『PTA、やらなきゃダメですか?』山本浩資著(小学館新書)という本を楽しく読んだ。まず新聞の紹介文を引用しよう。
(引用開始)
仕事一辺倒の新聞記者が、地域の人々からPTA会長就任を求められ、しぶしぶ引き受けてから、PTAを改革していくまでの過程をドキュメンタリータッチで描く。タイトル通り、誰もやりたくないが、仕方なく参加しているPTAを、やりたい人が地域のために参加する組織に変えるにはどうしたらいいか。著者は理論的に思考して進めていく。
経営学者ドラッカーの著書を元に、PTAにとって顧客とは誰かを見極める。それは「子ども」であり、「学校にかかわるすべての人」だ。アンケート調査で会員の本音を探り、委員会を全廃し、全活動をボランティアで行なうことを提案。役員たちは唖然とするが、<活動が強制されたものではなく、楽しいもの、必要なものならば、輪が広がっていく>という信念は揺るがない。
最終的にはPTAを解体し、すべての活動を自発性にゆだねる組織へと発展させる。そこには、従来の「PTAに保護者が従う」という縦の関係ではなく、「保護者たちが横の関係で手を携えながら、地域の子どものためにできることを無理のない範囲で行なう」という成熟した地域社会への提言が含まれている。
(引用終了)
<毎日新聞 3/27/2016(フリガナ省略)>
山本氏の成功の秘訣は、PTAの「理念と目的」を明確化したことだと思う。このブログでいう理念とは、なぜその活動を始めようとしたのか、ということであり、目的とは、具体的に何を達成したいのか、ということを指す。PTO(ボランティア精神を強調するために名称をPTAからPTOに変更)の入会申込書(抜粋)を本書から引用したい。
(引用開始)
A小学校のPTOボランティアセンターでは、お子さまのご入学にあわせて保護者の皆様にPTOへの入会を任意でお願いしております。
PTOの目的は、「子どもたちの健やかな成長をはかる」ことです。PTO活動には、学校・地域と協力して親子で楽しめる活動の企画・運営、安全・防災に関する活動、会員が望む子どもに体験させたい「夢」を実現するための資金作りなどさまざまなものがあります。活動は「できるときに、できる人が、できることをやる」が基本です。このような趣旨をご理解いただき、皆様のPTOへの参加をお願いいたします。
また、PTOの活動には皆様一人ひとりのご協力が不可欠です。お仕事をお持ちの方、小さいお子さまがいらっしゃる方も、ご無理のない範囲で、できるときに自分の気に入ったボランティア活動にご協力をお願いいたします。
皆様のご理解とご協力を得てPTO活動を行い、学校や地域と協力しながら子どもたちの健全な成長の一助になるような活動を、続けていきたいと思います。
(引用終了)
<同書 64−65ページ>
PTOの理念(なぜその活動を始めようとしたのか)は、「親としての愛情を学校の子どもと大人たちのために役立てる」ことであり、目的(具体的に何を達成したいのか)は、「子どもたちの健やかな成長をはかる」ということになるだろう。
理念の基が「愛情」だから、活動は任意ボランティア・ベースでと言い切ることができた。目的が「健やかな成長」だから、楽しい活動をいろいろと企画することができる。詳細は本書をお読みいただきたいが、校庭で『逃走中』(テレビの人気番組)をやったときの話は感動的だ。これが従来のPTAによくあるような「義務」と「強制」だけ(の組織)だったらこんな自由な発想は出てこなかっただろう。PTOのキャッチフレーズは、「そうだ、学校に行こう。子どもたちに笑顔を!大人たちに感動を!」というものだという(99ページ)。素晴らしいフレーズではないか。
理念と目的を明確化して組織の運営することの大切さは、PTAなどの非営利組織だけでなく、一般の企業活動においても言えることだ。その意味で起業家のみなさんにも参考になると思う。
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