夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


所有について

2015年12月01日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 モノコト・シフトの時代、まともな人々は、どちらかというと、過剰な“モノ”の所有よりも、豊な“コト”の繋がりの方を大切に考えるようになる(「モノコト・シフトの研究」)。生活用品はいるけれど、それ以上の贅沢品は所有せずに必要に応じて人とシェアする。家や車、オフィスなどもできればシェアする。音楽やスポーツはライブが一番、休日はトレッキングやサーフィン、キャンプなど出来るだけ自然の中で過ごす。これからの日本の若い人の間ではそんな生活が標準となるのではないか。

 “モノ”は所有できるが、“コト”は所有できない。だから“コト”を大切に考える人は、「所有」や「私有」に固執しない筈だ。“モノ”を供給するだけのビジネスは縮小してゆくだろう。“モノ”を売るのではなく、商品を通して“コト”をシェアする。そんな商売がこれからは伸びるだろう。ただし、“コト”のシェアは“サービス”とは違う。サービスは一方向だが“コト”は双方向、相互作用だ。

 複眼主義によって、所有を脳の働きと身体の働きとに分けて考えてみよう。

A 脳(大脳新皮質)の働き
B 身体(大脳旧皮質+脳幹)の働き

Aにおける所有とは、都市における「法的」な所有を指し、Bにおける所有とは、何かを身につける「身体的」な付加を指す。たとえば、前者は土地や金銭の所有、後者は贅肉が付くことや衣服を纏うことだ。

 衣服、さらには道具、車などは、法的と身体的、両方の「所有」形態がある。車の法的な「所有」は説明するまでもない。車の身体的な「所有」とは、車を運転することだ。AとB、どちらにおいても、「所有」は自己の「肥大」につながってくる。Aの場合は資産の肥大、Bの場合は感覚の肥大。車を運転するドライバーの身体感覚は、ボンネットの先からトランクの後ろにまで拡大する。

 モノコト・シフトの時代、人々は「肥大」化を避けようとする。「自分と外界との<あいだ>を設計せよ」の項で紹介した『不思議な羅針盤』梨木香歩著(新潮文庫)に、次のような文章がある。

(引用開始)

 距離を移動する、それだけで我知らず疲弊してゆく何かが必ずあるのだ。このマクロにもミクロにもどんどん膨張している世界を、客観的に分かろうとすることは、どこか決定的に不毛だ。世界で起っていることに関心をもつことは大切だけれど、そこに等身大の痛みを共有するための想像力を涸らさないために、私たちは私たちの“スケールを小さく”する必要があるのではないだろうか。スケールを小さくする、つまり世界を測る升目を小さくし、より細やかに世界を見つめる。片山廣子のアイルランドはその向こうにあったのだろう。

(引用終了)
<同書 57ページ>

「所有」と「スケールの大きさ」は一見話が違うけれど、所有は肥大であり、肥大はスケールの拡大だから、二つは重なっている。スケールを小さくすることは、所有欲を抑えてスリムになることに繋がる。尚、片山廣子は佐々木信綱に師事した歌人で、大正5年(1916年)に第一歌集『翡翠』を刊行、アイルランド文学に親しみ、松村みね子の筆名で翻訳も行なった。

 これからの時代、所有=肥大であることを弁えて、脳(大脳新皮質)としては資産の肥大の責任を自覚すること、そして賢く使い切ること。身体(大脳旧皮質+脳幹)としては、感覚の肥大をコントロールできる範囲に止めること。そして健康に留意すること。そういった生き方が求められると思う。いづれにしても墓には身体以外、何も持ってゆけないのだから。

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posted by 茂木賛 at 10:21 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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