企業における理念(Mission)の重要性については、これまで、
「理念(Mission)先行の考え方」
「理念希薄起業」
「組織は“理念と目的”が大事」
などの項で力説してきた。それに関連して、昨秋読んだ新聞コラムを紹介したい。
(引用開始)
「ミッション・イズ・ボス」
日経産業新聞で興味深い言葉を見かけた。急成長を遂げる米半導体大手エヌビディアで使われているそうだ。ヒエラルキー(階層制)はなく、その時々に果たすべきミッション(使命、重要な任務)のもと必要な人たちが集まって仕事をするのだという。
ミッションという上司との間では、ハラスメントも起きない。同じ目的のもと期間限定で集まったチームならば、やりがいもあって、風通しもよさそうだ。もちろんストレスのない理想郷などこの世にないだろうが。
国連の世界幸福度ランキングで日本は順位を下げている。主観的な幸福感にもとづく。働く人ならば一日の多くの時間をすごす職場の環境が無縁ということはないだろう。
二〇三〇年の世界のあるべき姿を一七の目標という形で示した国連のSDGs(持続可能な開発目標)の一つは「働きがいも経済成長も」。ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)がキーワードとなる。
環境省ではやりがい向上などのため、担当外の仕事を二割まで認める方針を決めたという。中央省庁は近年、若手職員の離職の多さが問題となっている。従属ありきだった日本の組織の縦横に張り巡らされた壁に風穴をあけていくことは、ディーセント・ワークを実現し、ひいては持続可能な成長への一つの道筋のように思う。(早川由紀美)
(引用終了)
<東京新聞(私説「論説室から」)10/19/2020>
「従属ありきだった日本の組織の縦横に張り巡らされた壁」とは、「“世間”の研究」の項などで見てきた、“世間”という同調圧力の強い組織の壁と同義だろう。
「その時々に果たすべきミッション(使命、重要な任務)」とは、このブログでの用語、
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「理念(Mission)」:その会社がどのような分野で、どのように社会へ貢献しようとするのかを表現した声明文。
「目的(Objective)」:その会社が具体的に何を達成したいのかを纏めた文章で、理念(Mission)の次に大切なもの。
「事業(Business)」:会社の目的(Objective)の実現手段。
「目標(Goal)」:事業の達成ゴール。年度別、月別など。いつ頃まで何をするのか。事業の最終目的を予め明らかにしておくことも大切。
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でいう「事業(Business)」レベルにおける個別な任務を指すようだが、いづれにしても属人的なヒエラルキーではなく、客観的な指標を上司(Boss)とすれば、組織の同調圧力はシャットアウト出来る。「僭越ながら」「烏滸がましい」「差し出がましい」「出過ぎた真似」「身の程知らず」といった属人的な言葉は聴かれなくなる筈だ。日本の多くの会社でこの考え方が標準となると良いのだが。
尚、このブログでの「理念(Mission)」など各用語の具体例について「後継者づくり」の項で、それを基にした小説を「小説『古い校舎に陽が昇る』について」の項で紹介した。併せてお読みいただけると嬉しい。