先日あるイベントでご一緒した不動産業の方が、都内のコイン・パーキング場について、「競争が無いうちは儲かるのだが、周りに増えてしまうと一挙に赤字に転落してしまう」と嘆いておられた。これを、以前「競争か協調か」の中で考察した、「競争を選ぶか協調を選ぶかは、資源全体の多寡・増減に依る」という原則に照らして考えてみたい。
コイン・パーキング場にとって、「資源全体の多寡・増減」とは、その地域における駐車場の需給バランスのことである。地域の公共政策にもよるが、需要過多であれば、街並みの景観に配慮した上で徐々に供給を増やしていけばよい。バランスが一旦供給過多に傾いたならば、上記原則に照らして、協調戦略へ転移しなければならない。単なる値引き競争だけではいづれ共倒れしてしまうからだ。
さて、コイン・パーキング場の協調戦略にはどのようなものが考えられるだろうか。まず大切なのは「棲み分け戦略」だろう。あるパーキング場はレストランなどと顧客サービス契約を結ぶ。別のところはオフィスなどと契約、他のところは一般の店舗との契約を進める。契約に金は掛かるかもしれないが、単に値引きに走るよりも顧客を奪い合うことが少なくなる筈だ。実際「パーク24」という会社は、鉄道会社と組んで電車利用者に対する割引サービスを行っている。業種別需給バランスを保つことが出来れば、顧客の利便性も向上する。「棲み分け」を地域全体で上手く宣伝すれば、需要それ自体が増える可能性もある。
次に考えられるのは各種「付加価値サービス」だろう。パーキング場が飲み屋街にあれば代走サービス、オフィス街に近ければ洗車サービス、店舗街であれば買い物カート提供サービスなどなど。大事なことは、各企業がそれぞれの起業理念に基づいて、利用顧客の「生産・消費」活動に役立つサービスを編み出すことだ。単に他のところを真似るのではなく、その街と顧客に合った独自のサービスを編み出すこと。そのことは(サービスを他の地域に転用できる可能性もあるから)企業の競争力を高めることにも繋がる。
このようにしてサービスの充実を図っていけば、コイン・パーキングビジネスは一見飽和状態に見える地域でも、産業の活性化に貢献することができる。この場合大切なのは、地域の店舗・産業を巻き込んだ形での「協調戦略」=「チームワーク」なのである。
ちなみに、先日のあるイベントとは、友人が主催した「第3回斑尾国際音楽村Projectライブ」のことである。今年はフィンランドから音楽家のパウリーナ・レルフェ(と妹のハンナマリー・ルーカネン)さんを招待、私は通訳のお手伝い方々参加したのだが、週末二日間のコンサートのほか、フィンランドにちなんだ食事会や料理教室などもあってとても楽しかった。
以前「アートビジネス」のなかで、『アートビジネスは「多品種少量生産」だから、これからの安定成長時代、重要度が増すに違いない。』と書いたけれど、友人は、このような音楽イベントを企画することで、地域を活性化させようと頑張っている。まだまだ「ビジネス」にはならないかもしれないが、これからもできる範囲で彼女を応援していこうと思う。
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