過日、車で街道を走っていて、「ローカル、チェーン、ニューウェーブ」というフレーズが頭に浮かんだ。街道には様々な店が並んでいる。「ローカル」とは地元密着型の店、「チェーン」とはドラッグストアやコンビニなど薄利多売・広域展開の店、「ニューウェーブ」とは時代の先端を行く店、おしゃれなカフェやパン屋など。これらが一か所に混在している「道の駅」などもあるが、それも中を分けて考え、すべてをこの「3の構造」で分類する。業種は問わない。そして、ここが味噌だが、それぞれに「なれの果て」というカテゴリを加える。
(1)ローカル店
(1´)ローカル店のなれの果て
(2)ニューウェーブ店
(2´)ニューウェーブ店のなれの果て
(3)チェーン店
(3´)チェーン店のなれの果て
街道には、歴史的にいってまず(1)があり、そこへ(2)が入ってくる。昔でいえば、蝋燭(ろうそく)屋しかなかったところへ電球を売る店が出来るようなこと。(2)はうまくすればやがて(1)となって地元に溶け込む。(1´)は需要変化への対応や後継者づくりに失敗した店。(2´)は街に溶け込めず、時代からも取り残されてしまった店だ。
大量生産・輸送・消費時代がくると(3)が出現する。人目を惹く派手な店づくりが特徴で、広域スーパーやドラッグストア、コンビニ、ファミレスなどがその代表。(3´)は、期待していた利益が上がらず他所へ移転してしまった店舗跡である。
業種を問わないこの分類は、街道沿いだけでなく街なかにも応用できる。街の賑わいは、地元が元気なことが第一条件だから、全体に占める(1)の比率が大きいことが大切だろう。しかし適度な外からの刺激も大切で、そのためには(2)の存在が欠かせない。また、生活用品の調達先や手軽な食事処として(3)が全くないというのも困る。モールなど(3)の集まった場所は「誰でもない自分」になれる場所としても便利。人は時々そうなりたくなるものだ。街トータルとして考えた場合、比率としては、全体を10として、
(1)5
(2)3
(3)2
ぐらいが適当だろうか。重要なのは、それぞれの「なれの果て」(空き店舗・空きビル・空き地・シャッター通り等)を極力抑えることである。なれの果てを(4)として、
(1)4
(2)3
(3)2
(4)1
ならまあまあいいだろう。これが、
(1)3
(2)2
(3)3
(4)2
になり、
(1)2
(2)2
(3)3
(4)3
という比率になると街は活気を失い始める。
(1)1
(2)1
(3)4
(4)4
となると街は廃墟に近づく。
みなさんの街はいかがだろう。過去から今に至る比率(とそのトレンド)を考えてみていただきたい(分類基準は適時見直すことを前提に「どちらかというと」といった緩いもので構わない)。そして、これを都市計画に活用する。
この発想法は、街の活性化を、目先の税制優遇や住民の自発性に頼る方向ではなく、もっと大局から、街の店舗のバランスを適正水準に保つ方向で人々を引き付けようというものだ。複眼主義の対比、
A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」
B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」
でいえば、A側の発想でやるということ。業種を問わないのは、そちらは地域の特性と需要・供給に任せればいいだろうと割り切って考えるから。
どのようにこのバランスを良くして、「なれの果て」を抑えるか。それにはまず、今の「土地利用よりも土地所有が優先される法体系」(「対抗要件と成立要件」)の見直しが必須なことは言を俟たないだろう。魅力的な街づくりには「原則自由・例外制限」ではなく(構成員の合意に基づく)「原則制限・例外許可」方式が必要なのだ。そのうえで、肌理の細かな方策・条例を設定する。
いかがだろう。一見遠回りのようだが、俯瞰的でなかなか面白い戦略ではないだろうか。尚この比率(とそのトレンド)を考える作業は、都市計画にだけでなく、店舗型スモールビジネスの起業立地を考える上でも役に立つと思う。
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