夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


心ここに在らずの大人たち

2015年03月03日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『日本人はどう死ぬべきか?』養老孟司×隈研吾共著(日経BP社)という本に、地方の限界集落について次のような面白い指適があった。

(引用開始)

年寄りのいない田舎がフロンティア

養老 今、都道府県でいうと、大阪と広島の人口構成が二十年前の鳥取県と同じなんだそうです。つまり、都市部で高齢化が進んでいるとということなんですけどね。
 そうなんですか。それはあまり知られていないことですね。大阪でそこまで高齢化が進んでいるとしたら、恐るべきことです。
養老 そうはいっても何のことはないんですよ、みんなが年を取っただけの話です。鳥取は、いわば先進県だったということですよ。
 二十年前にすでに現在の状況を先取りしていたわけですね。
養老 じゃあ今どき人口構成がちゃんとしているところはどういう場所か?日本総合研究所の藻谷浩介さんがそいうったことを日本中で調べているんですが、大阪のような都市ではなくて、なんと「田舎の田舎」なんです。うんと田舎になると、二〜三組の夫婦が子供二〜三人を連れて移住しただけで人口構成がちゃんとしたかたちになる、なぜかというと、そこまで田舎になるともう「年寄りがいないから」なんですね。
 究極の田舎に一番健全な人口構成が出現する。
養老 岡山なんかは限界集落が七百以上もあるというから、将来有望な場所だと僕は思っているんです。だってそれらの限界集落は、二十年以内にはほとんどなくなるということですから、地域の人口構成がいったんリセットされる。そこへ若い人が入ってきて、新たなスタートを切る。アメリカ的にいえば、日本にもやっと西部(フロンティア)ができ始めているんですね。
 養老先生のお宅がある鎌倉には、最近、若いベンチャー世代の人たちが多く移住していますよね。軽井沢に住んで仕事は東京という若い世代も増えているそうです。これからもっと田舎に移る人たちは増えていくんじゃないでしょうか。
養老 若い人たちが今、移るところは、ただの田舎じゃないんです。
 どういう田舎なんですか。
養老 つまり、年寄りのいない田舎なんです。若い人にとって、年寄りって邪魔なんですよ。だって既得権を持っているでしょ。田舎っていうのは一次産業がなければやっていけないところで、そうすると畑のいいところは全部、年寄り連中が持っている。年寄りで今、地元に残っている人たちというのは、僕らの世代から団塊の世代まででしょう。そういう人たちが既得権を持ってしまっているから、ものごとが動かない。テレビのニュース番組で農業の後継者問題なんかを取り上げると、田舎のじいさんが「後継者がいなくて……」と、こぼしているんだけど、「お前がいるからだろう」って、思わず画面に向かっていいたくなることがあるんです。
 年寄りって、いるだけで邪魔という面があるんです。今、そういうことをはっきり言わなくなっちゃったけど、とりわけ若い人にとっては、うっとうしいに決まっていますよ。

(引用終了)
<同書 20−22ページ>

 前回「地方の時代 III」の項で、県レベルには「心ここに在らず」の(greedとbureaucracyを許し続ける)大人たちがまだ大勢棲みついているようだと書いたけれど、地方でも限界集落と呼ばれるようなところは、そういう大人がいなくなって理想的な場所になりつつあるわけだ。

 勿論、世の中には「心ここに在る」大人たちもいるわけだから、彼らと若い人たちが人口の過半数を超すようになれば、その地域ではいろいろと新しいことが起り始めると思う。地域密着型のスモールビジネスは、こういったニーズを積極的に取り入れるべきだ。

 『百花深処』<雨過天青>の項で、ドナルド・キーン氏が応仁の乱後の東山文化と三島由紀夫や吉田健一などが活躍した戦後文化との類似性を述べていることを引き合いに、室町のあとは戦国・群雄割拠の時代だから、これからの日本は地域・群雄割拠の時代を向かえることになるだろうかと書いたけれど、このような地域が増えてくれば満更空絵事ではないかもしれない。ただしこれからの群雄割拠は、近代民主政治制度下で「ヒト・モノ・カネの複合統治」を目指すべきだし、個人の「精神的自立の重要性」を忘れてならないけれど。

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posted by 茂木賛 at 14:53 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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