夜間飛行

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日米の映画対比

2016年03月08日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 前回「ファッションについて II」の項で、最近DVDで観た映画を幾つか挙げたので、今回は映画続きで、最近WOWOWチャンネルで観た映画シリーズを二つ紹介したい。どちらも少し前の作品だから御覧になった人も多いだろうし、今さら紹介でもないだろうが、例の複眼主義の、

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A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」−「都市」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」
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B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」−「自然」
B 女性性=「時間重視」「関係原理」
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という対比によくマッチするので書いてみたい。

 一つは日本の『リトル・フォレスト』(森淳一監督)である。五十嵐大介の人気漫画を橋本愛主演で実写映像化したもので、東北の小さな集落に移り住んだ主人公が、自給自足に近い暮らしを通して自分を見つめ直すというもの。シリーズは、

「夏・秋」(2014年)
「冬・春」(2015年)

の二作(括弧内は発表年)。この作品にはBの側の考え方が横溢している。特に、「冬・春」の最後に主人公が踊る郷土の舞いが素晴らしい。以前「複眼主義美学」の項において、

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日本古来の女性性の思考は、時間原理に基づく円的な求心運動であり、自然と一体化することで、「見立て」などの連想的具象化能力に優れる。例としては日本舞踊における扇の見立てなど。その美意識は、生命感に溢れた交感神経優位の反重力美学(華やかさ)を主とする。副交感神経優位の強い感情は、女々しさとしてあまり好まれない。
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と書いたけれど、橋本愛の姿・表情は、まさに「生命感に溢れた交感神経優位の反重力美学(華やかさ)」そのもので、観る者をつよく惹き付ける。この交感神経優位の女性美については、『百花深処』<華やかなもの>の項も参照していただきたい。

 もう一つはトム・セレック主演のアメリカ映画シリーズ『警察署長ジェッシイ・ストーン』だ。ロバート・B・パーカーの推理小説を映像化したもので、ボストン郊外の田舎町パラダイスで発生する様々な事件に、警察署長ジェッシイ(トム・セレック)が挑むというもの。シリーズは、

「影に潜む」(2005年)
「闇夜を渉る」(2006年)
「湖水に消える」(2006年)
「訣別の海」(2007年)
「薄氷を漂う」(2009年)
「非情の影」(2010年)
「奪われた純真」(2011年)
「消された疑惑」(2012年)

とこれまで八作品ある(括弧内は同じく発表年)。監督は2011年の「奪われた純真」以外ロバート・ハモン監督、「奪われた純真」はディック・ローリー監督。こちらの作品はAの側の考え方を軸にストーリーが展開する。「複眼主義美学」の項において、

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西洋の男性性の思考は、空間原理に基づく螺旋的な遠心運動であり、都市(人工的なモノとコト全般)に偏していて、高みに飛翔し続ける抽象的思考に優れている。例としては神学や哲学など。その美意識は、交感神経優位の反重力美学(高揚感)を主とする。副交感神経優位のノスタルジアは、ともすると軟弱さとして扱われる。
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と書いたが、主人公は離婚を機に酒におぼれ、ロス・アンジェルスの刑事を辞めて田舎町の警察署長になったくらいだから、決して勇ましいヒーローではない。推理小説系は、概ねAの側が強い。ジェッシイも、事件解決に至る最後では「交感神経優位の反重力美学(高揚感)」を演じる。しかしいつもの彼は、海辺の小さな家に住み、ウィスキーを飲みながらブラームスのピアノ協奏曲を聴く。となりのソファには大きな犬が寝そべっている。この感じが「副交感神経優位のノスタルジアは、ともすると軟弱さとして扱われる」そのもので、このアンチ・ヒーロー振り(と田舎町パラダイスの零落ぶり)が、西洋近代文明の黄昏を表現しているようで観る者の郷愁を誘う。トム・セレックの熟練した演技が、反重力とノスタルジアの間を揺れ動く今のアメリカ(の男性性)を上手く描き出している。尚、西洋近代文明の黄昏については「21世紀の文明様式」の項などを参照されたい。

 いかがだろう、以上、日米の映画を複眼主義の対比で読み解いてみた。これからもときどき面白いと思った映画を紹介してみたい。この年末年始には『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(J・J・エイブラムス監督)や『007スペクター』(サム・メンデス監督)も見た。これらの長く続くシリーズについては、いづれ別の角度から書く機会があるかもしれない。

 この複眼主義対比のマッチングは、以前「21世紀の絵画表現」の項でみた、『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)と『ゼロ・グラビティ』(A・キュアロン監督)という二つの映画にも当て嵌まる。Aが『ゼロ・グラビティ』(特にマット・コワルスキー役=ジョージ・クルーニー)、Bが『かぐや姫の物語』だ。併せてそちらもお読みいただければ嬉しい。

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posted by 茂木賛 at 11:23 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

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