『三つの石で地球がわかる』藤岡換太郎著(講談社ブルーバックス)という本を面白く読んだ。三つの石とは、橄欖岩、玄武岩、花崗岩をいう。まず本カバー裏表紙の紹介文を引用しよう。
(引用開始)
「水の惑星」地球は「石の惑星」でもある。
太陽系で最も多くケイ素が集まったため、
ほかの惑星にはない多彩な石が生みだされた。
しかし種類が多いだけに「石の世界」は複雑で、
名前を見ただけで嫌気がさしてしまいがちだ。
本書では初心者が覚えるべき石を三つ選び、
それらを主役に、石と地球の進化を語っていく。
読めば「石の世界」が驚くほどすっきりわかる!
(引用終了)
本の目次も紹介しよう。
<はじめに>
<序章> そもそも、石とは何だろうか
<第1章> マントルをつくる緑の石―橄欖岩のプロフィール
<第2章> 海洋をつくる黒い石―玄武岩のプロフィール
<第3章> 大陸をつくる白い石―花崗岩のプロフィール
<第4章> 石のサイエンス―鉱物と結晶からわかること
<第5章> 三つの石の家族たち―火成岩ファミリーの面々
<第6章> 三つの石から見た地球の進化―地球の骨格ができるまで
<第7章> 「他人の石」たち
<おわりに>
主に三つの石を巡って話が進むから、石の組成、マントル、マグマ、プレート、オフィオライト、プレートテクトニクス、プルームテクトニクス、アイソスタシーなど、地球科学に関する知識が頭に入りやすい。<第6章>が本書のクライマックスで、橄欖岩誕生の謎が(仮説として)解き明かされる。
<第6章>の「三つの石がつくった地球の特別な構造」というセクションに、地球の他の惑星に比べた特異性として、
(引用開始)
もちろん生物や水の存在は最大の特徴ですが、それだけではありません。この惑星は、外から磁気圏、大気圏、生物圏、水圏、岩石圏などと、さまざまな圏が同心円状に取り巻いて分布しています。これもほかの惑星には見られないことです。
(引用終了)
とある。地球ユニークな存在としての「層構造」。岩石圏の中も、鉄、橄欖岩(マントル)、玄武岩(海洋地殻)、花崗岩(大陸地殻)が同心円状の層構造を成しているらしい。岩石圏層構造と人の大脳皮質の6層構造との類似性(どちらも熱対流の法則に従った自己形成か)にも思いが及ぶ。
この本から、層構造以外にも様々な方向へ興味が広がった。「興味の横展開」の要領で箇条書きにしてみたい。
1.地球科学全般
当然ながら石から地球へ。以前読んだ藤岡氏の講談社ブルーバックス三部作、
『山はどうしてできるのか』
『海はどうしてできたのか』
『川はどうしてできるのか』
の再読。最近出た同氏の『フォッサマグナ』や『日本列島の下では何が起きているのか』中島淳一著(いづれも講談社ブルーバックス)なども。
2.土への興味
石とくれば土、ということで土壌について。最近出た『土 地球最後のナゾ』藤井一至著(光文社新書)が面白そう。土からさらに微生物への興味展開で『発酵の科学』中島春紫著(講談社ブルーバックス)という本も。
3.建物
石を使った建物の鑑賞。ちょうどタイムリーに雑誌「東京人」が<石に恋して>という特集(2018年10月号)で東京の石建築を扱っている。藤森照信建築探偵の石特化バージョン。面白そう。
4.宝石や奇岩
様々な鉱物への興味。石は、気の遠くなるような時空をその内に集め持っている。まずは本棚に埋もれたままになっている『ときめく鉱物図鑑』宮脇律郎監修(山と渓谷社)を開く。開高健などの石をテーマにした小説も。
5.層構造
以前読んだ『脳の方程式ぷらす・あるふぁ』中田力著(紀伊国屋書店)などをじっくりと再読しよう。
ざっと上のような次第だが、秋は読書の季節。さまざま学んでみたい。