夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


同調圧力

2020年10月20日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 以前「自粛警察」の項で、『加害者家族バッシング 世間学から考える』という本の著者佐藤直樹氏のインタビュー記事を紹介したが、最近(2020年8月)、その佐藤氏と作家・演出家鴻上尚史氏との対談本、『同調圧力』(講談社現代新書)が出版された。副題は「日本社会はなぜ息苦しいのか」。

 鴻上氏によると「同調圧力」とは、「みんな同じに」という命令で、同調する対象はその時の一番強い集団。多数派や主流派集団の「空気」に従えという命令が同調圧力だという。同書カバー帯(表・裏)には、

(引用開始)

日本は世界でもっとも同調圧力が強い国だった
忖度 承認欲求 自己責任 自粛警察 学校でも 会社でも
新型コロナが炙り出した世間という名の「闇」に迫る

生きづらいのはあなたのせいじゃない。
日本社会のからくり=世間のルールを解き明かし、息苦しさから解放されるためのヒント

〇戦争中から変わらない「国民総自粛」
●日本人が名刺をもらうと安心する理由
〇「世間=同調圧力」を生み出す日本独特のルール
●西洋は「社会」、日本は「世間」の大きな違い
〇感染者はなぜ謝罪に追い込まれるのか?
●学校でも会社でも「先輩」が強すぎる不思議
〇日本では「批評」がそのまま「人格否定」となる
●言霊の国なのに言葉が信用されない謎
〇ネット上の匿名が圧倒的に多い日本人
●若者の自己肯定感が低い理由
〇なぜ出る杭はは打たれるのか?――芸能人の政治発言
●不寛容の時代に窒息しないために

(引用終了)

とある。

 日本には「世間」はあるが「社会」がない、というのがこの本の眼目である。「社会」とはバラバラの個人の集合体で法のルールによって動くが、「世間」においてはその個人が存在しない。前回アップした「“群れ”と“集団”」の定義でいえば、「世間」=「群れ」、「社会」=「集団」ということだろうか。「世間」=「群れ」は法のルールではなく同調圧力によって動く。この圧力は日本が世界に突出して高く、数人の小さなグループのレベル、職場や学校、PTAや近所の公園での人間関係にも生まれるという。佐藤氏は世間を構成するルールを、

1.お返しのルール
2.身分制のルール
3.人間平等主義のルール
4.呪術性のルール

の4つに纏め、鴻上氏は世間の特徴を、

1.贈り物は大切
2.年上が偉い
3.『同じ時間を生きること』が大切
4.神秘性
5.仲間外れをつくる

の5つに纏めておられる。詳細は同書をお読みいただきたいが、「世間」の構成ルールとその特徴がうまく捉えられていると思う。

 このブログで提唱している複眼主義の対比、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」
B 女性性=「時間重視」「関係原理」

でいえば、同調圧力はB側の思考に強く出ると考えられる。B側は発想が環境中心で主格中心ではないから、どうしても人は安定を求めてその時に自分がいる環境(場所)内の圧力を均衡させようとする。

 複眼主義の対比に従えば、いまの日本語的発想は同調圧力を助長する方向に働く。言葉の在り様が圧力発生の要因になっているのだ。佐藤氏も言葉の問題を気にしていて次のように言う。

(引用開始)

 日本語というのは、基本的に「世間」の言葉だと思うんです。「世間」を構成しているのが日本語で、対して英語は「社会」の言葉です。英語で考えたときと日本語で考えたときでは世界がまったく違う。英語で考えたときは「社会」が見えるし、日本語で考えると「世間」が現れる。先に少し述べましたが、「I」は、日本語にした場合、「私」とか「自分」とか「俺」とかいろんな言い方ができるわけです。英語は「I」だけ。つまり一人称は、相手が大統領だろうが友達だろうが全部「I」と「you」でいわばタメ口でいいわけです。ところが日本語の場合はタメ口じゃまずいわけで、それをうまく使い分けるようにしないといけない。これが「身分制のルール」が日本語のなかに構造化されているからなんです。

(引用終了)
<同書 170−171ページ(太字省略)>

いまの日本語をA側の思考にも充分使えるように鍛え直さないと、日本人はいつまでも「世間」に絡めとられたままで終わってしまうだろう。このことは以前「環境中心の日本語」の項でも書いたことがある。併せてお読みいただきたい。

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posted by 茂木賛 at 10:29 | Permalink | Comment(0) | 言葉について

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