夜間飛行

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日本語を鍛える

2020年11月16日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 前回「社会と国民」の項で、日本には「国家」はあるが「社会」がない、「世間」はあるが「社会」がない、だから「国民」=「世間」になってしまっているという話をしたが、明治維新以来、150年経っても日本に「社会」がないというのは驚きだ。日本はまだ、個人の自立を確立した西洋近代を通過していないということなのだろう。

 この実態に対して、『同調圧力』や『「社会」のない国、日本』の著者は、まずはその事実を知ること(佐藤直樹氏)、複数の弱い世間に関わること(鴻上尚史氏)、人を差別しないなど身の回りのことから実践する(菊谷和宏氏)といった対処の仕方を述べておられる。空気支配に対しては水を差すのが有効(『「空気」の研究』山本七平著)という話も昔あった。

 このブログでは、日本で個人の自立が果たされないのは、明治期における日本語の近代化の失敗によるところが大きいと論じている。複眼主義の対比、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」
B 女性性=「時間重視」「関係原理」

でいう「日本語的発想」のもととなる今の日本語のことだ。複眼主義ではA側とB側のバランスを大切に考える。今の日本語はうまくA側の「英語的発想」を取り込めていない。だから「公(Public)」の場でも、発想がB側に傾斜してしまう。それが「世間」の蔓延を容認する。この日本語をA側の発想もできるように鍛え直さない限り、水を差すなどの対処法だけでは、これから150年経っても個人の自立は覚束ないだろう。

 江戸時代までの日本は、男手(漢字)と女手(ひらがな)の使い分けによって、AとBのバランスを保っていた。当時は個人ではなく「家」や「藩」の自立ではあったけれど。

 今の日本語をどのように鍛えるか。このブログで提案してきたのは、数詞や感嘆符など、西洋から齎された記号を積極的に主語や存在詞として使用することである。自分や相手を表現するのに1や2といった数詞を使う、存在のbeを表現するのに「!」を使う。詳しくは、

新しい日本語
議論のための日本語
議論のための日本語 II

などの項をご覧いただきたい。これらは「公(Public)」の場で使用される言葉として導入する。「敬語システム」で述べたような日本語の良さは「私(Private)」の場において今まで通り活用する。「会話と対話」の項で述べたような使い分けというと分かり易いかもしれない。

 江戸時代までとは違い、近代国家では自立していなければならないのは「個人」である。その違いはあっても、公的日本語と私的日本語とを分けるという先人の知恵に学ばない手はないと思うがいかがだろう。言語学者でない私には数詞や感嘆符を使うといったことしか今のところ思い浮かばないが、より良い考えがあればご教授いただきたい。

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posted by 茂木賛 at 10:27 | Permalink | Comment(0) | 言葉について

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