「コーヒーハンター」川島良彰著(平凡社)は、コーヒーに賭ける著者の情熱物語だ。
『世界一おいしいコーヒーが復活。インド洋に浮かぶレユニオン島で、ルイ十五世が愛した幻のコーヒー「ブルボン・ポワントゥ」の香りが、21世紀によみがえる。世界中をめぐってコーヒーづくりに携わった日本人矜持と情熱により、絶滅の淵から救われたコーヒーの再生と復活の物語。それは、「サステイナブル・コーヒー」のあり方を考えさせるコーヒー環境論でもある。』(本の「帯」の紹介文)
コーヒーハンターとは、「常に新しい産地、最新の品種・栽培・精選加工の情報を求めて生産国を歩き、今回のように失われた品種の再開発をする僕のような人間」(同書167ページ)たちのことを指すという。川島氏は、高校を卒業後すぐ、エルサルバドルへ留学しコーヒーについて学んだ。内戦をくぐり抜けながら勉学を続け、やがて日本のコーヒー会社に就職、ジャマイカ、ハワイ、スマトラなどでコーヒーを作り続ける。しかし、エルサルバドルで学んだレユニオン島の「ブルボン・ポワントゥ」という幻のコーヒーのことが忘れられず、ついにレユニオン島に渡って、現地の人々と一緒にそのコーヒーを蘇らせたのである。
「ブルボン・ポワントゥ」の再発見から、生産に漕ぎ着けるまでの努力、カフェ・レユニオン(レユニオン島コーヒー生産者組合)と川島氏との心温まる信頼関係、出荷から復活セレモニーまでのストーリーはとても感動的だ。川島氏は留学以来2003年に帰任するまで、二十年以上ずっと海外で仕事を続けてこられたので、海外と日本とのコミュニケーション・ギャップをどう埋めるかということに精通しているに違いない。私も川島氏には及ばないが十三年間アメリカに赴任していたからその苦労がよく分かる。
この本は、コーヒーが好きな人なら誰もが楽しめるだろう。私も毎朝の一杯を欠かさないが、アラビカ種・カネフェラ種といった豆の分類、ジャマイカのブルーマウンテンやハワイ・コナなどの産地状況、栽培から焙煎にいたる製造工程など、コーヒーに関する一般的な情報も豊富だ。
巻末の著者略歴によると、川島氏は26年勤めたコーヒー会社を昨年退職し、株式会社グランクルーカフェを設立(取締役社長)したとある。
「これからの人生は、僕の考えに賛同してくれる生産者と一緒に、最高級のスーパー・プレミアム・コーヒーの開発に費やします。これまで存在しなかった最高品質のコーヒーを追い求め、それを市場に紹介し、コーヒーをワインの域にまで高めるのが目標です。そしてコーヒー愛飲家の方々に、もっともっとコーヒーを楽しんでいただけたらと思います。また、僕を育ててくれた生産国への恩返しとして、微力ながらサステイナブル・コーヒーの考え方を消費国で根付かせる努力を続けます。つまり地球環境保護の良きパートナーであるコーヒー栽培を通して、生物多様性の保全を推進し、生産に関わる人々の労働や生活環境の向上を目指す活動です。新たに団体を作るのではなく、すでに活動をはじめている団体へのコーヒー栽培や流通のへのアドバイス、消費者に向けての情報発信、サステイナブルについて一緒に考えるような活動も始めます。」(「あとがき」より)
この時代、氏も新たな一歩を、スモールビジネスとしてスタートさせた訳だが、今後のエネルギーに溢れたご活躍に期待したい。

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