夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


古代史の表と裏 III

2021年07月27日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 このブログでは最近、「古代史の表と裏 II」(5/23/2018)という記事がよく読まれているようだ。その内容理解の助けになるよう、『百花深処』の方でアップした古代史年表、<古代史の骨格>(7/20/2020)を以下に掲載しておきたい。

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「百花深処」 <古代史の骨格>

 古代史の本は色々とあるが、元国土交通省湾岸技術研究所部長・長野正孝氏の三冊の本(PHP新書)、

『古代史の謎は「海路」で解ける』(1/30/2015初版)
『古代史の謎は「鉄」で解ける』(10/30/2015初版)
『古代の技術を知れば、『日本書紀』の謎が解ける』(10/27/2017初版)

は、これまでの常識にとらわれない実務家目線の内容でとても興味深い。

 同書(三冊)のエッセンスの幾つかは、

●二世紀の倭国大乱とは、半島から押し寄せた大量難民による社会変革をいう。
●倭国大乱の後、倭人とは別の遊牧民族系の交易路が日本海にできていた。
●卑弥呼は、海峡を渡る指導力を備えた巫女ではなかったか。
●四世紀末から五世紀の頭、初めて瀬戸内海航路が開通した。
●巨大古墳とは、治水・灌漑・交易を考えた公設市場であった。

といったもので、正史『日本書紀』とは大きく異なる見解となっている。

 これまで、この「百花深処」やブログ『夜間飛行』でその内容に触れてきたが、全体を分かり易く把握するために、以下、氏の知見を編年体に纏めてみた。

〇弥生中期前半(400BC〜200BC)
<燕から列島に鉄が渡来し始めた時代>

燕が朝鮮半島周辺を治めている時代、朝鮮半島で鉄が作られ始め、倭人(半島南部と九州、日本海沿岸の海洋民族)の手によって、列島に鉄器が流れ始めた。彼らは丸木舟で対馬海峡(九州北岸−壱岐−対島−半島南岸)を渡った。列島には倭人の他、狩猟民族としての縄文人、農耕民族としての弥生人がそれぞれ居住していた。

〇弥生中期中葉(200BC〜100BC)
<半島に漢の楽浪郡ができ、倭人の定期的な鉄の国内交易が始まる時代>

倭人は、列島各地から勾玉、翡翠、黒曜石を集め、九州で船団を組み、対馬海峡を横断、交易により定期的に半島から様々な鉄器を持ち帰った。

〇弥生中期後半(100BC〜100AC)
<前漢が滅び、新の時代を経て後漢ができる時代>

この時代、船は刳り船から縫合船(準構造船)へと進化。倭人の拠点が豊岡に出来、そこから彼らは大船団を組んで渡航、半島から鉄鋌(てつてい)を持ち帰った。鉄鋌は列島内で鉄器として加工された(鍛造と鋳鉄が行われた)。

〇弥生後期前半(100AC〜200AC)
<高句麗が半島を南下、「倭国大乱」が起きた時代>

高句麗が半島を南下し楽浪郡を侵略、大量の鉄が北や東に馬の背で運ばれた。高句麗の侵略で、夫余(ふよ)、東沃沮(よくそ)、濊(わい)、挹婁(ゆうろう)といった国々から大量の難民が列島に押し寄せ、社会変革が起きた。これを漢人は「倭国大乱」と捉えた。難民は、サハリンから南下するリマン海流と、対馬海峡から日本列島沿いを北上する対馬海流とを掴み、列島日本海側沿岸各地に辿り着いた。渡航には筏や丸木舟を平行に複数結わいた幅広の舟が使われた。 

〇弥生後期後半(200AC〜350AC)
<卑弥呼の時代>

半島南部で鉄生産始まった。魏の支配が半島に及び、倭人の国々(丹後や出雲、敦賀など)は、魏に半島での交易を認めてもらうために、洛陽まで使者(難升米)を送った。卑弥呼(場所は丹後か)は、天気を占い、船を選び、組織で「海峡を渡る」指導力を備えた巫女ではなかったか。

〇古墳時代前期(250AC〜400AC)

「倭国大乱」で大型の準構造船(木材を棚のように組んで波除板を設けた、幅広の少し大型の外航船)の技術が列島に齎された。これで半島東海岸から潮(リマン海流と対馬海流)に乗ってゆっくり流れ着くような航法が一般化し、馬が運ばれるようになった。遊牧民族系の渡来が引き続き、倭人ルートとは異なる、日本海ルートの交易路が新たに開かれた。列島には、

@ 海洋民族としての倭人(九州・日本海沿岸)
A 狩猟民族としての縄文人(東日本)
B 農耕民族としての弥生人(西日本)
C 北方アジア由来の遊牧民族(信州・関東)

が揃うこととなった(括弧内は主な居住地)。

〇古墳時代中期(400AC〜500AC)
<倭の五王の時代>

倭の王(場所は出雲か)は、半島での交易路を確保するために高句麗と戦い、歴代中国王朝に朝貢した。航海には帆船が用いられるようになった。戦の敗退と共に高句麗系文化が、特に出雲やCの地域に浸透した。この時代初頭、瀬戸内海航路が開通し、伽耶と百済の救済(難民受け入れ)が行われた。

〇古墳時代後期(500AC〜650AC)

瀬戸内海を交易船や軍隊が通るようになった。列島でも製鉄が出来るようになった。近畿水回廊(敦賀‐琵琶湖‐大坂)も整備された。ヤマトの地に各民族による共同都市(都)が形成された。水路が四通し、治水、灌漑、交易を考えた巨大公設市場(巨大古墳)が各地に作られるようになった。

 以上だが、@が活躍する時代から、Cが列島に地歩を固めた時代、ヤマトに都が形成されるまでの画期が、船と航路、鉄と交易、戦いと難民・移民の動きと併せて、分かり易く追えるようになったのではないだろうか。
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 『百花深処』ではその後も、

遊牧民族の足跡>(7/28/2020)
遊牧民族の足跡 II>(9/5/2020)
ミヌシンスク文明>(10/22/2020)
蘇我氏について>(11/7/2020)

と古代史関連記事をアップしてきた。併せてお読みいただければと思う。

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posted by 茂木賛 at 12:13 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

紙上旅行読書法

2021年07月21日 [ 読書法シリーズ ]@sanmotegiをフォローする

 このブログを読みに来てくれる人には、ミステリー好きの方も多いだろう。私も数々愉しんでいる。先日は「“世間”の研究」の項で、横山秀夫氏の作品を紹介した。最近嵌っているのは、ロンドンを舞台にしたミステリー。ご存じアンソニー・ホロヴィッツや、新鋭アリスン・モントクレアなどの作品だ。

 ロンドン市街地図を片手に、主人公たちが出没する場所を探しながら読み進める。さらには『地球の歩き方Plat〈04〉ロンドン』(ダイヤモンド社)などを読んで街の様子を知る。ハムステッド、ウエスト・エンド、ケンジントン周辺、ハイド・パーク周辺、ショーディッチ、サザーク、チェルシー、ノッティング・ヒルなどなど。時には(英国に因んで)紅茶とスコーンを食しながら読む。こういったやり方を「紙上旅行読書法」と名付けたい。

 アンソニー・ホロヴィッツ著『カササギ殺人事件(上)』(創元推理文庫・初版9/28/2018)は、1955年が主な舞台。『カササギ殺人事件(下)』(創元推理文庫・初版9/28/2018)は現代が舞台。この小説は一粒で二度おいしい出来に仕上がっている。

 アリスン・モントクレア著『ロンドン謎解き結婚相談所』(創元推理文庫・初版2/12/2021)の舞台は1946年のロンドン。戦後の荒廃した街の様子が興味深く描かれている。

 ホロヴィッツの『メインテーマは殺人』(創元推理文庫・初版9/27/2019)と
『その裁きは死』(創元推理文庫・初版9/11/2020)は共に現代が舞台。市街を飛び回る作者自身と探偵ホーソーンの二人が生き生きとしていて面白い。

 同じく彼の『シャーロック・ホームズ 絹の家』(角川文庫・初版10/25/2015)と『モリアーティ』(角川文庫・初版4/25/2018)は、ヴィクトリア朝時代のロンドンが舞台。『ホームズのヴィクトリア朝ロンドン案内』小林司/東山あかね共著(とんぼの本・新潮社)などを引っ張り出して当時の街の姿を眺める。中心地の街路は昔からあまり変わっていないから今との比較もできる。

 『その裁きは死』の帯裏に、<『カササギ殺人事件』の続編、Moonflower Murders 2021刊行決定!>とあり、『ロンドン謎解き結婚相談所』の帯裏に、<2021年秋、次作A Royal Affair 翻訳刊行!>とある。紙上旅行の続きを楽しみにしたい。

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posted by 茂木賛 at 15:18 | Permalink | Comment(0) | 読書法シリーズ

店の3分類

2021年07月03日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 過日、車で街道を走っていて、「ローカル、チェーン、ニューウェーブ」というフレーズが頭に浮かんだ。街道には様々な店が並んでいる。「ローカル」とは地元密着型の店、「チェーン」とはドラッグストアやコンビニなど薄利多売・広域展開の店、「ニューウェーブ」とは時代の先端を行く店、おしゃれなカフェやパン屋など。これらが一か所に混在している「道の駅」などもあるが、それも中を分けて考え、すべてをこの「3の構造」で分類する。業種は問わない。そして、ここが味噌だが、それぞれに「なれの果て」というカテゴリを加える。

(1)ローカル店
(1´)ローカル店のなれの果て

(2)ニューウェーブ店 
(2´)ニューウェーブ店のなれの果て

(3)チェーン店
(3´)チェーン店のなれの果て

 街道には、歴史的にいってまず(1)があり、そこへ(2)が入ってくる。昔でいえば、蝋燭(ろうそく)屋しかなかったところへ電球を売る店が出来るようなこと。(2)はうまくすればやがて(1)となって地元に溶け込む。(1´)は需要変化への対応や後継者づくりに失敗した店。(2´)は街に溶け込めず、時代からも取り残されてしまった店だ。

 大量生産・輸送・消費時代がくると(3)が出現する。人目を惹く派手な店づくりが特徴で、広域スーパーやドラッグストア、コンビニ、ファミレスなどがその代表。(3´)は、期待していた利益が上がらず他所へ移転してしまった店舗跡である。

 業種を問わないこの分類は、街道沿いだけでなく街なかにも応用できる。街の賑わいは、地元が元気なことが第一条件だから、全体に占める(1)の比率が大きいことが大切だろう。しかし適度な外からの刺激も大切で、そのためには(2)の存在が欠かせない。また、生活用品の調達先や手軽な食事処として(3)が全くないというのも困る。モールなど(3)の集まった場所は「誰でもない自分」になれる場所としても便利。人は時々そうなりたくなるものだ。街トータルとして考えた場合、比率としては、全体を10として、

(1)5
(2)3
(3)2

ぐらいが適当だろうか。重要なのは、それぞれの「なれの果て」(空き店舗・空きビル・空き地・シャッター通り等)を極力抑えることである。なれの果てを(4)として、

(1)4
(2)3
(3)2
(4)1

ならまあまあいいだろう。これが、

(1)3
(2)2
(3)3
(4)2

になり、

(1)2
(2)2
(3)3
(4)3

という比率になると街は活気を失い始める。

(1)1
(2)1
(3)4
(4)4

となると街は廃墟に近づく。

 みなさんの街はいかがだろう。過去から今に至る比率(とそのトレンド)を考えてみていただきたい(分類基準は適時見直すことを前提に「どちらかというと」といった緩いもので構わない)。そして、これを都市計画に活用する。

 この発想法は、街の活性化を、目先の税制優遇や住民の自発性に頼る方向ではなく、もっと大局から、街の店舗のバランスを適正水準に保つ方向で人々を引き付けようというものだ。複眼主義の対比、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」

でいえば、A側の発想でやるということ。業種を問わないのは、そちらは地域の特性と需要・供給に任せればいいだろうと割り切って考えるから。

 どのようにこのバランスを良くして、「なれの果て」を抑えるか。それにはまず、今の「土地利用よりも土地所有が優先される法体系」(「対抗要件と成立要件」)の見直しが必須なことは言を俟たないだろう。魅力的な街づくりには「原則自由・例外制限」ではなく(構成員の合意に基づく)「原則制限・例外許可」方式が必要なのだ。そのうえで、肌理の細かな方策・条例を設定する。

 いかがだろう。一見遠回りのようだが、俯瞰的でなかなか面白い戦略ではないだろうか。尚この比率(とそのトレンド)を考える作業は、都市計画にだけでなく、店舗型スモールビジネスの起業立地を考える上でも役に立つと思う。

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posted by 茂木賛 at 10:31 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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