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文化財的家づくり

2016年09月21日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『いい家は無垢(むく)の木と漆喰(しっくい)で建てる』神ア隆洋著(文春文庫)という本を有意義に感じながら読んだ。本カバーの裏表紙から紹介文を引用しよう。

(引用開始)

紙とビニールで作られた幅木、中身がボール紙のドア、重くて耐久性のないセメント瓦――住宅メーカーの言いなりになるとこんなひどい材料の家にされてしまう。無垢の木と漆喰を使った家こそが「いい家」であるという信念で自然素材を使った住宅を造ってきた著者が、理想の家とは何かを豊富な実例を使って明らかにする。

(引用終了)

 無垢の木を使うとは、青森ヒバやヒノキ、松などの材木をそのまま角材や板として使うことだ。合板よりも強度があり美しい。漆喰とは、石灰を焼いて生石灰にしさらに水を吹きかけて消石灰にしたもの。ビニールクロスなどよりも清潔で味わいがある。無垢の木と漆喰の組み合わせは調湿作用があり身体にもよいという。目次よりいくつか本の内容を示す言葉を拾ってみる。

(引用開始)

● 合板フローリングの床で「いい家」と言えるのか
● 集成材や米ツガの土台にビックリ
● 「いい家」は自然素材を使って建てる
● なぜ木は温かくすぐれた断熱材なのか
● 漆喰はなぜ快適な住まいを造るのか
● 有名メーカーだから素材も良質は限らない
● 無垢と合板のフローリングを比べてみる
● なぜ土台に青森ヒバが優れているのか
● 使い勝手のいいキッチンのレイアウト
● 床暖房は借金してでも入れる価値がある
● 長く住み継がれる文化財的家づくりを目指して

(引用終了)
<同書帯裏表紙より>

 このブログでは、これからの日本の街づくりに必要なコンセプトとして、「庭園・芸術都市」(庭園や里山、邸宅美術館や芸術劇場を持つ流域都市)を提唱しているが、その住宅には、長く住み続けることができるこういった家屋が相応しいと思う。 

 同書第4章「後悔しない家づくりの知恵」から神ア氏の言葉を引用したい。無垢の木、漆喰、石、タイルなどの自然素材を使うことは、文化財的家づくりの原点であるという。

(引用開始)

 これまでにたくさんの家を建てさせていただいたが、多くの建築主が、「住み心地がいい」「快適な家」と言ってくださる。これは、無垢の木と漆喰をはじめとする自然素材の力のおかげである。
 文化財というと、法隆寺など歴史のある貴重な建造物が思い浮かぶ。後世の人がいい建築だとその価値を認めてくれれば、文化財となる。家づくりも同じである。今の流行の建物が、今後も末永く生き延びるものなのか、疑問を感じる。
 合板や木片を接着剤で固めた新建材、ポリウレタン、ポリスチレンなど石油化学製品が蔓延する時代、マスコミも頻繁にシックハウス症候群の原因が接着剤や塗料などに含まれる化学物質にあると報じているにもかかわらず、建材メーカーは相変わらずそんな建材を生産販売し続けている。住宅メーカーも、ホルムアルデヒドなど大きな問題になった物質を、害の少ないものに代えることで「安心です」と言っている。
 このような時代の流れに対して、無垢の木、漆喰、石、タイルなど、自然素材を用いた、真に人にやさしい家づくりが、もう一つの大きな流れであると、私は思う。無垢材、自然素材の利用は、文化財的家づくりの原点である。木もヒノキ、松、杉、青森ヒバ、ナラ、タモなど、さまざまな種類を適材適所に使っていくことが大切ではないだろうか。
 本当に「いい家」とは、建築主に満足を与えるだけでなく、普遍的な価値を持つものではないだろうか。そうした価値のある家を、普通の人が少し努力すれば手の届く価格で建てられるようになれば、多くの人に喜ばれ、社会に貢献することになるだろう。そのために力を尽くしたい。
 二一世紀は、自然との調和の世紀になってほしいし、そうならなくてはいけない。そのためにも、正しい意味での文化財的家づくりが、大きな意義を持つ。建てた家が一〇〇年、二〇〇年と歳月を重ねてこそ、素晴らしい建築といえるのである。次の世代に住み継がれる家づくりは、建てた人の誇りとなり、住む人に心の豊かさや安らぎ、喜びや愉しみを感じさせてくれることだろう。

(引用終了)
<同書 303−305ページ>

日本の山には杉や檜の林が多い。そういう材木を使うことは資源リサイクルとしても理に適っている。文化財的家づくりは日本の「庭園・芸術都市」を支える大切な基盤となるに違いない。

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posted by 茂木賛 at 12:53 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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