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大正時代の研究

2026年05月27日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 ここのところ、雑誌「文藝春秋」を創った菊池寛の評伝『菊池寛アンド・カンパニー』鹿島茂著(文藝春秋)を皮切りに、

『芥川龍之介』関口安義著(岩波新書)
『羅生門・鼻・芋粥』芥川龍之介著(角川文庫)
『大正幻影』川本三郎著(岩波現代文庫)
『新説 東京地下要塞』秋葉俊著(講談社α文庫)
『日本の本当の黒幕(下)』鬼塚英昭著(成甲書房)
『後藤新平 日本の羅針盤となった男』山岡淳一郎著(草思社)
『原敬』清水唯一郎著(中公新書)
『大正天皇』原武史著(朝日文庫)
『大正天皇』草森紳一/平山周吉共著(コトニ社)

といった大正時代に関する本を再読または初読し、文芸評論『百花深処』の方に、

芥川龍之介の苦闘
東京の地下と後藤新平
戦前の要人暗殺
後藤新平と原敬
原敬と大正天皇

などの各項を綴って来た。

 これらの本を読みながら(そして文芸評論を書きながら)、常に念頭にあったのは、去年「統帥権と国体」の項で書いた明治憲法下の問題、「現人神天皇制」と「統帥権の独立」を、明治元年から45年も経った大正時代、西洋知識を身に付けた新しい人材が、なぜ変更できなかったのかという点であった。主要人物の自殺、病死、暗殺、国際情勢、天災(関東大震災)、守旧派の跋扈、家族制度、経済困難、など要因は多々あっただろうが、藩閥維新政府がつくった理不尽な憲法を人々はなぜ改正できなかったのか。

 私の見るところ、その根本原因は、日本の国家理念を「軍事国家」から「文化国家」へ切り替えられなかったことにあったと思う。西洋列強に伍して領土拡大に走るのではなく、列島古来の自然信仰に基づいた、文化主義による国家統治。理念が変われば、「国民は神なる天皇の赤子」などといった人為的な押し付けは不用になる。

 <原敬と大正天皇>の項で引用した文章に「大正天皇は天衣無縫にして自然の極致。文人、書家であり、馬を愛した人」とあった。大正天皇こそ「文化国家」の理念に相応しかった。「軍部大臣現役武官制」を変更させた大正天皇は、「統帥権の独立」の危険性をも見抜いていただろう。

 明治憲法下において、憲法改正を言い出し得る人物は唯一新しく即位した「天皇」。しかし「大正天皇は江戸時代の大名家にしばしば見られたように、自らの意に反して強制的に「押し込め」られ、天皇としての実権を完全に失うに至ったのである」(『大正天皇』原武史著36ページ)。当時の政府や議会中枢は、国家理念の変更に思いを致さぬまま、宮中における守旧派の跋扈を許してしまった。

 文芸評論で取り上げた主要人物は、みな大正時代から昭和の初めに亡くなっている。

大正05年(1916):夏目漱石没
大正10年(1917):原敬没
大正11年(1922):森鷗外没
大正14年(1925):大正天皇没
昭和02年(1927):芥川龍之介没
昭和04年(1929):後藤新平没

今後は、大正時代から戦前昭和へと視野を広げてさらに研究したい。

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posted by 茂木賛 at 12:48 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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