する力がより強くなる。今回紹介した「果実吸着剤を使った希少金属リサイクル」は、
1. 多品種少量生産(多種類の金属回収)
2. 資源循環(金属リサイクル)
3. 新技術(果実や古紙を使った吸着剤)
が関連するビジネスであり、これからの時代、重要性が増すだろう。ちなみに、今日の東京新聞(2/17/2009)には、「工業廃水からレアメタルの回収」という記事もあった。
安定成長時代の四つの産業システムのなかでも、「新技術」に関連するビジネスは、他社がなかなか真似できないという意味で特に有望だと思う。これからもいろいろな「新技術」に注目していこう。
この記事へのコメント
それは「大量廃棄」のごとき扱われ方をしている非正規労働者の方々が持っている資質です。
これまでの企業からは人的「資源」とみなされずに捨てられた人々の中に、たとえ微小でも多種多様な資質を見出し、新しいモチベーションやインセンティブによって「化学反応」を起こし、高純度に抽出して「人材」とする−−。
そういう経営の「新技術」といったものは、ないものでしょうか……
コメント有難うございます!
組織のリーダーの大切な役割の一つは人を生かすことですよね。いつか「リーダーの役割」という視点から、モチベーションやインセンティブの問題を考えてみたいと思います。
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