夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


二つの透明性と複眼主義

2014年07月29日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 今回は「虚の透明性」の項で述べた、二つの透明性と複眼主義の対比、

A 「都市」−「脳(大脳新皮質)の働き」−「実の透明性」
B 「自然」−「身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き」−「虚の透明性」

について話を進めたい。

 複眼主義では、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 「公(Public)」−男性性−〔所有原理・空間重視〕

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 「私(Private)」−女性性−〔関係原理・時間重視〕

といった対比をもとに、「ヤンキーとオタク」の項で、

ヤンキー文化=女性原理のもとで追求される男性性
オタク文化=男性原理のもとで追及される女性性

という斉藤環氏の優れた分析を援用し、

「出自」→「志向」

A、a系 → B、b系(オタク)
B、b系 → A、a系(ヤンキー)

A、a系 → A、a系(マッチョ)
B、b系 → B、b系(フェミニン)

といった「出自と志向」を分析した。さらに「ヤンキーとオタク II」の項では、建築家隈研吾氏を例に挙げて、

「出自」→「ひねり」→「志向」

A、a系 → B、b系 → A、a系

という複雑なケースにまで話を進めた。

 二つの透明性と複眼主義の(冒頭の)対比は、A、a系の仕事を生業とする建築家でありながら、虚の透明性(B、b系)を大切に考えるようになった隈氏が、「ひねり」を加えたヤンキーであって少しもおかしくないことを示している。いやむしろ、ひねりを加えたヤンキーであるべき必然性がみえてくる、と言うべきかも知れない。

 『ヤンキー化する日本』(角川oneテーマ21)で斉藤氏の対談相手として最後に登場する建築家隈研吾氏は、ヤンキーのなかにあるバッドセンス(バッドテイスト)に注目したとして、

(引用開始)

 そういうバッドテイストを自分はどのように建築の中で活(い)かしていけばいいのかをずっと考えていたんです。歌舞伎座をつくりながら、あっ、これがそうなんだをわかった気がしたんです。それは和風の中にあったんですが、これまで和風建築をつくってきた人たちもまた、きわめてヤンキー的だったということに気がつきました(笑)。

(引用終了)
<同書 216ページ>

と語っておられる。

「出自」→「志向」

A、a系 → A、a系(マッチョ)

のままでは、コンクリートのビルは建てられても歌舞伎座は建てられないわけだ。

 隈氏はさらにオタクへの関心を訊ねられ、

(引用開始)

 おたくとヤンキーというのは、ノンヒエラルキーな二〇世紀的工業世界が崩れてきた中で人間が生きていくための二つの道なんだと思います。おたく的な建築ってなんだろうと考えると、思い浮かぶのは妹島和代さんです。彼女はオラオラの逆で、自分はこれまでどんなにひどい目に遭ってきたのかということをいうから、みんな大好きになります。その才能はすごいと思います。プレゼンにおいてもオラオラではない率直さが、逆に希少価値のようなものに感じられ、「この人は信じるに足るかもしれない」と思わせられる素朴さがあるんですね。作るものも、とがっていなくて、ザハの反対です。
斉藤 現代日本においては、ヤンキー的な器の中におたく的なコンテンツが入っている構造ものがヒットするとも言われています。ジブリのアニメなどは、おたくが作ってヤンキーが売っているとも言われてますが、建築家はそれを一人でやらなきゃいけないのかなという気がします。
 実際のところ、建築の世界でもおたくがつくってますね。それでヤンキーがオラオラと説明しているという。ザハ・ハディドの作品でよくできていると思われる建物は、日本人がチーフを務めていたりするんです。オラオラで最後までやるんではなく、最後はオタクが細かく収めていく。そういう補完性が必要な領域なんですね。

(引用終了)
<同書 245−246ページ、フリガナ省略)

と述べておられる。オタク的といわれた妹島和代さんはSANAAで西沢立衛氏と組んで仕事をしているから、オタク的部分とヤンキー的部分とを二人で補完し合いながら作業を進めているのだろう。二人で補完し合うという仕事形態については、このブログでも以前「ホームズとワトソン」や「借りぐらしのArrietty」の項などで論じたことがある。

 さて、このブログでは、21世紀はモノよりもコトを大切に考える「モノコト・シフト」の時代であると繰り返し述べてきた。ここで、二つの透明性を補助線として、モノとコトを複眼主義的に再定義してみると、

A、a系: 世界をモノ(凍結した時空)の空間的集積体としてみる
B、b系: 世界をコト(動いている時空)の入れ子構造としてみる

という大きな絵柄を描くことができそうだ。20世紀はA、a系(実の透明性)が偏重されてきたけれど、複眼主義から見ても、21世紀は、両方のバランスが回復するよう、B、b系(虚の透明性)をより大切にすべき時代だということなのである。

 尚、複眼主義の体系的な理解には、「評論集“複眼主義”について」で紹介した本や、図を多く用いた「複眼主義入門」などをお読みいただければと思う。「複眼主義入門」は、サンモテギ・リサーチ・インクのFacebookページからevernote経由でpdf版を閲覧できる。

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posted by 茂木賛 at 10:43 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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