ビジネス・コンサルタントとして日本の都市計画を考えるとき、一番欠けているのは「都市の理念(Mission)」ではないかと思う。会社経営の一丁目一番地が「理念(Mission)と目的(Objective)」の明確化であることはこれまで繰り返し述べてきた。このブログにおける言葉の定義は、
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「理念(Mission)」:その会社がどのような分野で、どのように社会へ貢献しようとするのかを表現した声明文。
「目的(Objective)」:その会社が具体的に何を達成したいのかを纏めた文章で、理念の次に大切なもの。
「事業(business)」:会社の「目的(Objectives)」の実現手段。
「目標(goals)」:事業の達成ゴール。年度別、月別など。いつ頃までに何をするのか。事業の最終目標を予め明らかにしておくことも大切。事業の最終目標は、何を達成したらその事業をやめるかという目標であって、売却のためのいわゆる出口戦略(exit strategy)とは違う。
「ビジネスモデル」:「事業と目標」のこと。
「企業戦略(corporate strategy)」:会社の資産(asset)と市場とを分析し、最適なビジネスモデルを考えること。
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である。勿論会社経営のための定義だから「会社」という言葉が頭に付くが、会社も都市も人の集団であってみれば、都市統治に関しても同様なものを定めることができるはずだ。例えば、
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「理念(Mission)」:その都市がどのような分野で、どのように国家・地域へ貢献しようとするのかを表現した声明文。
「目的(Objective)」:その都市が具体的に何を達成したいのかを纏めた文章で、理念の次に大切なもの。
「事業(business)」:都市の「目的(Objectives)」の実現手段。
「目標(goals)」:事業の達成ゴール。年度別、月別など。いつ頃までに何をするのか。事業の最終目標を予め明らかにしておくことも大切。事業の最終目標は、何を達成したらその事業をやめるかという目標であって、売却のためのいわゆる出口戦略(exit strategy)とは違う。
「ビジネスモデル」:「事業と目標」のこと。
「都市戦略(city strategy)」:都市の資産(asset)と社会環境とを分析し、最適なビジネスモデルを考えること。
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といった内容だ。都市の立地や歴史、産物や風土、産業などによって特色がでてくるはずで、それによって都市の多様性が担保される。
会社と都市の違いは、前者は気に入らなければ退社できるが、後者は気に入らないからといって簡単に離れられないこと。だから都市は、多数決で定めた理念に賛同しない市民をも包摂し、その理念について、継続的に市民に問い直さなければならない。そのプロセスは必要だが、統治するのに「理念」がなくても良いということではないと考える。
ここで難しいのは、「国家・地域」との関係だ。「国家−地域−都市」という繋がりにおいて、都市の理念は、その上位にある「国家・地域」理念の一部を成すはずだから、「国家・地域」理念が見えないと、本当は都市の理念も作れない。日本でこれまで都市計画が不在なのは、一つには、「国家・地域」の理念が見えないからではないのか。
国民や国家についてこれまで、「nationとstate」の項で、
「国民」=「文化や言語、宗教や歴史を共有する人々の集団」
「国家」=「国民の居場所と機構」
という定義を、「ヒト・モノ・カネの複合統治」で統治の例を、「国家理念の実現」や<日本の戦後の父性不在>の項で、日本の国家理念不在を見てきた。
国家理念が不在だから、都市の理念も形成しづらい。都市理念が形成しにくく不在だから、都市計画の方針も定められない。そういう大きな因果関係があるのではないか。私なりの都市の理念については「流域思想」や「庭園・芸術都市」の項などで語ってきたけれど、上位の国家理念についてはこれからの研究課題である。
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