夜間飛行

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エッジ・エフェクト

2009年02月10日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先日「相転移と同期現象」のなかで、“生産と消費の連鎖が同期すると、相転移現象としての社会の活性化が生まれる”と書いたけれど、社会の活性化に役立つもう一つの効果が「エッジ・エフェクト」である。

 エッジ・エフェクトとは、異なるモノが接する界面から新たなコトが生成(融合)するダイナミズムのことを云う。相転移を熱力学的な現象とすれば、エッジ・エフェクトは化学反応的な現象と言えるだろう。チェロ奏者のヨーヨー・マ氏は、「アートビジネス」で紹介した分子生物学者の福岡伸一氏との会談のなかで、

(引用開始)

M (前略)生物学にも、確か2つの生態系が出会う場所で生成される現象を呼ぶ熟語として、「エッジ・エフェクト」という言葉があるよね。
F エッジ・エフェクト……界面作用ですね。
M 生態学的にいうと、森林と砂漠の界面にあるサバンナ、あるいは地政学的(に)いうと、フランスとドイツの界面にあるアルザス・ロレーヌ地方。そういう場所では、何か激しい、そしてすばらしいことが起こる。

(引用終わり)
<「ロハスの思考」福岡伸一著(ソトコト新書)224−225ページより。Mはマ氏、Fは福岡氏。カッコ内は引用者による補足。>

と語っておられる。マ氏自身中国人を両親としてパリで生まれ、間もなく一家でニューヨークへ移り住んだ経歴の人だから、経験的にもエッジ・エフェクトやフュージョン(融合)という概念に触発されるのだろう。

 「マージナル・マン」という言葉がある。「部落問題・人権辞典ウェブ版」から一部引用しよう。

(引用開始)

 異質な諸社会集団のマージン(境域・限界)に立ち、既成のいかなる社会集団にも十分帰属していない人間。境界人、限界人、周辺人などと訳される。マージナル・マンの性格構造や精神構造、その置かれている状況や位置や文化を総称して、マージナリティーと呼ぶ。マージナル・マンの概念は、1920年代の終わり頃に、アメリカの社会学者バークが、ジンメルの<異邦人>の概念(潜在的な放浪者、自分の土地を持たぬ者)の示唆を受けて構築した。(中略)

 マージナル・マンは、自己の内にある文化的・社会的境界性を生かして、生まれ育った社会の自明の理とされている世界観に対して、ある種の距離を置くことが可能である。それゆえにマージナル・マンは、人生や現実に対して創造的に働きかける契機をもっている。

(引用終わり)

 マ氏は、正にこのマージナル・マンとして、「シルクロード・プロジェクト」など、様々な分野で活躍されている。マージナル・マンは、エッジ・エフェクトに敏感だ。私も小学生のときに1年半ニューヨークで暮らし、成人してからも仕事で13年間アメリカに居た経験があるから、マージナル・マンとしての素地があると思う。起業支援などを通して様々な人と知り合うことに意義を感じているのは、きっとそのせいに違いない。今度のフラクターマン氏の講演のお手伝いも楽しみだ。これからもいろいろな「場」でエッジ・エフェクトを機能させていきたい。

 ところでマ氏と福岡氏との会談は、日本におけるマ氏のチェロ演奏会のときに行なわれたものらしく、冒頭、福岡氏が当日の演奏曲目を紹介している。その中に、J・S・バッハ「サラバンド(無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調)」があった。バッハの無伴奏チェロ組曲は全6曲あって、スペインのチェロ奏者パブロ・カザルスの演奏が有名だが、そのビデオの一部が先日NHK・BSの「名曲探偵アマデウス」で紹介されていた。

 「名曲探偵アマデウス」は、元天才指揮者で探偵の天出臼夫と、音感だけは抜群の助手響カノンの二人が、数々のクラシック名曲の謎に挑むという愉快な番組だ。チェリスト古川展生氏の演奏を聴きながら、バッハの特徴とされる三つの旋律の流れ(ポリフォニー)、重音(複数の弦を同時に弾くこと)や開放弦の効果、五弦のチェロなど、曲の特徴やこの曲に纏わる作曲家の想いについて、天出臼夫探偵が(依頼人に対する謎解きの形で)次々に説明していく。

 バッハの無伴奏組曲は勿論ヨーヨー・マ氏も録音している。私の持っているCDは、”Inspired by Bach・The Cello Suites, Yo-Yo Ma”(Sony Records)という題名で、様々なアーティストとのコラボレーションをフィルムにしたときのものだ。”From the Six-Part Film Series”という副題が付いている。そのうち第5番は「希望への苦闘」というタイトルで、歌舞伎俳優・坂東玉三郎の舞踏との共同作品である。

 そういえば、「ホームズとワトソン」で述べた探偵(Resource Planning)と助手(Process Technology)の役割分担は、全体を大局的に俯瞰して事件の謎を解いていく探偵天出臼夫と、与えられた事件の環境に入り込んで天出を助ける役割の助手響カノン、ということで、(だいぶコメディー・タッチだが)この名曲探偵コンビでも見事に描き分けられていて興味深い。

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posted by 茂木賛 at 10:16 | Permalink | Comment(1) | 非線形科学

この記事へのコメント

エッジ・エフェクトのお話、興味深く拝読しました。
京都の友人が案内してくれた東山の六道珍皇寺のことを思い出しました。
ここは平安時代、ある「マージナル・マン」が「エッジ・エフェクト」を生じさせた場所と言えなくもなさそうです。ちょっと試みに書いてみます−−。

むかし東山山麓一帯は鳥辺野と呼ばれた葬送の地で、珍皇寺は洛中と鳥辺野との境に建立されたお寺だそうです。
死者をここに運んでお坊さんに引導を渡してもらい、鳥辺野で鳥葬や風葬に付したそうです。
「人間、死んだら終わり」という価値観では、珍皇寺は最果ての地です。
しかし当時は、人は死後、生前の善行悪行の度合いによって天、人間、修羅、畜生、餓鬼、地獄という六つの冥界のどれかに行くものと信じられていました。
六道珍皇寺は、その六つの道の分岐点、いわば現世と来世の「界面」でした。

このお寺に伝わる最大の人物に、小野篁(おののたかむら)という人がいます。
彼は平安時代初期の嵯峨天皇に仕えた貴族・官僚で、当代きっての文人・歌人でもあり、剣術や馬術にも秀でていたそうです。さらに、そうした才能だけでなく、一度は天皇の怒りに触れて隠岐に流されるものの、復権して官位を上り詰めるという強運やバイタリティも持っていました。
そして、昼間そういう活躍をしただけでなく、夜になると六道珍皇寺の井戸から地獄に降りて、閻魔大王に仕えていたというのです。いわば、界面の両側に通じた「マージナル・マン」でした。

そんな彼は、いま考えると何とも怪しげな人物ですが、当時の人々にとっては人間離れした恐ろしい存在だったに違いありません。
現世と来世の界面に生じる「エッジ・エフェクト」を体現した彼が人々の死生観に与えたインパクトは、現代人の想像を超えるものだったに違いありません。
Posted by 風来閑人 at 2009年02月17日 09:33

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