以前まとめたアフォーダンスの考え方(「アフォーダンスについて」)と、先々回「免疫について」で述べたことを、「個」と「集団」という二つのレベルに分けて整理しておこう。このブログを初めて見る人は、まずこれらの記事に目を通していただけれればと思う。
「個」におけるアフォーダンスで重要な点は、常に思考や行動の枠組みから「自分」というものを外さないこと(自己言及性)と、脳は常に「現在進行形」(time = 0)であるということだった。一方、免疫で重要なのは、限りある自分の身体時間(t = life)における自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスである。
「個」におけるアフォーダンスと免疫との考え方を整理してみると、人は生きている限りこの2種類の時間から逃れられないことがわかる。人は、常に現在進行形としての脳と、一定の寿命を持つ身体とを抱えて、この社会に(一過性的に)関わっているわけだ。
「集団」におけるアフォーダンスで大切なことは、環境と知覚とが、運動を通して表裏一体とされる点であった。私はこれを「生産と消費との相補性」と呼び、お互いの交換価値が等しいことを指摘した。一方、免疫から導かれたのは、「生産−理性的活動−交感神経優位」vs.「消費−感性的活動−副交感神経優位」という循環式だった。
「集団」におけるアフォーダンスと免疫との考え方を整理してみると、人間社会の基本構造が、生産と消費の相補性、理性的活動と感性的活動の循環にあることがわかる。
個体内部のエネルギー循環(免疫系‐自律神経)と、個体間のエネルギー循環(知覚系−脳神経)とは、それぞれの環境におけるエネルギー循環システムとして、相似的構造を持つのだろうとも指摘した。「個」における身体が、様々な運動や栄養を必要とするように、現在進行形としての脳と、一定の寿命を持つ身体とを抱えた個人同士が豊かな日々を送り、その資産が社会に還元されるためには、「集団」のスモールワールド性、多様性が重要なわけだ。
最近私は、親しかった従兄の一人を病で亡くした。彼は長年の会社勤めのあと、「樹木・環境ネットワーク協会」という特定非営利活動法人で、ボランティア活動に力を入れていた。友人を大切にする笑顔の素敵な人だったが、彼はこれからも樹木を愛する多くの人たちの中に生き続けるに違いない。
さて、「集団」における相補性と循環性とは、「個」における自己言及性と一過性と対になっている。とすると、脳(t = 0)と身体(t = life)という2種類の時間に対応する、「集団」の時間とはどのようなものであろうか?
それを解くには、『現場のビジネス英語「Resource PlanningとProcess Technology」』で述べた、思考の原点に自分という「主格」を置く英語的発想と、「環境」を主体にして思考する日本語的発想の違いが補助線となる筈だが、この項、また日を改めて考えてみよう。
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