夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


日本アニメの先進性

2016年01月12日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 「日本アニメの先進性」などというと、何を今さらと言われそうだが、前回の「背景時空について」に関連付けて書くのでご一読いただきたい。ただしここで書くのは日本アニメといっても専ら高畑勲監督のことである。

 以前「21世紀の絵画表現」の項で、『かぐや姫の物語』高畑勲監督(スタジオジブリ)について、

(引用開始)

『かぐや姫の物語』は、一枚の絵全体が動くようなアニメーションが特に素晴らしかった。この、背景時空の無い、水彩画のような動画、絵画のような深みを持ちつつ、「コト」表現として充分な情報量があるアニメは、新しい視覚表現の一つの方向だと思われる。

(引用終了)

と書いたことがある。この“背景時空の無い”というのは映画のパンフレットからヒントを得た言葉だ。その部分を引用しよう。

(引用開始)

 従来のアニメーションでは背景とセル画は別々の様式で描かれる。これはセルアニメーションと言う手法を採用する際に避けては通れないものだった。しかし、高畑監督が挑戦したのは、背景とキャラクターが一体化し、まるで1枚の絵が動くかのようなアニメーション。アニメーションの作り手たちが一度は夢見る表現である。(中略)一見あっさりしているようで、実は図抜けた画力と膨大な手間の集積によって生み出された、本当の“リアル”を感じさせる表現は、78歳の高畑勲が生み出した全く新しいアニメーション表現として、アニメーション史のエポックメイキング的作品となるだろう。

(引用終了)
<同パンフレット「プロダクションノート」より>

 先日新聞に、高畑監督が自身のアニメ表現や日本人の完成の特徴について語ったシンポジウムの記事があった。『かぐや姫の物語』の手書きの特徴を生かした線による表現について「雨の線が浮世絵を思わせる。日本の伝統的な絵画の影響があるのでは」などの質問に対して、


(引用開始)

 高畑さんは「僕は普通の人と同じくらいしか浮世絵を見ていない。けれど日本に住んで育ってきたこと自体が、僕の一つの特徴になっている。と回答。日本には雨や波、炎など、固定していない「現象」を描く伝統があると説明し、「これは西欧絵画にはない特徴。日本は現象を見て、本質は問わない傾向がある。だから平安時代から、滑って転ぶというような描きにくいポーズもたくさん描かれている。そういう伝統とアニメは関係している」と話した。

(引用終了)
<東京新聞夕刊 9/24/2015>

とあった。ここでいう“固定していない「現象」”とは、複眼主義の対比、

------------------------------------------
A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」−「都市」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」

A、a系:デジタル回路思考主体
世界をモノ(凍結した時空)の集積体としてみる(線形科学)
------------------------------------------

------------------------------------------
B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」−「自然」
B 女性性=「時間重視」「関係原理」

B、b系:アナログ回路思考主体
世界をコト(動きのある時空)の入れ子構造としてみる(非線形科学)
------------------------------------------

におけるB側の日本語的発想、「モノコト・シフトの研究 II」の項でいう「事象(matter)を脳(大脳新皮質)で考えるのではなく、身体(大脳旧皮質+脳幹)で考える」ことだと思う。“本質を問わない傾向”というのが面白い。本質を問うには「分析」しなければならないから、A側の話になってしまうわけだ。

 日本人はB側の優位に拠って、アニメーションにおいてついに「背景時空」を無くすレベルにまで到達した。「日本アニメの先進性」という所以である。勿論制作にお金は掛かっただろうが、これはジブリにしか出来なかった快挙だと思う。スタジオジブリについては、かつて「借りぐらしのArrietty」の項でその特長を書いたことがある。

 高畑監督は、今年米アニー章功労賞を受賞したという(発表・授賞式は今年2月6日)。

(引用開始)

「アニメ界のアカデミー賞」と呼ばれるアニー賞を主催する国際アニメ映画協会は一日、功労賞の一つで、アニメ界のへの長年の貢献をたたえる「ウィンザー・マッケイ賞」を日本のアニメ映画監督の高畑勲さん(八〇)に授与すると発表した。(以下略)

(引用終了)
<東京新聞 12/8/2015>

21世紀のアニメの方向性を示唆する映画を作ったのだから、単なる功労賞ではなくアニメ大賞であるべきだが、まあそれはおいおい西洋人も解ってくるのではないか。 

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 14:39 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

この記事へのコメント

コメントを書く

お名前(必須)

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント(必須)

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

夜間飛行について

運営者茂木賛の写真
スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)主宰の茂木賛です。世の中には間違った常識がいっぱい転がっています。「夜間飛行」は、私が本当だと思うことを世の常識にとらわれずに書いていきます。共感していただけることなどありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

Facebookページ:SMR
Twitter:@sanmotegi


アーカイブ

スモールビジネス・サポートセンターのバナー

スモールビジネス・サポートセンター

スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)は、茂木賛が主宰する、自分の力でスモールビジネスを立ち上げたい人の為の支援サービスです。

茂木賛の小説

僕のH2O

大学生の勉が始めた「まだ名前のついていないこと」って何?

Kindleストア
パブーストア

茂木賛の世界

茂木賛が代表取締役を務めるサンモテギ・リサーチ・インク(通称SMR)が提供する電子書籍コンテンツ・サイト(無償)。
茂木賛が自ら書き下ろす「オリジナル作品集」、古今東西の優れた短編小説を掲載する「短編小説館」、の二つから構成されています。

サンモテギ・リサーチ・インク

Copyright © San Motegi Research Inc. All rights reserved.
Powered by さくらのブログ