夜間飛行

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対抗要件と成立要件

2017年09月23日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『人口減少時代の土地問題』吉原祥子著(中公新書)という本を一気に読んだ。副題には“「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ”とある。まず本帯のキャッチコピーとカバー裏の紹介文とを引用しよう。

(引用開始)

空き家、相続放棄の問題が、農村から都市へ拡大している
持ち主がわからない土地が九州の面積を超えている――。

日本の私有地の約20%で、所有者がわからない――。持ち主の居所や生死が判明しない土地の「所有者不明化」。この問題が農村から都市に広がっている。空き家、耕作放棄地問題の本質であり、人口増前提だった日本の土地制度の矛盾の露呈だ。過疎化、面倒な手続き、地価の下落による相続放棄、国・自治体の受け取り拒否などで急増している。本書はその実情から、相続・登記など問題の根源、行政の解決断念の実態までを描く。

(引用終了)

 このブログでは、空き家問題についていろいろと論じてきたけれど、その根底には「土地問題」があると感じていた。「建築自由と建築不自由」で書いたように、日本の憲法の土地所有権は、“土地は本来基本的に自由なのであって、これが制約を受けるのは、その利用が他者を害する時だけであるとし、この他者への侵害を「公共の福祉」として捉え直し、これを法的に構成した”ものだからである。「土地問題」に切り込んだ本書は、だからとても重要かつタイムリーな企画といえるだろう。新聞の書評を紹介しよう。

(引用開始)

有効利用へ実態解明と問題提起

 きっかけは、外資の森林買い占めだった。北海道庁は土地売買の事前届け出を義務づけ、登記簿上の土地所有者4千人余に通知した。だが、その45%が宛先不明で戻ってくる。こうした土地の「所有者不明化」問題はいまや全国に広がり、面積にして九州を上回る。土地はちゃんと登記され、国や自治体が管理しているはずという著者の思い込みは覆される。「なぜこんなことに」という疑問から、この研究プロジェクトが始まった。
 背後には、土地の相続登記が任意だという事情がある。登記手続きは煩雑で、費用もかかる。しかも、登記しなくても不都合はない。これでは、放置される。世代交代が進めば法定相続人がねずみ算的に増え、所有者の関心は低下し、自分の森林の場所や境界すら分からなくなる。
 これは今、林業の現場で大問題となっている。荒れた森林に手を入れたくとも、所有者が不明で手が付けられないのだ。また、震災復興事業をはじめ全国で様々な事業が、土地の権利関係の確定に膨大な時間と労力を要するため、遅れたり暗礁に乗り上げたりしている。まずは所有者の確定を、次に、基盤となる土地情報システムの整備が急務、と著者は強調する。
 しかし根底には、人口減少で土地需要が縮小し、大都市圏を除いて、もはや地価が上がらないという構造要因がある。土地は有利な資産ではなくなり、登記の必要性は低下した。にもかかわらず、所有者不明で有効活用できない土地・不動産は、今後さらに拡大する見込みだ。
 こうなれば、農林業の集約化や空き家活用によるまちづくりなどが、所有権の壁にぶつかって進まなくなる。本書は「強すぎる所有権」ゆえ、土地・不動産の有効利用が進まない実態を浮かび上がらせた。これは究極的に、「所有権と利用権の分離」というラディカルな思考にもつながっていく重要な問題提起だ。(諸富徹)

(引用終了)
<朝日新聞 9/3/2017>

 著者は、土地利用について欧米と日本を比較し次のように述べる。日本の土地問題は、明治政府がフランス民法を手本にしたことに遡るらしい。

(引用開始)

 欧米を見ると、厳格な利用規制などによって個人の土地所有権に一定の制約を課している国が多い。
 土地には本来、その用途たる使用目的があるもので、土地所有者はどこまでも自由に利用し、または利用しないことができるものではない、という考え方が基本にある。
 明治時代に日本が民法を制定する上で手本としたフランスは、土地の使用、収益、処分のいすれについても所有権者個人の自由であるという、いわゆる絶対的所有権の考え方をとっている。
 しかし、土地需要が逼迫した高度成長期の1950年代以降、個人の所有権に一定の制限を課し、必要な公的利用が円滑に進むよう制度改正が重ねられてきているという。

(引用終了)
<同書 124ページ(フリガナ省略)>

フランス法は「不動産などの売買による権利の変動は、当事者間の契約によって成立する。ただし、第三者に権利を主張するためには登記を必要とする」という考え方で、こうした登記の性質は「対抗要件」と呼ばれる。これは、登記をしないと権利の変動そのものが成立しないとするドイツ法の考え方とは異なる(こちらは「成立要件」と呼ばれる)。この「対抗要件」の考え方が、日本の憲法における「建築自由」の基にあるわけだ。

 フランスは制度改正を進めているが日本はそのまま。土地の利用よりも所有が優先する日本のような状況は、現在、先進諸外国では類を見ないものだと著者はいう。土地問題の解決は、国家経営の重要課題の一つである。それがなおざりにされ続けている。<日本の戦後の父性不在>がここにも顕現していると思う。

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posted by 茂木賛 at 10:06 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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