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歴史の表と裏

2016年02月16日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「物事の表と裏 II」の項で、歴史について、

(引用開始)

正史と外史、すなわち時の権力勝者が綴った表史と、敗者が綴った裏史の両方を知ることは、歴史を学ぶ際の基本であるが、裏は確かさの見極めが難しい。いろいろな仮説が生まれる所以だ。玉石混交で面倒くさがりには敬遠されるが、暇を惜しまず吟味していくと、思わぬ繋がりが見えてくることもある。

(引用終了)

と書いたけれど、今回はその一例を示してみたい。

 先日、『下山事件 暗殺者たちの夏』柴田哲考著(祥伝社)という本を読んだ。これは占領時代の日本で起きた事件をフィクションの形で追いかけたものだ。内容は勿論「いろいろな仮説の一つ」だが、当時歴史の裏で暗躍した政財界の大物、日米諜報員、特務機関員、検察・警察などのことが詳しく描かれている。

 この本と、以前「国家理念の実現」の項で紹介した『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治著(集英社インターナショナル)にある日本の国家権力構造の変遷、

戦前(昭和初期):天皇+日本軍+内務官僚
戦後@(昭和後期):天皇米軍+財務・経済・外務・法務官僚+自民党
戦後A(平成期):米軍+外務・法務官僚

とを繋げて考えると、権力中枢と一般国民との間の層(中間層)がより鮮明に見えてきた。

 先日『百花深処』<平岡公威の冒険 5>において、その大枠を、

(引用開始)

 戦後日本の姿を今一度振り返ってみよう。戦争に破れると、国(state)は主に以下の人々よって形作られた。

〔1〕
@ 一人の占領軍司令長官(米国軍人)
A 一握りの理想家米国軍人
B 多くのゴロツキ米国軍人

〔2〕
@ 一人の敗戦国君主
A 一握りの生き残り官僚
B 多くの生き残り軍人
C 無数のその日暮らしの庶民たち

 多大な影響を齎したのは勿論〔1〕の人々だ。戦犯を裁き情報を検閲し、米軍が末永く支配するための体制を作り必要な資金を投入した。〔1〕Aの人々は特に憲法作成と文化保全に力を注ぎ、Bはそれ以外全てを担った。〔2〕は皆そのために利用された。

 数年後日本国はサンフランシスコ講和条約によって独立を回復したが、「米軍が末永く支配するための体制」は日米安全保障条約などによって継続。〔1〕の人々の多くは帰国し、体制は〔2〕によって担われることとなった。

 ここで〔2〕の取りうる選択肢は二つあった筈だ。一つは「米軍が末永く支配するための体制」から脱却し真の独立を勝ち取る道。もう一つは独立よりも資金的(狭い意味の経済的)繁栄のみを選ぶ道。

 国家統治を任された〔2〕@、A、およびBの一部の人々は後者を選んだ。その方が自分達のためになると考えたからだろう。その下で、Bの大半の男たちは復興のために挺身し、Cの人々はそれを支えた。冷戦の時代を経て、確かに日本は資金的に復興した。しかし独立国となる道は閉ざされたまま、文化的繁栄は細々としたものに留まった。平成の今、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』にあるように、日本国は依然として米軍と官僚とに国家統治能力を奪われている。 

(引用終了)

と纏めた。他の関連本と照らし合わせても、この結論はいまのところかなり確かだと思っている。当然「いろいろな仮説の一つ」としてではあるが。

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posted by 茂木賛 at 14:51 | Permalink | Comment(0) | 起業論

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