夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


ホームズとワトソン

2008年09月02日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 以前『現場のビジネス英語「Resource PlanningとProcess Technology」』のなかで、「本来相互補完的であるべきResource Planning とProcess Technologyという二つの方法論が、英語的発想と日本語的発想という対峙をそれぞれのルーツとしているとすると、真の企業経営には、この両者をその両翼の下に宿す強い「包容力」が必要とされる筈だ。」と書いたが、実際問題、経営者が一人でこの両方(Resource Planning、全体を大局的に俯瞰して投資の判断などをすることと、Process Technology、与えられた環境の中へ入り込み技術や工程を改善すること)を熟すのは至難の業といえる。

 そこでこの難しい仕事を二人で役割分担するという発想が生まれる。ソニーの井深大と盛田昭夫、ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫、スタジオジブリの宮崎駿と鈴木敏夫などなど。どちらかが会社のResource Planning(R.P.)を主に担い、もう一人がProcess Technology(P.T.)を主に担うという訳である。この役割分担を、もう少し分かりやすい例を取って考えてみよう。

 たとえばコナン・ドイル描くところの探偵シャーロック・ホームズと医者ジョン・ワトソンのコンビはどうだろう。勿論二人はフィクション上の人物だし経営者ではないけれども、探偵業もR.P.とP.T.の両方を必要とするという意味で企業経営と相通ずるものがあるから、例としては妥当と思われる。

 この場合、ホームズがR.P.、すなわち全体を大局的に俯瞰して事件の謎を解いていく役割であることははっきりしている。ワトソンはP.T.、すなわち与えられた事件環境に入り込んでホームズを助けるのが専らの役割だ。彼は物語の語り手だから、プロット上事件解決に深く関わらないことも多いが、事件の経緯を後から整理して語ること自体がそもそもP.T.的な役割だ。

 ホームズを見ているとR.P.的人間というものがわかる。常識にとらわれることなく、発想が大胆で奇行も多い。孤高を愛し、情熱は心に秘め、態度はいつもクールである。一方、P.T.的人間のワトソンはといえば、常識人であり、正義感が強く、友人のために汗をかくことを厭わない。大局を観るよりもその場その場で全力を尽くす。勿論ワトソンは英国人という設定だから英語的発想から自由ではないが、それでも作品の中では充分P.T.的役割を果たしている。

 さて、ホームズとワトソンの遠い親戚がテレビ朝日「相棒」でコンビを組む杉下右京警部と亀山薫巡査部長である。この場合杉下右京がホームズで亀山薫がワトソンという役割であることはいうまでもない。右京は、常識にとらわれることなく、発想が大胆で奇行も多い。孤高を愛し、情熱は心に秘め、態度はいつもクールである。一方、P.T.的人間の薫はといえば、常識人であり、正義感が強く、友達のために汗をかくことを厭わない。大局を観るよりもその場その場で全力を尽くす。勿論右京は日本人という設定だから日本語的発想から自由ではないが、それでも作品の中では充分R.P.的役割を果たしている。右京にロンドン留学の経験があるという設定も大切な伏線だ。

 以上、ホームズとワトソン、いやもっと身近な「特命係り」の二人を例に取ってR.P.とP.T.の違いを考えてみたが、分かって貰えただろうか。

 ところであなたは、ホームズ派、あるいはワトソン派のどちらだろう。常識にとらわれることなく大胆な発想ができ、よく友達からお前は奇行が多いといわるような人はおそらくホームズ派だ。常識があり友達思い、その場その場で全力を尽くすのがモットー、という人はワトソン派といえる。あなたが何か大きなプロジェクトを始めようと考えていて、自分がホームズ派だとすれば、ワトソン派の相棒を選ぶのがお勧めだ。その逆、自分がワトソン派であれば、相棒にはホームズ派を選ぶ。お互いの長所短所を尊重しながらことに当たれば百戦危うからず。成功の鍵は専ら、いかに信頼できる相棒とめぐり合えるか、ということである。

 因みに、2006年1月から始まった「新訳シャーロック・ホームズ全集」アーサー・コナン・ドイル著・日暮雅通訳(光文社文庫)は、2008年1月をもって全9巻の完結をみた。編集は丁寧で、訳も素晴らしく、全巻ではないがシドニー・パジェットのオリジナル挿絵が見られるのも嬉しい。これからの秋の夜長、スコッチを片手にホームズ全集を紐解くのも悪くない。

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posted by 茂木賛 at 10:43 | Permalink | Comment(0) | 起業論

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