『日本列島の下では何が起きているのか』中島淳一著(講談社ブルーバックス)を読む。副題は「列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで」。本カバー裏表紙の紹介文には、
(引用開始)
地球深部から始まる
日本列島の変動を徹底解説!
私たちが住む日本列島の下には、
2つの海洋プレートが沈み込んでいる。
プレートの沈み込みは、列島を形成し、
地震と火山噴火をもたらす原動力として働いている。
沈み込んだプレートは地球深部でどうなっているか?
地球深部の現象と地震・火山噴火はどう結びつくのか?
すべての鍵を解くカギは
プレートとともに沈み込んだ「水」が握っていた!
(引用終了)
とある。本書のPrologueと10のChapterは以下の通り。
Prologue 沈み込み帯に生まれて
Chapter 01 プレートテクトニクス入門
Chapter 02 地球内部を視る方法
Chapter 03 日本列島ができるまで
Chapter 04 日本列島の下には何があるか?
Chapter 05 プレートの沈み込みと水
Chapter 06 プレート収束境界で何が起こっているか?
Chapter 07 沈み込むプレート内で何が起こっているか?
Chapter 08 火山の下で何が起こっているか?
Chapter 09 内陸地殻で何が起こっているか?
Chapter 10 関東地方の地下で何が起こっているか?
地球は表面から中心に向かって、地殻・マントル・核の3層からなっており、地殻とマントル最上部をふくむ温度が低く硬い岩盤領域をリソスフィア(岩石圏)、その下の温度が高く流動性に富む領域をアセノスフィア(岩流圏)、それより深いマントル領域をメソスフィアと呼ぶ。
プレートテクトニクスの基本概念は、「地球の表面は何枚かの硬いリソスフィアであるプレートで覆われており、プレートはやわらかいアセノスフィアの上を運動している。地表のおもな地学現象は、あるプレートと別のプレートが接する場所(プレート境界)で起こる」(本書18ページ)というもの。
プレートには、大陸プレートと海洋プレートとがある。「3つの石」の項で見たように、大陸プレートは主に花崗岩、海洋プレートは主に玄武岩、マントルは主に橄欖岩からできている。大陸プレートの方が海洋プレートよりも平均で厚く、花崗岩の方が玄武岩・橄欖岩よりも密度が低いから、大陸プレートと海洋プレートが接する境界では、後者が前者の下に沈み込む。2つの大陸プレートと2つの海洋プレートとがせめぎ合う日本列島の周辺には、かくて、多くの沈み込み帯が形成される。
本書は、プレートテクトニクス理論に基づき順を追って地殻・マントルの動きを説明してあるので理解しやすい。トランスフォーム断層、アイソスタシー、地震波トモグラフィ、アウターライズ、熱クラック、付加体、ソリダスとリキダス、アスペリティ、スロースリップ、二重深発地震面、マントルウエッジ、加水融解、モホロビチッチ不連続面(モホ面)といった言葉もどうにか覚えた。
今、さらに『日本列島100万年史』山崎晴夫・久保純子共著や『フォッサマグナ』藤岡換太郎著(どちらも本書と同じ講談社ブルーバックス)を読んで、日本列島の生い立ちや組成、地震予知などに関する理解を深めようとしているところだ。4つのプレートがせめぎ合うこの列島周辺、房総半島南東沖には、3つのプレートが交わる三重会合点もあるという。
以前「気象学について」の項で、気象学や免疫学は複雑系科学の宝庫であり、それらは社会現象の分析にも応用できそうだと書いたけれど、プレートテクトニクスでいう様々な現象も同様に思える。トランスフォーム断層、アイソスタシー、付加体、アスペリティ、スロースリップなどなど。こちらもさらに考えを進めたい。