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助詞の研究 III

2014年09月09日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 『日本語で一番大事なもの』大野晋・丸谷才一共著(中公文庫)には、「係り結び」についても詳しい分析がある。

 係り結びとは、ある分節が係助詞によって条件付けされた場合、述語の最後尾部分が呼応して特定の活用形に決まるという法則で、第一ファミリーとして「ぞ」「か」「なむ」「や」、第二として「こそ」、第三ファミリーとして「は」「も」がある。それぞれ「強調」、「逆説」、「判断」という条件付けを司る。第一ファミリーは、述語の最後尾部分が連体形で終わる。第二は已然形で終わり、第三の場合は終止形で終わる。

 国語学者大野晋はこの本の中で、それぞれの係り結びを、その構造と来歴からさらに次のように分類する。

<疑問詞を承ける>
承ける語の扱い方:不確実・未知・新情報

「ぞ」:本来は終助詞。倒置によって係助詞の位置に立つようになった。新情報として提示し、教示・強調する。連体形終止。
「か」:本来は終助詞。倒置によって係助詞の位置に立つようになった。判断不能を表示する。連体形終止。
「も」:個と個を対比して提題。その下は否定不確定性判断が多い。終止形終止。

<疑問詞を承けない>
承ける語の扱い方:確実・既知・旧情報

「なむ」:本来は終助詞。倒置によって係助詞の位置に立つようになった。内心の確信を示す。連体形終止。
「や」:本来は終助詞。倒置によって係助詞の位置に立つようになった。話し手の確信、あるいは見込みを表明して相手に問う。連体形終止。
「こそ」:衆から個を選抜して提題。已然形と呼応して、逆説確定条件を形成した。後に強調的終止。
「は」:個と個を対比して提題。その下は肯定・否定・推量など何でもよい。明確な判断。

係り結びという複雑な法則がきれいに二つ(疑問詞を承ける・承けない)に分類され、三つのファミリーのそれぞれが、この二つの分類の下に、異なる条件付けの役割を負って並ぶ。

 詳しくは本書をお読みいただきたいが、この「疑問詞を承ける・承けない」という係り結びの二分類は、そもそも助詞「は」と「が」の「疑問詞を承ける・承けない」と繋がっているらしい(「は」は疑問詞を承けない、「が」は疑問詞を承ける)。「誰が」とはいうが「誰は」とは普通言わない。係り結びそのものは近代日本語からは消えてしまったけれど、生き残った助詞は、その古い名残を今も継続しているわけだ。とても面白い分析だと思う。

 ところで、「助詞の研究」の項で「は」の役割、「助詞の研究 II」の項で「の」の役割について見、そのどちらにおいても、日本語がいかに「環境中心」の言語であるかということを示してきたが、この本『日本語で一番大事なもの』の係り結びに関する話のなかでも、そのことに言及した部分があるので引用しておきたい。

(引用開始)

大野 日本は、明治時代以来、たとえばイギリスから機関車を買って来て運転の仕方習うとか、技師を連れてきて橋を架けるとかして、そのうちに見様見真似で、機関車をつくったり、橋を架けたりできるようになってきた。ところが、日本語の場合には、あいにく英語やフランス語、ドイツ語と、その言語構造が本質的に違うんです。だから、自分の目で母国語と外国語とを見くらべ、その現象を通して本質的に違うところを見抜くことが必要なんです。しかし、日本人は、この現象の本質を見抜くことをきらうんですね。「こういうことがありました。次にこういうことがありました、そしてこうなりました」という、「ありました」形態で事を続けていくのが好きなんです。
丸谷 横へ横へと並列的に並べるだけで、本質をつきとめようとはしない……。
大野 ですから、係り結びという場合でも、「ぞ」「なむ」「や」「か」がきたら連体形で結ぶ、「こそ」がきたら已然形で結ぶという、現象を述べるだけなんです。

(引用終了)
<同書 91−92ページ>

環境を中心にして、すなわち、与えられた場所や起った事柄に身を寄せてそこからの視点(だけ)で物事を考えると、そこから見える現象に捉えられて、場所や事柄本来の構造、来歴を見失ってしまう。横へ横へと現象が並列的に並ぶだけで、いつまでたっても本質が見極められない。

 とはいえ、あまり性急に結論を出すのも考えものではある。これからも助詞の研究等を通して、さらに深く日本語の本質に迫りたい。

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posted by 茂木賛 at 09:29 | Permalink | Comment(0) | 言葉について

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