この11月にビートルズの新曲「Now And Then」がリリースされた。ジョンの元歌(デモレベル)から彼のボーカルとメロディを使って、ポールとリンゴ他がビートルズの曲として完成させたもの。スライドギターはポールだというがリズムギターがジョージか。リンゴのドラムスはいかにも。
この曲、四人が参画しているというだけで貴重だけれど、元歌との比較で違いが二つある。ジョンの元歌ではI miss youの「you」の意味はYokoもしくは母親のJuliaと思われるが、Now And Thenでは元歌にあったI don’t want to lose you〜以下の部分がカットされ、youの意味がビートルズの四人、さらにはリスナーにとっての大切な人などに変っている。このことで「you」という言葉の意味に広がりが生まれた。それが一つ。二つ目は、「now and then」の意味がオリジナルの「時々」という意味から「今と昔」という意味に変化したこと。オフィシャル・ミュージックビデオを見るとそのことが解る。ビートルズ自身や、リスナー一人一人にとっての「今と昔」。このことで曲の時空も広くなった。
新曲は、ジョンの声がクリアーになり、ストリングス、バックコーラスが入ってビートルズの最後の曲らしい出来に仕上がったと思う。YouTubeなどでの再生回数は初日だけで一千万を超えたという。音楽は人々の心を繋ぐ。近づくWWIIIの危機を音楽の力で回避させるべく、何かがこのタイミングでビートルズの最後の曲をリリースさせたようにも感じる。
私がビートルズを聴き始めたのは、1963年から64年にかけてアメリカ・ニューヨークに住んでいた子供の頃のこと。それ以来ずっと彼らの音楽を聴いてきた。それから60年、様々な事があったけれど、いま(AIの力を借りて)こうして彼らの新曲を聴くことが出来るのを率直に喜びたい。
ビートルズの主な年譜は以下の通り。
1962年10月 イギリスにて『Love Me Do』でデビュー
1964年02月 アメリカでエド・サリヴァン・ショーに出演
1966年06月 東京・日本武道館で公演
1969年01月 ロンドン・アップル社でルーフ・トップ・コンサート
1971年03月 解散
1980年12月 ジョン・レノン、ニューヨーク自宅前で射殺される
1995年11月 『The Beatles Anthology』発売開始
2001年11月 ジョージ・ハリソン病死
2021年11月 『The Beatles: Get Back』配信開始
2023年11月 『Now And Then』発表
1962年、ビートルズがリバプールで活動を開始した頃、私は東京西郊に住む野球好きの少年(9歳)だった。それが銀行員だった父親のアメリカ転勤によって63年からニューヨークで暮らすことになった。エド・サリヴァン・ショーに出演するビートルズをテレビで観たのは、ラーチモントにある自宅近くの中華料理店でのこと。それ以来ビートルズとの長い付き合いが始まった。今、私はこの新曲を聴きながら、ビートルズの「今と昔」を自分の「今と昔」に重ねて回想している。
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