夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


共生の思想 II

2015年06月09日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 共生には「一つの生存圏に多種多様な生物が棲んでいる状態」と「一つの生き物に他の様々な生き物が一緒に住んでいる状態」の二つの概念がある。前回「共生の思想」では後者を取り上げたので、今回は前者について書いてみたい。

 そのための最適な本が最近(2015年2月)出版された。『生物多様性』本川達雄著(中公新書)がそれで、あの『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)の著者の書き下ろしだ。本のカバー裏の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 地球上には、わかっているだけで一九〇万種、実際には数千万種もの生物がいる。その大半は人間と直接の関わりを持たない。しかし私たちは多様なこの生物を守らなければならない。それはなぜなのか――。熾烈な「軍拡競争」が繰り広げられる熱帯雨林や、栄養のない海に繁栄するサンゴ礁。地球まるごとの生態系システムを平易に解説しながら、リンネ、ダーウィン、メンデルの足跡も辿り直す、異色の生命讃歌。

(引用終了)

 本の構成は、

序章  生物多様性を理解するのは難しい
第一章 生物多様性条約と生態系サービス
第二章 バイオームと熱帯雨林
第三章 サンゴ礁と生物多様性の危機
第四章 進化による多様性の歴史
第五章 ダーウィンの進化論・アリストテレスの種
第六章 生物はずっと続くようにできている
第七章 メンデルの遺伝の法則
終章  生物多様性減少にどう向き合えばよいのか

となっている。第二章と第三章が生物多様性の具体例で、熱帯雨林の樹木の複雑な三次元的階層構造、植物と菌との栄養共生、サンゴと褐虫藻の相利共生など、自然の精緻な生態学的しくみが興味深く描かれている。

 体内の共生もそうだが、一つの生存圏における生物の共生も、多様であった方がそれぞれ生き延びるチャンスが大きい。今の自然破壊はその多様性を奪っていくから、どこかで歯止めを掛けないと全てが失われてしまう。地球上の生物全体を絶滅に追いやってしまうことになる。

 このブログでは、21世紀はモノコト・シフトの時代だと述べている。モノコト・シフトとは、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」の略で、二十世紀の大量生産システムと人の過剰な財欲による「行き過ぎた資本主義」への反省として、また、科学の還元主義的思考による「モノ信仰」の行き詰まりに対する新しい枠組みとして生まれた、(動きの見えないモノよりも)動きのあるコトを大切にする生き方、考え方への関心の高まりを指す。「共生の思想」とは、まさに共生という「コト」を大切にする考え方に他ならない。

 本川氏は、特に日本人の自然を大切にする知恵・価値観に期待を寄せる。終章から引用したい。

(引用開始)

 島というのはその中でやりくりをして生き延びていかなければならない場所であり、そこでなんとか持続可能な生活を営みながら、ちまちまとしていても、それなりに幸せに暮らしていく知恵を日本人は蓄えてきました。幕末に日本に来た外国人はみな、日本人は満足して幸福だという印象を受けたと、渡辺京二は『逝きし世の面影』で多くの引用をしながら述べています。たとえば「日本人はいろいろな欠点を持っているとはいえ、幸福で気さくな、不満のない国民であるように思われる」(オールコック『大君の都』)。もちろん江戸時代に戻ろうとは申しませんが、地球も今や資源の限られた島とみなさなければならない状況になってきたのですから、ここでこそ日本人が育んできた知恵・価値観の出番。世界はいざ知らず、日本は率先して右肩上がり信仰から脱却すべきだと思うのですが。

(引用終了)
<同書 283−284ページ>

 生物同士の相互作用は複雑だ。まずはこれらの本を読んで生物多様性の実体をよく理解しよう。ところで共生といえば、社会集団における人間同士の共生もある。これについては以前「自立と共生」という項でいろいろと考えた。併せてお読みいただければ嬉しい。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 09:43 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

この記事へのコメント

コメントを書く

お名前(必須)

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント(必須)

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

夜間飛行について

運営者茂木賛の写真
スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)主宰の茂木賛です。世の中には間違った常識がいっぱい転がっています。「夜間飛行」は、私が本当だと思うことを世の常識にとらわれずに書いていきます。共感していただけることなどありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

Facebookページ:SMR
Twitter:@sanmotegi


アーカイブ

スモールビジネス・サポートセンターのバナー

スモールビジネス・サポートセンター

スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)は、茂木賛が主宰する、自分の力でスモールビジネスを立ち上げたい人の為の支援サービスです。

茂木賛の小説

僕のH2O

大学生の勉が始めた「まだ名前のついていないこと」って何?

Kindleストア
パブーストア

茂木賛の世界

茂木賛が代表取締役を務めるサンモテギ・リサーチ・インク(通称SMR)が提供する電子書籍コンテンツ・サイト(無償)。
茂木賛が自ら書き下ろす「オリジナル作品集」、古今東西の優れた短編小説を掲載する「短編小説館」、の二つから構成されています。

サンモテギ・リサーチ・インク

Copyright © San Motegi Research Inc. All rights reserved.
Powered by さくらのブログ