最近二つの短編小説を書き上げた。姉妹サイト「茂木賛の世界」にアップしたので、興味のある方は仕事の合間にでも「作品リスト」から選んでお読みいただければ嬉しい。長さはともに15枚程度(400字詰原稿用紙換算)。
一つは「老木に白雪」。昔、化野念仏寺を訪れた際にアイデアが浮かんだ。京都は奥嵯峨の山中に住む老翁のところへ、東京の元大尉より一通の遺書が届くところから話が始まる。最後の一行に集中していくための展開に悩んでいたが、知恵の逃避行を入れることで一気に完成した。
もう一つは「夜のカフェ」。昔、ゴッホの弟テオ宛の手紙を読んだ際にアイデアが浮かんだ。ブラジルW杯決勝前夜、ブエノスアイレスの酒場での出来事を描いた作品だ。最近読んだ『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周著(河出文庫)からインスピレーションを得て出来上がった。
二つはペアのような作品で、どちらも、固有の場所を背景に、死を越えた人の意思のようなものを表現しようとしたものだ。人は誰も心の中に愛する人を持っている。母であったり息子であったり、妻であったり夫であったり。そして、愛する人の魂がこの世を去ったとしても、残された側の心の中にあるその人の記憶は消えることがない。
こうして昔の着想を作品化することができ些(いささ)か感慨深い。小説を書くのは愉しい。レトリックの勉強も生かしたつもりだ。これからも面白いテーマを見つけて書いていきたいと思う。
尚、「夜のカフェ」について最近友人から以下の感想を貰った。
(引用開始)
読みました。女性が主人公なのにヘミングウェイの男の雰囲気を感じさせました。説明的でない簡潔でさりげない会話に内在する感情の微妙なすれ違いに、お互いの交差しない想いが印象的でした。ヘミングウェイの短編集やR.チャンドラーの作品のような雰囲気が好きなので、面白く読ませていただきました。
(引用終了)
味のある言葉で嬉しい。皆さんからも是非コメントなどお寄せいただければと思う。
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