以前「森の本」の項で、森に関する本を五冊ほど紹介したが、今回はさらに解像度を上げ、木に関する本を三冊選び帯やカバーの文と共に紹介したい。
1.『木を知る・木に学ぶ』石井誠治著(ヤマケイ新書)
(引用開始)
森の恵みを利用してきた日本人は「森の民」。
木を知ることは、日本人を知ること。
今こそ日本人の「原点」を学ぼう!
日本を代表するサクラからウルシ、ツツジ、イチョウ、ブナ、マツなど代表的な13種の樹木の魅力を樹木医で森林インストラクターでもある人気講師が親切ていねいに解説。日本の自然と文化の礎となった「木」と友達になる本。
(引用終了)
<同書 帯表紙・裏表紙より>
ここで取り上げられている木は、
第二章「木と人間」:サクラ・ウルシ・ツツジ
第三章「木の歴史」:イチョウ、ブナ、マツ
第四章「木と信仰」:クリ・クスノキ・カヤ
第五章「木と生活」:スギ、ヒノキ、クワ、カキノキ
ということで、様々な面から人と木の関わりを知る構成になっている。第一章は「木を学ぶ」とあり、葉と芽と花、根と菌根、環境を見方にする知恵、木が持つ実を守る方法など、樹木に関する基礎知識を得ることができる。
2.『木』白洲正子著(平凡社ライブラリー)
檜、欅、松、栃、杉、桜……
木を愛し、木工の類を毎日そばに置いて
使っていたという著者による「木の話」二十選。
日本の木の伝統と、人の木に対する関わりについて
感覚と体験、そして取材を通じて深められた思考が、
やがて独自の日本文化論へと結晶する。
(引用終了)
<同書 カバー裏表紙より>
この本で取り上げられているのはすべて木偏のつく木ばかり。
檜(ヒノキ):木曽神宮備林/伊勢神宮
欅(ケヤキ):東村山梅岩寺/黒田辰秋の櫃
松(マツ):善養寺(東京)/梅岩能楽堂
栃(トチ):北アルプス鹿島槍ヶ岳/槙野文平の椅子
杉(スギ):三輪神社/つくり酒屋の杉玉
樟(クスノキ):奈良春日神社/法輪寺の観音像
槙(マキ):大蔵寺(奈良)/「たる源」の湯槽
榀(シナノキ):熊野神社(信濃)/菅原匠の藍染
樫(カシ):和歌山県田辺/びんちょうの炭
楊(ヤナギ):水元公園(東京)/「江南」の楊箱
桐(キリ):福島県柳津/「江南」の桐箱
檮(イスノキ):小国神社(浜松)/松山鉄男の櫛
朴(ホオノキ):岐阜県高根村/飛騨の有道杓子
榧(カヤ):東村山梅岩寺/法華寺十一面観音
楮(コウゾ):京都府綾部/「唐長」の唐紙
柿(カキ):白洲邸/正倉院「黒柿の厨子」
槐(エンジュ):宮城県弥治郎/みちのくの「こけし」
桂(カツラ):細川邸(軽井沢)/日向薬師三尊
楓(カエデ):大蔵寺(奈良)/紅葉漆絵鉢
桜(サクラ):本居宣長の山室/歌集の版木
右側の説明は、掲載された木の写真の場所と、本文にあるその木を使った工芸品など。日本人の匠の技はどれも素晴らしい。その写真もある。木の文化の神髄に触れることができる本だ。以前「茂木賛の世界」に掲載した、短編小説『老木に白雪』にある櫛の話はこの白洲さんの本に拠った。1.の『木を知る・木に学ぶ』と重なる木はサクラ、マツ、クスノキ、カヤ、スギ、ヒノキ、カキノキの7種。見比べて読むと趣が増すと思う。
3.『葉っぱで調べる身近な樹木図鑑』林将之著(主婦の友社)
(引用開始)
一枚の葉っぱから、身近な樹木の名前が簡単に調べられる初心者向きの樹木図鑑です。街路樹や公園、庭、野山で見かける樹木訳175種類を紹介しました。葉っぱのスキャン画像を中心に、樹皮や樹姿なども多数掲載しました。身近な樹木の名前が分かると、散歩や通勤が楽しくなります。
(引用終了)
<同書 カバー裏より>
この本は、葉っぱの形からその樹木を追いかけることができる楽しい図鑑。その分類は、
1.針葉樹(スギなど18種)
2.ふつうの形・ギザギザ落葉樹(クヌギなど47種)
3.ふつうの形・ギザギザ常緑樹(シラカシなど25種)
4.ふつうの形・なめらか落葉樹(カキノキなど16種)
5.ふつうの形・なめらか常緑樹(クスノキなど32種)
6.もみじ形(トウカエデなど25種)
7.はね形(エンジュなど19種)
ということでとても判りやすい。カラー写真が沢山あるから身近に置いておくと役立つだろう。
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