夜間飛行

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空き家問題をポジティブに考える

2014年10月21日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『空き家問題』牧野知弘著(祥伝社新書)と『「空き家」が蝕む日本』長嶋修著(ポプラ新書)を読んだ。まず隈研吾氏の新聞書評を紹介しよう。

(引用開始)

 2040年の日本では、10軒のうち4軒が空き家になるそうである。
 ショックである。少子高齢化とか出生率の低下というと、何かヒトゴトで抽象的な社会現象に思えて、リアリティがない。しかし「町に空き家が溢れる」と聞き、さらに、これが地方の過疎地だけの問題ではなく、東京も空き家だらけになるという科学的予想に接し、暗澹たる気分になった。読了して町を歩くと、空き家ばかりが目にはいってきて、東京が低層スラムにみえてきた。空き家率3割を超えると、途端に治安も悪化するらしいから、すぐ明日の話である。
 原因についての分析も興味深い。高度成長が終わり、少子高齢化の低成長時代に突入しているにもかかわらず、家を新築させることで、景気を浮揚させようという政策が慢性的に続いたこと。その政策に頼って収益をあげてきた民間企業も、政策に甘え、新しいライフスタイルに挑まなかった。この「戦後日本持ち家システム」とも呼ぶべきものがついに破綻を迎えつつあり、それが「空き家」という具体的な形で、僕らの目の前につきつけられたわけである。
 しかも、ここには戦後システムの劣化という直近の難題を越えた、深い問題が顔をのぞかせているようにも感じた。人にとって、本当に「家」というハコは必要なのかという大問題である。「家」という高価なハコを所有していれば、とりあえず一人前であり、「幸せ」であることになっていたけれど、その「幸せ」の実態は何だったのか。さらにその先には、「家」という器のベースである「家族」の必要性、家族形態のあり方はこれでいいのか。さらに深掘りすれば、人間が空間という曖昧で手のかかるものをそもそも私有できるのか。私有してどんないいことがあるのか。人類史の根本にまで、思考が到達せざるを得ないようなこわさがあった。

(引用終了)
<朝日新聞 9/7/2014、フリガナは省略>

今回はこの空き家問題を、「モノコト・シフト」と「経済の三層構造」の観点から、ポジティブに考えてみたい。

 モノコト・シフトとは、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」の略で、20世紀の大量生産システムと人のgreed(過剰な財欲と名声欲)による、「行き過ぎた資本主義」への反省として、また、科学の還元主義的思考による「モノ信仰」の行き詰まりに対する新しい枠組みとして生まれた、(動きの見えないモノよりも)動きのあるコトを大切にする生き方・考え方への関心の高まりを指す。「経済の三層構造」とは、「経済」=「自然の諸々の循環を含め、人間を養う社会の根本の理念・理法」という定義の下、

「コト経済」

a: 生命の営みそのもの
b: それ以外、人と外部との相互作用全般

「モノ経済」

a: 生活必需品
b: それ以外、商品の交通全般

「マネー経済」

a: 社会にモノを循環させる潤滑剤
b: 利潤を生み出す会計システム

という形でその構造を区分したものだ。このブログでは、モノコト・シフトの時代、人々の関心は、経済三層a、b領域のうち、a領域(生命の営み、生活必需品、モノの循環)、そして「コト経済」(a、b両領域)に向かうものとしている。

 家とは器であり「モノ」であるから、当然、経済三層構造の中の「モノ経済」に属す。このうちa領域のための家は、生活必需品としての住まいなので人口が減っても必要だ。いま問題になっている「空き家」とは、そういった「モノ経済」a領域の家ではなく、それ以外、住人のいない家、相続しただけの家、セカンドハウスなどだから、「モノ経済」b領域の家である。これらの家は、モコト・シフトの観点からして、そのままではあまり関心が持たれなくなってくる。

 それではどうしたら良いか。書評に「家を新築させることで、景気を浮揚させようという政策が慢性的に続いたこと。その政策に頼って収益をあげてきた民間企業も、政策に甘え、新しいライフスタイルに挑まなかった」と描かれた「bureaucracy(官僚主義)」の排除は勿論必要だが、ビジネスとしては、モノコト・シフト時代への対応として、それらの家をできるだけ「モノ経済」a領域と、「コト経済」b領域へシフトさせることが求められる。

 『空き家問題』の第4章には、数々の処方箋が述べられている。詳しくは同書をお読みいただきたいが、ここで指摘したいのは、それらの処方箋、市街地再開発手法の応用、シェアハウスへの転用、減築という考え方、介護施設への転用、在宅看護と空き家の融合、お隣さんとの合体、3世代コミュニケーションの実現、地方百貨店の有効利用などが、どれも「モノ経済」b領域から、「モノ経済」a領域、「コト経済」b領域へのシフトであるということだ。複合型もあるから一概には言えないが敢て分ければ、

「モノ経済」a領域へのシフト:市街地再開発手法の応用、減築という考え方、介護施設への転用、在宅看護と空き家の融合、お隣さんとの合体

「コト経済」b領域へのシフト:シェアハウスへの転用、3世代コミュニケーションの実現、地方百貨店の有効利用

といったところか。

 この「モノ経済」aと「コト経済」b領域へのシフトという観点にフォーカスすれば、空き家の使い道はまだまだ考えられる。スモールビジネスとしては、とくに「コト経済」b領域へのシフトが有望だと思う。上の例とも被るが、スモール・ショップや地産地消の飲食店、小さな美術館、コンサート会場、図書館、各種イベント会場、共有セカンドハウスなどなど。つまり、「人と外部との相互作用全般」を司る場所という観点で空き家を考えれば、その用途は無尽蔵なのである。

 こういった目で町を歩けば「空き家ばかりが目にはいってくる」というよりも、最近いたるところに小さなショップやシェアハウスが出来はじめている、と気付くのではないだろうか。モノコト・シフトはすでに街角から始まっているのだ。皆さんが起業した会社、もしくは働いている会社がこういった分野に関わっているのであれば、是非この項を参考にして、増える空き家を活用していただきたい。

 尚、今回同様「モノコト・シフト」と「経済の三層構造」による分析手法で、ビール業界について考察した項もある(「ビール経済学」)。併せてお読みいただければ嬉しい。

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posted by 茂木賛 at 13:21 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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