「内因性の賦活」の話を続けたい。内因性の賦活が脳のLGSによってもたらされたとするならば、関連するテーマとして、
1.脳の個性
2.賦活の制御
3.脳と社会とのつながり方
4.脳機能の広がり
などが考えられる。順に見ていこう。
1.脳の個性
LGSの基本構造は熱対流によって作られるから、その機能は人によって特有の精度分布を持つ。人の才能や性格はそのバリエーションによる要素が強い。一方、学習はニューロン・ネットワークが担っている。言語や利き腕による脳の活性化領域の違い、LGS機能の習熟効果、奇形などによって、どのような脳の個性(多様性)が人に生じるのか。
2.賦活の制御
小脳における運動学習は、予定通りの結果が生まれるまで学習を促す方向で制御がなされる。内因性の賦活の場合、情報処理が予定通りの結果を生んだかどうかの判断は何に依存するのか。会話の場合は相手の納得、計画の場合は達成度、しかし目に見えるかたちで結論の出ないものは、外因性の賦活による中断、もしくはエネルギー切れによってしか終息しないのか。
3.脳と社会とのつながり方
以前「自由意志の役割」の項で、
(引用開始)
人間社会のおける「ゆらぎ」は、自然環境変化や気候変動、科学技術の発展、歴史や言葉の違い、貧富の差や社会ネットワーク・システムなどなど、それこそ無数の要因(コト)が複雑に絡み合って齎されるが、人の「自由意志」もそれらの要因の大切な一部である。とくに社会の多様性を保つために、人の「自由意志」の果たす役割は大きいと思う。
(引用終了)
と書いたが、社会の「ゆらぎ」としての自由意志と、LGSが持つ「ゆらぎ」との調和、そういう場の設計やdemocracyのあり方について考えたい。
4.脳機能の広がり
言語と音楽や色彩、直感、運動と思考といった、“mind”と“sensory”とのやり取りの諸相も興味深いテーマだ。それはまた脳の個性とどうつながるのか。
今のところ以上だが引き続き考えたい。中田氏亡きあと、LGS仮説を踏まえこれらのテーマを追求する科学者が出ると良いのだが。
参考までに、中田力氏の著作を私の知る範囲で記しておこう。
@ 2001年9月 『脳の方程式 いち・たす・いち』(紀伊國屋書店)
A 2002年8月 『脳の方程式 ぷらす・あるふぁ』(紀伊國屋書店)
B 2002年11月 『天才は冬に生まれる』(光文社新書)
C 2003年7月 『アメリカ臨床医物語』(紀伊國屋書店)
D 2006年8月 『脳のなかの水分子』(紀伊國屋書店)
E 2010年12月 『穆如清風 複雑系と医学の原点』(日本医事新報社)
F 2012年2月 『古代史を科学する』(PHP新書)
G 2014年9月 『科学者が読み解く日本建国史』(PHP新書)
H 2018年11月 『神の遺伝子』(文春e-Books)
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