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新しい統治思想の枠組み II

2019年10月05日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「新しい統治思想の枠組み」の項で、21世紀における新しい統治の枠組みを、

<新しい統治思想>
「対象」:日本国
「至高」:自然
「教義」:非線形科学の知見を取り入れたもの(新規起草)
「信仰」:教義を守る
「特徴」:政治による集団救済。代議制民主政体。因果律。

とし、複眼主義の対比、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」
A、a系:デジタル回路思考
世界をモノ(凍結した時空)の集積体としてみる(線形科学)

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」
B 女性性=「時間原理」「関係原理」
B、b系:アナログ回路思考
世界をコト(動きのある時空)の入れ子構造としてみる(非線形科学)

におけるB側の活用を提起したわけだが、それは「幕末史の表と裏」などで述べた、近世のあらまほしき統治思想の骨格、

〇 中央政治(外交・防衛・交易)は預治思想による集権化
〇 地方政治(産業・開拓・利害調整)は天道思想による分権化
〇 文化政策(宗教・芸術)は政治とは切り離して自由化

*「預治思想」=「天命を預かり治める」
*「天道思想」=「自然を敬う考え方」

〇 列島の統治思想では天命=天道とする
〇 天道=自然現象=民意
〇 民意を上手く掬い上げるために代議制を導入する
〇 代議制のベースは家(イエ)とする

の継承を意識したものでもあった。「幕末史の表と裏」ではまた、4つのA側の国家統治能力(父性)、

(1) 騎馬文化(中世武士思想のルーツ)
(2) 乗船文化(武士思想の一側面)
(3) 漢字文化(律令体制の確立)
(4) 西洋文化(キリスト教と合理思想)

と、「反転法」という国家統治には向かないが文化・芸術面で効力を発揮するA側の力を、

〇 中央政治(外交・防衛・交易)
〇 地方政治(産業・開拓・利害調整)
〇 文化政策(宗教・芸術)

に上手く割り振ることの重要性にも言及した。

 今回は、「教義」=“非線形科学の知見を取り入れたもの”について考えを敷衍したい。「教義」とは、その思想の本質を書き記した文章で、非線形科学とは、永続的でなかなか収束しない非線形現象・複雑系の追求だから、非線形科学の知見を教義に取り入れるとは、統治思想の本質をなにか一つの“不変なもの”に置かないということと同義である。

 鴨長明『方丈記』に「行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という言葉があるが、時と共に流れる「河」を「統治思想の本質」と解釈すれば、河の「水」は不変ではないということで、なにか一つの不変なものに固執しない当教義の惹句(キャッチ)として相応しいのではないか。

 また非線形科学には未知なことが多い。だからその知見を取り入れる教義は、断定するのではなく現在進行形のメンタルで起草されなければならないし、実務的な決めごとには、常に“想定外”を見越しておかなければならない。駆動させるシステムには、冗長性(redundancy)の装備がマスト。「日本列島の来歴」の項で述べたように、我々は自然災害の多い列島に暮らしている。この教義の惹句として相応しいもうひとつは、寺田寅彦の「天災は忘れられたる頃来る」という言葉であろう。

 非線形科学の研究成果は昨今、ネットワークや人工知能、医療や気象予報など様々な分野で実用化が進んでいる。たとえば『渋滞学』西成活裕著(新潮選書2006年初版)には、高速道路の渋滞緩和に、複雑系科学の知見が生かされているとある。本カバー裏表紙の紹介文を引用しておこう。

(引用開始)

事故もないのに自然渋滞って、なぜ起きるんだろう?

人混み、車、アリ、インターネット……世の中、渋滞だらけである。生まれたばかりの研究「渋滞学」による分野横断的な発想から、その原因と問題解決の糸口が見えてきた。高速道路の設計のコツから混雑した場所での通路の作り方、動く歩道の新利用法まで。一方で、駅張り広告やお金、森林火災など、停滞が望ましいケースでのヒントにも論及。渋滞は、面白い!

(引用終了)

ニュートン粒子と自己駆動粒子、ASEPモデル、統計力学、セルオートマトン法、インターネットの渋滞、粉粒体、ブラジルナッツ現象、パーコレーション、トポロジー、スモールワールド、スケールフリー、ハブ(Hub)、ゲーム理論、パイこね変換などなど、非線形科学の知見とその工学的成果がこの本には各種報告されている。

 教義に非線形科学の知見を取り入れることによって、選挙や立法、司法、行政といった国の統治システムの刷新が加速する筈だ。選挙の投票率が低いのは国民の意見が統治に反映されにくいということだから、代議制民主政体からすれば一種の情報の渋滞とみる事ができる。それを正すには、渋滞学の知見を選挙制度に生かせばよい。いまの統治システムは社会をモノの集積体として捉えるから、選挙は投票用紙の過半数を取るか取らないかだけしかない。教義という思想の本質に非線形科学の知見を取り入れれば、そういった改善が統治システムの随所で起き始めると思う。

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posted by 茂木賛 at 09:41 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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