過日神田神保町すずらん通りにある「PASSAGE by ALL REVIEWS」という書店に立ち寄った。本棚の一角を個人が借り受けて自分の好きな本を販売するスタイルの古書店で、書評アーカイブサイト「ALL REVIEWS」が運営、プロデュースは仏文学者・鹿島茂氏。氏のTwitterをフォローしているので今年オープンしたこの書店のことを知った。
このブログでは、<書店の力>というカテゴリを設け、以前からモノコト・シフト時代の書店のあり方を探ってきた。モノコト・シフトとは、20世紀の「大量モノ生産・輸送・消費システム」と人のgreed(過剰な財欲と名声欲)が生んだ、「行き過ぎた資本主義」(環境破壊、富の偏在化など)に対する反省として、また、科学の「還元主義的思考」によって生まれた“モノ信仰”の行き詰まりに対する新しい枠組みとして、(動きの見えない“モノ”よりも)動きのある“コト”を大切にする生き方・考え方への関心の高まりを指す。
・「出来事としての書店」(11/2019)
・「書評文化」(8/2014)
・「本の系譜」(11/2011)
・「書籍ビジネス」(12/2009)
・「山の本屋」(7/2009)
・「アートビジネス」(8/2008)
「PASSAGE by ALL REVIEWS」は、私がこれまで書いてきたことを丸ごと実現してくれたような場所で、まさに“読書家のオアシス”、一つひとつの棚をじっくり拝見させていただいた。店内は優雅で心地がよい。入り口は狭いけれど中はなかなか広く、パリの通りの名前が付いた本棚が左右と奥の壁に並ぶ。アーチ状の天井や洒落た照明などデザインも凝っている。中央に置かれた大きな机が人の集合を誘う。場所が世界の古書店街・神保町にあるというのも心豊かにしてくれる要因だ(家賃は高いだろうが!)。棚主同士や顧客との交流も行われるという。日本文化の底力といったようなものを感じ、店を出てからも心地よさがしばし持続した。
私自身ビジネスコンサルとして電子ペーパーや電子書籍に関わってきたこともあって、リアルの紙の本と電子書籍の役割の違いなどについて様々研究してきた。「PASSAGE by ALL REVIEWS」は、リアルの本の販売方法として一つの理想形だと思う。さらなる発展を期待したい。
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