夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


国家理念の実現

2014年12月09日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治著(集英社インターナショナル)という本を読んだ。日本国という非独立国家の法的実態を明らかにした好著である。

 この本には、敗戦占領時代から現在まで、憲法などの法的状況が歴史的・体系的に分るように書いてある。昭和天皇の光と影への言及も良い。詳細は本書をお読みいただきたいが、日本国という「state」の統治に関して、今も憲法の上位に日米地位協定が存在しているという。

 矢部氏はこの本の「あとがき」に、日本の国家権力構造の変遷を次のようにまとめる。

(引用開始)

戦前(昭和初期):天皇+日本軍+内務官僚
戦後@(昭和後期):天皇米軍+財務・経済・外務・法務官僚+自民党
戦後A(平成期):米軍+外務・法務官僚

(引用終了)
<同書 282ページより。枠内文字は太字とした>

 以前「nationとstate」の項で、「nationとは、文化や言語、宗教や歴史を共有する人の集団、すなわち民族や国民を意味し、stateとは、その集団の居場所と機構を意味する」とし、stateは「人々の間で合意された『理念と目的』に基づいて合理的に運営されなければならない」と書いたけれど、通常stateにおいては「憲法」の理念と目的が最上位のものであるから、日本国憲法の上に別のものがあるのであれば、いまの日本国は非合理的に運営されているわけだ。

 それをどのような道筋で合理的なstateにしていくか。今年はスコットランドで英国からの独立を問うた住民投票があり、カタルーニャでスペインからの独立を問うた(非公式の)住民投票があったが、そろそろ日本でもそういう話をnationの側できちんと話し合うべき時代になっていると思う。

 街づくりやビジネスの経営にとっても、人の居場所である「state」側がしっかり合理的に運営されていなければ、その理念の実現に影響が出る。

 このブログでは、21世紀はモノコト・シフトの時代だと述べてきた。モノコト・シフトとは、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」の略で、二十世紀の大量生産システムと人の過剰な財欲による「行き過ぎた資本主義」への反省として、また、科学の還元主義的思考による「モノ信仰」の行き詰まりに対する新しい枠組みとして生まれた、(動きの見えないモノよりも)動きのあるコトを大切にする生き方、考え方への関心の高まりを指す。

 高齢化、少子化をいち早く迎えた今の日本は、モノコト・シフトの最先端を走っている。時代の最先端をゆく日本のstate(集団の居場所と機構)はどうあるべきか。それを論するには、まずこの本を読み、日本やアメリカの組織や法律についての解像度(理解度)を上げていくことが不可欠だ。その意味で、この本は日本文化を共有するnation側の人々の必読書といえるだろう。

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posted by 茂木賛 at 11:00 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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