夜間飛行

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新しい家族概念

2018年06月24日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 「江戸時代の土地所有」、「小さな経済圏」と、日本の土地問題、住宅問題について見てきた。モノコト・シフトの時代とはいえ、日本にはまだ古い社会的仕組みが多く残っている。

 モノコト・シフトとは、二十世紀の大量生産システムと人の過剰な財欲による行き過ぎた資本主義への反省として、また、科学の還元主義的思考によるモノ信仰の行き詰まりに対する新しい枠組みとして生まれた、動きの見えないモノよりも動きのあるコトを大切にする生き方、考え方への関心の高まりを指す。

 一方に「建築自由」、公よりも私を優先する土地所有制度があり、もう一方に「一住宅=一家族」、公と私の境界をはっきりさせ私人には公的領域に手を出させない住宅制度がある。この二つの制度を変えない限り、「私」はますます内に閉じ籠り、「公」はますます官僚支配に覆われる。

「私」:高層マンションの一角で携帯ゲームに耽る若者
「公」:勝手に働き方を決め賭博場を作る中央官僚

 「熱狂の時代」の項で書いたように、モノコト・シフトには、暴力を誘発するネガティブな側面がある。いま社会の仕組みを変えないと、そちらが前面に出て、殺人や傷害事件が今よりもさらに増加するだろう。自身への暴力(自傷・自殺)も増える。

 先日「新しい会社概念」の項で、モノコトシフト時代の会社組織について、「よりゆっくり、より近く、より寛容に」という原理を紹介した。「小さな経済圏」の話と併せて考えると、これからの家族概念は、この会社組織のあり方と近接してくるように思えるがいかがだろう。

 モノコトシフト時代の家族の特徴について、以前「新しい家族の枠組み」の項で次のように纏めたことがある。

1.家内領域と公共領域の接近
2.家族構成員相互の理性的関係
3.価値中心主義
4.資質と時間による分業
5.家族の自立性の強調
6.社交の復活
7.非親族への寛容
8.大家族

これは、それより前の「近代家族」が、
 
1.家内領域と公共領域の分離
2.家族構成員相互の強い情緒的関係
3.子供中心主義
4.男は公共領域・女は家内領域という性別分業
5.家族の団体性の強調
6.社交の衰退
7.非親族の排除
8.核家族

という特徴を持つことから考え出したのだが、前者は、「よりゆっくり、より近く、より寛容に」という会社組織のあり方と符合するようにみえる。たとえば、

1.家内領域と公共領域の接近→より近い市場での小商い
2.家族構成員相互の理性的関係→社員間のコンセンサス重視
3.価値中心主義→会社理念の共有
4.資質と時間による分業→社員の適材適所
5.家族の自立性の強調→社員の自主性の強調
6.社交の復活→福利厚生の充実
7.非親族への寛容→多様な社員構成
8.大家族→非儲け主義

のように。

 「新しい会社概念」の項でみたこれまでの会社組織の原理は「より早く、より遠くへ、より合理的に」というもので、これは「近代家族」の特徴と親和性がある。そしてそれは「一住宅=一家族」という住宅政策とリンクする。前回の『脱住宅』序章から引用しよう。

(引用開始)

 一九世紀の産業革命以降、人間の生き方を取り巻く環境が急激に変化しました。なかでも最も大きな変化の一つだと私が思うのは、「一住宅=一家族」という住まい方が一つの普遍性を獲得したことです。一つの家族が一つの住宅に住む、そういった住宅の形式が誕生したこと、そしてこれこそ理想だと多くの人が受け入れていったこと、それこそ「住宅革命」と呼んでいいほどの二〇世紀の大転換であり、二〇世紀を象徴する出来事の一つだと考えています。「一住宅=一家族」という住宅の誕生には、産業革命が大きく影響しています。この住宅は産業労働者のために発明されたからです。(中略)
 その平穏な生活は労働者側からも、理想的な生活だと考えられました。労働者にとっては、仕事から離れ、家族のプライバシーを守りながら安らかに過ごせる空間ですから、喜んでこれを受け入れたのです。一方、供給者側にとってはすべての労働者に同じような住宅を供給することで、同じような家族が再生産されます。つまりばらつきのない均一な労働力を継続的に確保することができるわけです。そしてそれはそのままばらつきのない均一な製品に結びつきます。直接的に利潤に結びつくと考えられたわけです。一九世紀の産業資本家たちのこうした考え方は、第一次世界大戦後のヨーロッパ諸国の国家に運営システムにも大きな影響を与えました。

(引用終了)
<同書 14ページ>

 「私」を外の「公」へ向かわせ、「公」を「私」のneedsに向かわせる。「私」が「公」を支え、「公」が「私」を守る社会。閾や広場の必要性。ヒューマン・スケールの小商いと小さな経済圏としての住宅。多様な家族。会社組織と家族組織の近接。ここまで考えてくると、新しい時代の会社と家族は、「教義と信仰」の項で紹介した、徳川幕府が導入した「家(イエ)」というユニークなシステムと重なってくる。あるいは「デンマークという幸せの国」でみた北欧の国々の先進性。いづれにしてもこれからの日本には大きな社会変革が求められるだろう。さらに研究したい。

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posted by 茂木賛 at 10:53 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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