約一年前、ブログの初回「スモールビジネスの時代」の冒頭で、
「最近、品質や安全の問題が頻発し、高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムが軋みをみせている。大量生産を可能にしたのは、遠くから運ばれる安い原材料と大きな組織だが、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムを牽引するのは、フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネスなのではないだろうか。」
と書いたが、最近大きな会社組織が平気で(派遣を含む)社員を削減するのは、
『以前「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」で、「いくら小さくとも会社は一つの共同体だから、その理念と目的を、社員やお客様、さらには社会に対してわかりやすく伝えることが大切なのである。」と書いたけれど、会社が大きくなってくると、当初定めた理念や目的がはっきりしなくなってくるのである。役員たちがそこで一旦立ち止まって、目的を書き換えるなり(あるいは初心に還るなり)すればよいのだが、特に儲かっていたりするとそれを怠るケースが多い。そしてお金儲けだけが企業の目的のような錯覚に囚われてしまう。』(「カーブアウト II」より)
からでもあろうが、それと同時に、多くの産業で、高度成長時代を支えた「安い原材料と大きな組織による大量生産システム」がいよいよ立ち行かなくなってきたことを示している。
これからの安定成長時代を牽引する産業システムは、「多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術」などであり、今後ますます「フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネス」が注目される筈だ。
雇用について考えてみると、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術などに関わる職能は、大量生産時代に必要とされた職能よりも高付加価値化(単純作業から多機能作業へ転換)するから、今のような移行期には雇用機会の一時的減少が起こる。
大きな組織の雇用調整が加速すれば、社会全体の雇用機会はますます縮小する。ここで雇用を「資源」として捉えれば、資源(雇用機会)が明らかに減少しているということだ。
「競争か協調か」および「競争か協調か II」のなかで考察した、「競争を選ぶか協調を選ぶかは、資源全体の多寡・増減に依る」という原則、即ち「競争」は全体の資源(この場合は「雇用機会」)が豊富にあることを前提としたルールであり、「協調」は資源が少ない場合のルールであるという原則に照らして考えれば、いまの社会が取るべき雇用政策は、「協調戦略」に基づいたものでなければならない筈だ。「チームプレイ」は、資源が限られている場合のルールなのである。
スモールビジネス・サポートセンターのトップページに、「これからの社会は、これまでの競争原理優先主義とは異なり、力を持つ人も持たない人も、共に助け合いながら生きていくことが大切になります。」と掲げてあるのはそういう意味を含んでいる。
一方、上の原則は「系」総体で見ると、(適当な調整機能が働くことが前提だが)構成要素間の循環と、構成要素そのものの多様性を保証する要因ともなりうる。ある立場からして不必要なものも、別の立場から見れば貴重な資源となる場合があるからだ。自然界の食物連鎖はその良い例である。
このことを「雇用機会」に当て嵌めて考えると、社会全体の雇用機会の縮小は、雇用する側からみれば逆に人的資源の増加であり、起業を目指すスモールビジネスは、この状況を(競争戦略に則って)より適した人材を選ぶ好機と捉えるべきだろう。
この記事へのコメント
コメントを書く