前回「都市の理念(Mission)」の項で、「上位の国家理念についてはこれからの研究課題である」と書いたけれど、今回はそのこと(国家理念)について考えてみたい。言葉の定義は、
---------------------------------------------
「国民(nation)」:文化や言語、宗教や歴史を共有する人々の集団。
「国家(state)」:国民の居場所と機構。
「国家理念(state Mission)」:国家がどのような分野で、どのように世界へ貢献しようとするのかを表現した声明文。
---------------------------------------------
としよう。日本列島の国家(state)は、列島国民の居場所と機構であり、その理念(Mission)は、国民の多数決(もしくはそれ以上の比率による議決)によって定められる。国家は理念に賛同しない国民をも包摂し、その理念は、継続的に国民に問い直されなければならない。
このブログでは、21世紀は「モノコト・シフト」の時代であると主張してきた。モノコト・シフトとは、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」の略で、20世紀の大量生産システムと人の過剰な財欲(greed)による「行き過ぎた資本主義」への反省として、また、科学の還元主義的思考による「モノ信仰」の行き詰まりに対する新しい枠組みとして生まれた、(動きの見えないモノよりも)動きのあるコトを大切にする生き方、考え方への関心の高まりを指す。
このブログで提唱している複眼主義の対比、
A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」−「都市」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」
B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」−「自然」
B 女性性=「時間重視」「関係原理」
でいえば、人々の気持ちがB側へ傾斜する時代といえる。複眼主義ではAとBのバランスを大切に考える。
これからの日本の国家の理念(どのような分野で、どのように世界へ貢献しようとするのかを表現した声明文)は、
〇 そもそも日本語的発想がB側に強いこと
〇 モノコト・シフトという時代的要請
を踏まえ、B側の力をアピールするものでなければならないだろう。また、日本列島はアジアに位置しているから、当然、アジアの安定、文化的発展に貢献することが求められる。これまで考えてきた「流域思想」や「庭園・芸術都市」といった都市の理念と整合的であることも担保したい。
● ものづくりの技(プロセス)を極める
● 日本語的発想による文化や芸術を世界へ広める
● 列島の豊かな自然を守り育む
● 水や海に関する最先端技術を開発する
● 身体の働きを生かした医療を探求する
● 各分野で「時間原理」「関係原理」の発展を支える
などが思い浮かぶ。詳細についてこれからも研究を重ねたい。
この記事へのコメント
コメントを書く