夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


ヒト・モノ・カネの複合統治 II

2017年06月11日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 65歳になってビジネス・コンサルは休業したが、webサイトはそのままにし、このブログも(以前近々終わると書いたが)時々アップしようと思う。

 先日『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』水野和夫著(集英社新書)という本を読んだ。水野氏の著書については、今年の初め「新しい会社概念」の中で、『株式会社の終焉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を紹介したことがあるが、本書は、そこでの議論を踏まえて、近未来のnationとstateの在り方について論じたものとなっている。

nation:文化や言語、宗教や歴史を共有する人の集団(民族・国民)
state:その集団の居場所と機構

(引用開始)

資本主義の終焉によって、世界経済の「常識」が逆転した。経済成長を追及すると、企業は巨大な損失を被り、国家は秩序を失う時代になったのだ。生き残るのは、「閉じた経済圏」を確立した「帝国」だけである。
「長い21世紀」という五百年ぶりの大転換期に始まる、新しい「帝国」システム。そのもとで、英米・欧州・中露の経済はどう変わるのか? 日本を救い出す方策とは何か?ベストセラー『資本主義の終焉と歴史の危機』で高い評価を受けたエコノミストが描く、瞠目の近未来図!

<目次>
1 「国民国家」では乗り越えられない「歴史の危機」
2 例外状況の日常化と近代の逆説
3 生き残るのは「閉じた帝国」
4 ゼロ金利国・日独の分岐点と中国の帝国化
5 「無限空間」の消滅がもたらす「新中世」
6 日本の決断――近代システムとゆっくり手を切るために

(引用終了)
<同書カバー裏表紙より>

 水野氏は本書の中で、「閉じた地域帝国」と「地方政府」という二つの統治システムを提言しておられる。「新しい会社概念」の項で見たように、「より速く・より遠く・より合理的に」を原理とするグローバリゼーションが限界を迎え、「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」を原理とするローカルな経済圏が必要とされる中、近代の「国民国家」は、国際的な政治経済単位としては小さすぎ、人々の生活単位としては大きすぎる。だからそれを解決する手段として、

「閉じた地域帝国」:EUのような陸の広域経済連携
「地方政府」:ローカルな閉じた定常経済圏

という二層からなる統治システムが望まれるというわけだ。「地域帝国」は世界秩序に責任を持ち、「地方政府」は人々の日々の生活を守る。

 私も以前「nationとstate」の項で、

(引用開始)

 まずnationについて考えてみよう。(中略)総じて、今のnationという括りは、これからより分裂圧力を高めると思われる。スペインのバスクとカタルーニア地方、イタリアの北部同盟、イギリスのスコットランド、日本の沖縄などなど。そもそも1991年のソ連崩壊はその前兆だったのかもしれない。

 次にstateについて考えてみよう。(中略)nation(民族・国民)という括りへの分裂圧力と、ヒト・モノ・カネの流動性の強まり。そういう時代、state(集団の居場所・機構)の統治は、昔に較べて、遥かに複雑なものにならざるを得ないと思われる。その一例が欧州連合(EU)の統一通貨政策だろう。ヒト・モノとマネー管理を分離することで複雑な時代に対応しようとしているわけだ。

 これからのstateの統治のあり方は、他の地域でも、EU方式の延長線上にあるのではないだろうか。すなわち、ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること。それが、これからのstateの統治に求められるのではないだろうか。ヒト・モノ・カネを一元的に管理・運営しようとする(民族国家のような)統治は、これからの時代にそぐわないものになってきていることは確かだと思われる。

(引用終了)

と書いたことがある。また「経済の三層構造」の項で、

「コト経済」

a: 生命の営みそのもの
b: それ以外、人と外部との相互作用全般

「モノ経済」

a: 生活必需品
b: それ以外、商品の交通全般

「マネー経済」

a: 社会にモノを循環させる潤滑剤
b: 利潤を生み出す会計システム

という三つのレイヤーを定義し、「ヒト・モノ・カネの複合統治」の項でこれからのnationとstateの在り方を探った。さらに、「国家の理念(Mission)」の項で日本国家の理念について述べた。「地方state」、「日本列島united states」、「アジア広域経済連携」という三層の統治機構を想定していたのだが、水野氏の考えを援用すれば、中間の「日本列島united states」は不必要かもしれない。

 新しい世界における「地方政府」と「広域経済連携」、その上位にある「地球規模交易」の三層。それは、「コト経済」、「モノ経済」、「マネー経済」の経済三層と入り組みながら対応し、人々の暮らしと世界秩序の安定に寄与する。このような複合統治では、それに見合った多重通貨が必要になると思う。どういう通貨を、どんな機能によって、どこで流通させるのか。その価値交換の仕組みは?これからも、統治の在り方についていろいろと研究したい。

 尚、電子書籍コンテンツ・サイト(無償)『茂木賛の世界』の方も続けている。併せてお読みいただきたい。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 10:54 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

この記事へのコメント

コメントを書く

お名前(必須)

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント(必須)

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

夜間飛行について

運営者茂木賛の写真
スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)主宰の茂木賛です。世の中には間違った常識がいっぱい転がっています。「夜間飛行」は、私が本当だと思うことを世の常識にとらわれずに書いていきます。共感していただけることなどありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

Facebookページ:SMR
Twitter:@sanmotegi


アーカイブ

スモールビジネス・サポートセンターのバナー

スモールビジネス・サポートセンター

スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)は、茂木賛が主宰する、自分の力でスモールビジネスを立ち上げたい人の為の支援サービスです。

茂木賛の小説

僕のH2O

大学生の勉が始めた「まだ名前のついていないこと」って何?

Kindleストア
パブーストア

茂木賛の世界

茂木賛が代表取締役を務めるサンモテギ・リサーチ・インク(通称SMR)が提供する電子書籍コンテンツ・サイト(無償)。
茂木賛が自ら書き下ろす「オリジナル作品集」、古今東西の優れた短編小説を掲載する「短編小説館」、の二つから構成されています。

サンモテギ・リサーチ・インク

Copyright © San Motegi Research Inc. All rights reserved.
Powered by さくらのブログ