デジタルとアナログの話を続けたい。以前「脳は自然を模倣する」の項で、
(引用開始)
人の脳は、目や耳から入ったデジタルな情報を、「意味」というアナログ情報に変換するが、これは、原子や分子を集めて「形態」を生成する自然界の模倣ではなかろうか。構造としてのデジタルと、機能としてのアナログ。
世界の本質はデジタルだが、自然界は、ゆらぎによって形態を生み出し、多様な階層性を作り出してきた。弁証法は、自然界の「階層性」の模倣だった(生物の階層性については以前「階層性の生物学」の項で触れたことがある)。それと先程の「合目的性」。人の脳は、このように、自然の様々な力を模倣しながら、都市や文明を作り出してきたようだ。
(引用終了)
と書き、
「形態形成」=D/A変換
「階層性」=弁証法
「合目的性」=予測とコントロール
というアナロジーを記したが、この話と、先回の「デジタル回路とアナログ回路」の対比、
A、a系:デジタル回路思考主体
B、b系:アナログ回路思考主体
とは、どのように繋がるのだろうか。尚、D/A変換とは、デジタル情報からアナログ情報への変換のことを指す。
まず、外部からの音や光といったデジタル情報は、人の脳に持続的に入力されることで、(自然が形態を生成するように)「一塊(かたまり)の意味のあるアナログ情報」にD/A変換される。これは、デジタル回路やアナログ回路以前、脳への信号入力段階の話だ。
「一塊の意味のある情報」とは、たとえば、風のそよぎ、川のせせらぎ、星のひかり、といった形象を思い描けばよい。人は、そのアナログ変換された一塊に、心地よさ、切なさ、雄大さといった「文脈的な意味」を見出す。それが、先回の項でみた直感(脳のアナログ回路)の働きであり、それは世界をコトとして見ているわけだ。
一方、風のそよぎ、川のせせらぎ、星のひかり、といった形象を、言葉や数字などのデジタル情報にA/D変換し計算するのが、脳のデジタル回路だ。風速何メートル、水の流体速度や揚力、光の速度と明るさの測定などなど。それは、世界をモノとして分析しているのである。
その上で人は、「階層性」=弁証法に則って、このD/A変換とA/D変換のループを脳のなかで何度も回す。デジタル回路とアナログ回路の交互使用。男性性と女性性の相互作用。3の構造(頂点性・安定性・発展性)による螺旋状展開。そういう作業の果て、やがて人は、世界に新たな「意味」を見出す(発明・発見する)。この新たな意味の発明・発見は、おそらく、自然の「合目的性」と合致した法則下にあるものと思う。
この記事へのコメント
コメントを書く