夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


評伝小説二作

2018年05月05日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 前回「音楽活動その他」の項で、列島における父性(国家統治能力)の系譜を辿る研究の一環として江戸時代の思想家たちに嵌っている、と書いた。読んでいるのは、思想家たち自身の著書(現代語訳)や彼らに関する評論が主だが、彼らを主人公にした評伝小説も、思想背景や時代の雰囲気を知る上で参考になる。興味をお持ちの方のために、ここで、最近私が読んだ二作品を紹介したい。

 一作目は、新井白石(1657−1725)を描いた『新装版 市塵(上)(下)』藤沢周平著(講談社文庫)。カバー裏表紙の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 貧しい浪人生活から儒者、歴史家としてようやく甲府藩の召し抱えられた新井白石は、綱吉の死後、六代将軍家宣となった藩主とともに天下の経営にのり出していく。和漢の学に精通し、幕藩改革の理想に燃えたが、守旧派の抵抗は執拗だった、政治家としても抜群の力量を発揮した白石の生涯を描く長編感動作。(上)

 内政外交の両面で新井白石は難題に挑んでいく。綱吉時代に乱れた経済立て直しのための通貨改革、朝鮮使節との交渉。国のため、民のために正論を吐く白石だが、その活躍ぶりを快く思わない政敵も増えた。そんななか、白石を全面的に庇護してきた家宣の死で、白石の運命は、また大きく変わることとなった。(下)

(引用終了)
<フリガナ省略>

藤沢周平の略歴をカバー表紙裏から引用しておく。

(引用開始)

1927年、山形県生まれ。’73年「暗殺の年輪」で直木賞を受賞し人気作家となった。’86年「白き瓶」で吉川英二文学賞、’90年「市塵」で芸術選奨文部大臣賞。’97年、69歳で死去。上杉鷹山を描いた「漆の実のみのる国」が絶筆となった。

(引用終了)

このブログでは、以前「庄内弁の小説」の項で、氏の『春秋山伏記』を紹介したことがある。

 二作目は、荻生徂徠(1666−1728)を描いた『知の巨人 荻生徂徠伝』佐藤雅美著(角川文庫)。こちらもカバー裏表紙の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 江戸時代中期、儒学の世界を根底から覆した学者、荻生徂徠。幼い頃から書物に親しみ、父の江戸追放で上総に逼塞するも、独学で学問を身につける。その才と学識の深さから柳沢吉保に取り立てられ、徳川吉宗の政治にも影響を与えた。貧困、学者からの無視、妬み交じりの反撥……どんな苦境にも学問への情熱を絶やさず、近代思想の礎を築いた不屈の天才。彼が追い求めた思想と、その生き様を描いた歴史小説の金字塔。解説・宇野重規

(引用終了)

佐藤雅美の略歴もカバー表紙裏から引用しておく。

(引用開始)

1941年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。雑誌記者を経て作家となる。85年『大君の通貨』で第4回新田次郎文学賞、94年『恵比寿屋吉兵衛手控え』で第110回直木賞を受賞。主な近著に、『御奉行の頭の火照り 物書同心居眠り紋蔵』『美女二万両強奪のからくり縮尻鏡三郎』等がある。

(引用終了)

 新井白石と荻生徂徠、二人は徳川時代中期、四代将軍家綱から八代吉宗までの時代を共に生きた。年齢差は9歳(白石が年長)。しかし白石は徂徠を「風変わりなことをやるただの酔狂者」と見ていたようだし、徂徠は白石のことを文盲と罵っている((『知の巨人 荻生徂徠伝』193−194ページ)。駄目な組織は、バカが仲良く連(つる)んでいるかリコウが反目しあっているかだというけれど、徳川幕府の衰退(「内的要因と外的要因」)は、すでにこの時期にその萌芽があったのかもしれない。二人が膝を突き合わせて徳川幕府の正当性などを論じてくれていたらその後の列島の歴史も変わっていただろうに。二人の考え方の違いについては、『荻生徂徠「政談」現代語訳』尾藤正英抄訳(講談社学術文庫)に載っている訳者の「国家主義の祖型としての徂徠」が興味深い。

 『市塵(上)(下)』と『知の巨人 荻生徂徠伝』、思想家の評伝だから内容は地味だが、どちらも文芸評論(『百花深処』)で展開している列島の父性(国家統治能力)の系譜を巡る研究に役立たせてもらった。そちらも併せて読んでみて戴きたい。そういえば、思想家以外の評伝、「経営の落とし穴」で紹介した『天地明察』(数学者・渋川春海の評伝)も、徳川時代を考える上で大いに参考になった。同じ作家(冲方丁)の『光圀伝(上)(下)』(角川文庫)、あるいは藤沢周平の『漆の実のみのる国(上)(下)』(文春文庫)なども面白そうだ。入手して読んでみたい。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 10:26 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

この記事へのコメント

コメントを書く

お名前(必須)

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント(必須)

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

夜間飛行について

運営者茂木賛の写真
スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)主宰の茂木賛です。世の中には間違った常識がいっぱい転がっています。「夜間飛行」は、私が本当だと思うことを世の常識にとらわれずに書いていきます。共感していただけることなどありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

Facebookページ:SMR
Twitter:@sanmotegi


アーカイブ

スモールビジネス・サポートセンターのバナー

スモールビジネス・サポートセンター

スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)は、茂木賛が主宰する、自分の力でスモールビジネスを立ち上げたい人の為の支援サービスです。

茂木賛の小説

僕のH2O

大学生の勉が始めた「まだ名前のついていないこと」って何?

Kindleストア
パブーストア

茂木賛の世界

茂木賛が代表取締役を務めるサンモテギ・リサーチ・インク(通称SMR)が提供する電子書籍コンテンツ・サイト(無償)。
茂木賛が自ら書き下ろす「オリジナル作品集」、古今東西の優れた短編小説を掲載する「短編小説館」、の二つから構成されています。

サンモテギ・リサーチ・インク

Copyright © San Motegi Research Inc. All rights reserved.
Powered by さくらのブログ