夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


免疫について II

2020年04月27日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「免疫について」の項で、免疫に関する興味を、

(1) 健康管理
(2) 脳科学との関係
(3) 社会科学への適応

の三つに纏めたことがある。今回、新型コロナウィルスとの関連で、特に(1)の健康管理の観点から免疫の働きを整理しておきたい。内容は主に、2016年に出版された『笑う免疫学』藤田紘一郎著(ちくまプリマ―新書)に拠る。

 まずは免疫細胞の種類から。免疫には大きく「自然免疫」(生体が先天的に持っている作用)と、「獲得免疫」(後天的に得る作用)とがある。マクロファージ、好中球、NK細胞などは自然免疫、T細胞、B細胞などは獲得免疫を担当する。T細胞にはキラーT細胞とヘルパーT細胞(Th1とTh2)がある。

 ウィルスは、自身ではエネルギーも作れず増殖もできない。寄生した生体の宿主細胞と一体化し、内部に自身のRNAを注入、子孫のウィルスを作り増殖する。

 体内にウィルスが入ってくると、まずマクロファージがこれを食べる。NK細胞はウィルスに感染した細胞を殺す。NK細胞はさらにサイトカイン(免疫反応の調整に不可欠な物質)を産出し、体内の細胞にウィルスに対する抵抗性を持たせる。ここまでが自然免疫の作用。

 マクロファージが食べたウィルスの情報は、ヘルパーT細胞(Th2)を通してB細胞に伝わる。するとB細胞はウィルスに対する抗体(抗原と特異的に結合して抗原の働きを抑える)を産出。抗体はウィルスに感染した細胞を除去する。ヘルパーT細胞(Th1)は同時に、キラーT細胞に命じてウィルスと戦わせる。T細胞とB細胞はこのウィルスの情報を記憶して再度ウィルスが侵入してきた時に備える。これらが獲得免疫の作用である。

 以上のステップのどこかに不具合が生じるか、別の特異な要因が加わると、ウィルスはなくならない。新型コロナウィルスの場合、感染してもしばらく発症しないのは何故か、すぐに治る人と重症化する人の違い、症状、検査方法、ウィルスの種類、抗体の有効性、サイトカインストーム、治療、情報の記憶、ワクチン製造、抗体消失、集団免疫などについてもっと知る必要がある。知識を増やしたい。

 免疫作用は、細菌やウィルスなど外部からの抗原(非自己)を攻撃するばかりでなく、内部組織を抗原とみなして攻撃してしまうこともあるから厄介だ。後者は自己免疫疾患と呼ばれる。免疫はこの自己と非自己を見分ける仕組みがかなり複雑で分かりにくい。主要組織適合抗原複合体(MHC)、クラスI分子とクラスII分子、T細胞受容体(TCR)、MHC拘束性、自己免疫寛容(クローン除去、アナジー、制御性T細胞)、Th1とTh2のバランスなどなど。

 たとえばMHC拘束性とは何か。

 人は、ほぼすべての細胞表面にMHC(Major Histocompatibility Complex)を持っている。MHCにはクラスI分子とクラスII分子とがあり、前者は人を構成する大部分の細胞表面に存在、後者はマクロファージ、T細胞、B細胞などの限られた細胞表面にしかない。細胞がウィルスに感染すると、感染した細胞の(マクロファージ由来の)クラスII MHCとウィルス抗原に、ヘルパーT細胞(Th1)が接着してサイトカインを放出、キラーT細胞を出動させる。キラーT細胞は、ウィルス感染細胞の表面のクラスI MHCとウィルス抗原に接着し、ウィルス感染細胞を破棄除去する。これは上述した獲得免疫の作用の一部だが、この時、キラーT細胞は、感染細胞に自分の組織と同じMHCがないと作動しない。これをMHC拘束性という。

 たとえば自己免疫寛容とは何か。

  私たちの体内には、自己の物質(自己抗原)に対する抗体も存在する。それらが抗原抗体反応(抗体が抗原と特異的に結合して抗原の働きを抑えるように作用すること)を起こさないよう、免疫系が(クローン除去、アナジー、制御性T細胞という3つのメカニズムで)制御している現象を、自己免疫寛容という。

 たとえば自己免疫疾患とは何か。

 なにかの理由で自己免疫寛容に異変が生じ、自己組織を敵とみなすキラーT細胞やマクロファージが刺激され自己組織を攻撃したり、自己成分を異物とみなすヘルパーT細胞やB細胞が刺激され自己成分に対する抗体を作り自己組織を攻撃することを、自己免疫疾患という。

 これらの詳細については当書(注)、あるいは類書をお読みいただきたい。

 「サンフランシスコ・システム」や「父性の系譜」、「新しい統治正当性」などの項で指摘してきたように、今の日本列島に「国家理念」と呼べるものはない。あるのは官僚による「政策」だけ。一本筋の通った国家理念とそれに基づく強いリーダーシップがないと、特に複雑系の政策は後手に回る。

 今回のウィルスの発生原因については諸説あるが、一部の為政者はこれを覇権争いに利用すると同時に、「コロナウィルスとモノコト・シフト」の項で指摘したように、「認知の歪みを誘発する要因」の項で触れた「ショックドクトリン政策」によって、監視の強化や経済的影響力深化を進めるだろう。社会的弱者の切捨ても。

 スモールビジネスに関わる皆さんは、そういう為政者に惑わされることなく、免疫力をつけ、ウィルスに関する知識を増やし、自身(と家族や従業員)の危機管理対策に知恵を絞っていただきたい。

(注)
・同書120ページ13行目「自分にとって不都合なMHC」は「自分にとって不都合のないMHC」か。
・同書138ページ7行目「自分と同じMHCを持っている細胞」は「自分と同じMHCで変性していない細胞」か。

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posted by 茂木賛 at 14:35 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

ニュートン粒子と自己駆動粒子

2020年04月09日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「新しい統治思想の枠組み II」の項で、『渋滞学』西成活裕著(新潮選書)という本に触れた際、「ニュートン粒子と自己駆動粒子」という言葉を紹介した。

 ニュートン粒子とは、水分子やゴルフボール、惑星など、ニュートンが考えた力学の基本原理、@慣性の法則、A作用=反作用の法則、B運動法則を満たすものを指し、自己駆動粒子とは、車や人、生物など、一般にニュートンの3法則を満たさないものを指す。

 渋滞学の研究対象は主に自己駆動粒子だ。ただしニュートン粒子にも粉粒体というものがあり、研究が進められているという。粉粒体とは、構成している粒子の一つ一つは固体だが、それがある程度集まるとサラサラと流れるような動きをしたり、凝集すると再び固まったりする性質を持つものを指す。

 いま我々の生活を脅かしているウィルス、生物と言ってよいのかどうか分からないが、生物に付いて増殖することは確かだから、自己駆動粒子系ということで、立派に渋滞学の対象の筈。『渋滞学』の中にも、病原菌についての言及がある。同書第5章「世界は渋滞だらけ」<渋滞が望まれる森林火災>から引用しよう。

(引用開始)

 次々と燃え広がる火を一種の流れとみなせば、これもまた自己駆動粒子系として考えることができる。そしてこれまでと違って「火災の渋滞」とは、むしろ大歓迎すべき現象ということになる。つまり、渋滞せずにどんどん進んでゆくことは、火災の広がりを意味しているが、渋滞とはそこで火の進む勢いがなくなることを意味するからだ。
 このような観点から森林火災を考えると、その防止のためにはいかにして渋滞を起こせばよいのか、という逆の発想が必要だ。いま、ある木が燃え出したとして、それが山全体に燃え広がらないためにの条件はどういうものだろうか。たとえばある程度木と木の間隔が開いていれば、火にとって通り道がなくなりそれ以上前には進めない。しかしあまり間隔をあけて植林するというのは、林業などで材木を切り出す場合にはあまりにも効率が悪くなる。したがって、ある木の近くにどのように他の木が分布していれば安全なのかが知りたくなる。
 このような疑問に答えるのに適した手法が「パーコレーション」といわれるもので、統計物理学の比較的新しいテーマの一つだ。パーコレーションとは「浸透」という意味で、あるものが別のものの中にどれだけ浸み込んでゆけるかを計算できる。たとえば、雨が地面に落ちて地下に浸み込んでゆく様子がまさにパーコレーションで、どのような土質と表面にすれば雨水はどのように浸透してゆくのか、というのは土木工学でも重要な研究課題になっている。森林火災では、火がどれだけ森の中を燃え広がるのかが知りたいので、まさにこのパーコレーションの手法が使える。(中略)
 パーコレーションという強力な統計物理学の方法を渋滞学に応用することで、他にも様々な流れとその渋滞を研究することができる。たとえば、伝染病の問題が挙げられる。木を人とし、火を病原菌にとみなせば、森林火災とほぼ同じアプローチで考えることができ、伝染病を食い止めるのは、病原菌の渋滞を起こせばよいことになる。感染者の分布密度がある一定値以上に上がらなければ病気が全体に広がることはない。この限界密度を求める研究は現在盛んに行われている。
 また、病原菌の代わりに意見や噂という実態のないものを考えれば、どのように人々の間に世論が形成されるのか、あるいは噂はどのように広がってゆくのか、なども研究してゆくことができるだろう。これは次章で述べる、ネットワークの話と絡んで最先端の研究テーマの一つになっている。

(引用終了)
<同書 186−190ページ>

この本が出版されたのは2006年だから、こういった「パーコレーション」の研究はその後かなり進んだだろう。

 「新しい統治思想の枠組み II」を書いたのは去年の10月。新型コロナウィルスの流行を予見したわけではないが、社会をモノ(ニュートン粒子)の集積体として捉えない「渋滞学」の知見が、今回の事態にどれだけ生かされるか、他の医学的知見と併せて注目したい。

 ウィルス問題は、ウィルスの感染渋滞そのものもさることながら、ワクチンや治療薬の開発、治療器や医療のリソース、実物経済・マネー経済へのインパクト、他地域の状況、社会的不安(噂の拡散)、集団免疫の形成など、数多くの事象の「フィードバック効果」が一気に重なり合うから、対策には知恵がいる。自己駆動粒子の多体問題(multibody problem)。「対数正規分布」の項でみたように、21世紀はやはり自然科学、社会科学も含めた「複雑系科学」の時代に違いない。

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posted by 茂木賛 at 10:00 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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