以前「人の生産活動に注目するということ」において、『人は社会の中で、この二つの行為、「生産」と「消費」とを繰り返していることが分かる。そして、人の「消費活動」は、その人にとって、次の「生産活動」のための準備であることが分かる。ある商品(あるいはサービス)の購入は、それを買ったお客様にとって、次の自分の生産活動に役立てるためなのだ。』と書いた。
付け加えれば、ここでいう「生産活動」とは、単にお金を稼ぐことだけではなく、仕事やボランティア活動などの、他人のために役立つ行為全般を指し、「消費活動」とは、単なる金銭的な消費活動だけではなく、食事、睡眠、休暇などの自分のための行為全般を指す。
さて今回は、その「生産活動」と「消費活動」に関する「人間属性」を整理してみたい。「人間属性」などと難しい言い方をしたが、いいかえれば、人は「生産」と「消費」とで、それぞれ主にどの機能を使っているかということだ。
まず、「生産活動」をしている人たちを思い浮かべてみよう。タクシーの運転手、工場の作業員、デザイナー、音楽家、企業経営者などなど。それらの人たちが仕事をしているときは、どうすれば一番効率が良いか、目的を達成するためにはどうしたらよいか等についてよく考えている筈だ。それらの人たちは、いろいろなことを分類・分析しながら、理性的に行動している。みなさんもご自分が仕事をしているときのことを思い出してみて欲しい。結構頭を使っているに違いない。使いすぎて頭が痛くなることもある。
一方消費活動はどうかというと、同じ人たちが、山歩きをしているとき、食堂でなにかを食べている時や、自宅でテレビを見ているときは、あまりむずかしいを考えずに、味覚だとか、聴覚だとかを十分に働かせている。みなさんも仕事で頭を使いすぎたあとは、のびのびと感性を解放させてやりたいと思うだろう。
すなわち、「生産」は「理性的」活動を中心とし、「消費」は「感性的」活動を中心としている。勿論、人間属性の分類はあくまでも「主に」どの機能を使っているかということであって、「生産活動」には理性だけが使われるとか、「消費活動」には感性だけが使われるというようなことを言っている訳ではないので念のため。
「理性」というのは論理の積み重ねだから、直線的、積層的、一方向性、などの性質を持っている。運動としては「統合」といえるだろう。一方「感性」というのは、曲線的、変幻自在、多方向性、などの性質を持っている。運動としては「分散」だ。
仕事をしている人、「生産」をしている人は、頭を使い、物事を理論的につめながら、いろいろな事柄を「統合」の方向に持っていこうとしている。一方、自分の為になにかをしている人、「消費」をしている人の多くは、心を解き放ち、物事を感覚的に捉え、ものごとを「分散」させて楽しんでいる。
こう考えてみると、「趣味を仕事にする」ということはいろいろと複雑である。「仕事」すなわち「生産」は、どんなに好きなことであっても、基本的に「理性」と「統合」の原理で動き、「趣味」は本来、「感性」と「分散」の元にある。だから、「趣味を仕事にする」ということは、本人がその仕事に本気になればなる程、趣味(の中身)が変化していくことになるのだ。
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