今年の夏、『生命記憶を探る旅』西原克成著(河出書房新社)という本が出版された。著者の西原氏については、以前「重力進化学」の項でその理論を紹介したことがある。本書は、三木成夫の生命形態学を丁寧に概観した上で、西原氏が継承・発展させた理論(重力進化学)をわかりやすく解説したもの。副題に「三木成夫を読み解く」とある。三木成夫については「三木生命形態学」の項などをお読みいただきたい。
本書の目次は以下の通りとなっている。
序章 「胎児の世界」が指し示す生命の歴史
第1章 三木成夫だけが見抜いていた科学的な真実
第2章 ダーウィニズムからの脱却
第3章 三木成夫の生命の形態学を検証する
第4章 わが「重力進化学」は三木学説の発展形
第5章 「生命記憶」を探る巡礼の旅は終わらず
終章 人類が滅亡の渦から逃れるために
どの章も読みごたえがあり熟読をお勧めするが、ここでは健康体とエネルギーの関係を簡潔に纏めた次の文章を引用しておく。
(引用開始)
健康体とエネルギーの関係について考えると、エネルギーは大略以下の6種類に分類されます。
1 「環境エネルギー」のすべて(重力も含む)。
2 動物の動きで生ずる「生命体エネルギー」(重力作用との合成ベクトルがはたらく)。
3 細胞内に存在する「生命体内の小生命体」、ミトコンドリアによっておこなわれる生命エネルギー産生のための「細胞呼吸」、すなわち「エネルギー代謝」。
4 超多細胞・多臓器の生命体の、統一個体の制御システムにおいてはたらく、「脳下垂体の情報たんぱく質系とミトコンドリアのエネルギー代謝との相互作用」。
5 血液の「流体力学エネルギー」と共役して生じる、流体電位と心臓脈管系と骨格筋肉細胞との相互作用。
6 時間作用で起こる、細胞の「モデリング」の様態。すなわち、成長・発育・維持・老化・衰弱・疾病。
このほか、量子物理学の盲点の克服による物質とエネルギーで構成される宇宙の実相の正しい理解、つまり「宇宙は質量のある“物質”と、エネルギーである“空間”と“時間”から成り立つ、シンプルなものである」ということに対する理解が必須です。
〇とくに重要なことは、質量のある物質のもつ3つの側面が、「光」と「重力」と「熱」という、3種類の「エネルギー」であること。
〇そして、量子物理学は、ただ単に質量のある元素を構成する原子の構造と、それをとりまくエネルギーとの関係を観察しているにすぎない学問だということ。
(引用終了)
<同書 182−183ページ>
氏の理論のエッセンスが籠められていると思う。
ウェゲナーの大陸移動説ではないが、スケールの大きな新しい理論が世に受け入れられるまでには月日がかかる。三木成夫の生命形態学や西原克成氏の重力進化学(そして私の反重力美学)がそうなる(世間に受け入れられる)にはまだしばらくかかるのかもしれない。上の文章も一読難解だが、「モノ」に固執したこれまでの近代科学を相対化し、「コト」の重要性に気付けば素直に理解できる筈だ。このブログは間もなく終わるけれど、ここまで読み進めてきた皆さんの中から、新しい理論の理解者が生まれることを願っている。
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