このブログではこれまで、健康や栄養素、食品に関する記事をいくつか纏めてきた。
「ビタミンとミネラル」
「発酵食品」
などなど。ここでは、『アミノ酸の科学』櫻庭雅文著(講談社ブルーバックス)によって、タンパク質の元となるアミノ酸について纏めておきたい。
周知のように、タンパク質は人間の臓器や筋肉などの細胞を構成する成分であり、代謝の調整を行うホルモンや酵素を構成する成分でもある。タンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせでできているという。
必須アミノ酸:イソロイシン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、リジン、スレオニン、ロイシン
非必須アミノ酸:アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、システイン、セリン、チロシン、プロリン
の20種類。必須アミノ酸とは、体内で合成することが出来ず一種類でも欠けると重大な栄養障害を起こすものを指し、非必須アミノ酸とは体内で合成できるアミノ酸を指す。
人間の体内には10万種類ものタンパク質があるが、それらがわずか20種類のアミノ酸の組み合せによって作られているとは驚きだ。
アミノ酸を構成している原子は炭素、水素、窒素、酸素、なかには硫黄の入ったものもある。アミノ酸の構成で特徴的なのは、分子内に、アミノ基(−NH2)とカルボキシル基(−COOH)があること。もっとも簡単な構造のアミノ酸はグリシン、最も複雑なものはトリプトファンやヒスチジン(分子構造の中に二種類以上の原子からなる環を持つ)。
グリシンは、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)など、遺伝子情報を司る物質の原料ともなっている。アミノ酸は、タンパク質の構成成分として、また生命の根元として非常に重要な役割を果たしているわけだ。
アミノ酸にはまた、「呈味機能」「栄養機能」「生理機能」「反応性」という四つの基本的機能があり、食品、栄養食品、医薬品、化粧品など、さまざまな分野で用いられている。
「呈味機能」:うまみ調味料、甘味料(アスパルテーム)など
「栄養機能」:アミノ酸輸液、経腸栄養剤など
「生理機能」:各種代謝促進・正常化、胃粘膜生成促進
「反応性」 :医薬品合成、界面活性剤
この本はそれら機能に詳しい。目次の一部を載せておこう。
第1章 アミノ酸とは何か
〇 人間の体は二〇種類のアミノ酸でできている
〇 アミノ酸が体内で果たすさまざまな役割
第2章 スポーツの最前線が変わった
〇 長時間運動してもバテなくなるアミノ酸の効果
〇 気力や集中力の低下にもアミノ酸は効果がある
第3章 美容効果とアミノ酸
〇 必要なものを自在につくり出すアミノ酸
〇 皮膚の柔軟性はアミノ酸の保湿効果で保たれる
第4章 医療を変える力
〇 アミノ酸の低価格化で進歩した「高カロリー輸液療法」
〇 素材、原材料として期待されるアミノ酸
第5章 食べ物とアミノ酸
〇 アミノ酸添加肥料で畜産が変わる
〇 アミノ酸の利用が耕地不足を解決する
第6章 アミノ酸と味覚
〇 うまみの研究では日本は世界の先駆け
〇 発酵食品がおいしい秘密はアミノ酸にあった
第7章 アミノ酸製造法
〇 もっともポピュラーな生産法(発酵法)
〇 今後が期待される生産法(酵素法)
第6章は「発酵食品」の項の内容とも重なる。
アミノ酸は、原始の大気中で出来たというが、落下した隕石からもグリシン、アラニン、グルタミン酸といったアミノ酸が見つかっている。化石や隕石に含まれているアミノ酸に生命の起源の謎を解く鍵がありそうだ。
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