夜間飛行

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父性の系譜

2018年09月05日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 一昨日、文芸評論『百花深処』の方で<代議制>の項をアップした。これで去年の春から延々と書き連ねてきた列島の国家統治能力(父性)に関する考察「父性の系譜」が一段落した。まだ先を続けるつもりだが、昨日、フェースブックの「ページ」に簡単な纏めの文章を載せた。連載各項の位置づけを記した簡単な道案内のようなものでしかないけれど、その文章をこちらにも再掲したい。

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 文芸評論『百花深処』<代議制>をアップしました。日本人(日本語を母語とする人)の国家統治能力(父性)の研究「父性の系譜」の通し番号としては㉜になります。

 昨年春、戦後の国家統治能力(父性)の不在を何とかできないかと思って始めた、日本の父性の仕組みを歴史的に振り返ろうという試み。取敢えずの出発点は、『江戸の思想史』田尻祐一郎著(中公新書)で出会った、列島独自の思想「中世の武士思想」と、列島独自の仕組み「近世の家(イエ)制度」でした。

@<中世武士の思想>
A<近世の「家(イエ)」について>

どちらも日本の国家統治能力(父性)と関係がありそうなのですが、今では両方とも過去の遺物となってしまっています。

 私はその独自性の喪失が、戦後の国家統治能力(父性)不在と関係があるのではないかと考え、二つはなぜ生まれたのか、どのような理由で消滅してしまったのか、という観点から歴史を遡ることにしました。

B<父性の源泉>
C<武士のルーツ>

 歴史を古代まで遡ると、列島には、

(1) 騎馬文化(中世武士思想のルーツ)
(2) 乗船文化(武士思想の一側面)
(3) 漢字文化(律令体制の確立)

というタイプの異なる国家統治能力(父性)があることが分かってきました。

D<古代の民族文化>
E<古代の民族文化 II>
F<古代の民族文化 III>
G<古代の民族文化 IV>

 さらに戦国時代に入ると、

(4) 西洋文化(キリスト教と合理思想>

がそれに加わります。

H<信長における父性>
I<信長の舞>
J<父性の源泉 II>

 次に見たのは、

(1) 騎馬文化(中世武士思想のルーツ)
(2) 乗船文化(武士思想の一側面)
(3) 漢字文化(律令体制の確立)
(4) 西洋文化(キリスト教と合理思想>

というこの4つのタイプが、徳川時代に入ってどのように機能したのかという点です。そこで分かってきたのは、徳川初期までは力のあった(1)が次第に弱まり、中期以降は(3)が主流になっていったこと、(2)と(4)は傍流ながらそれなりに機能していたことでした。

K<近世の武士について>

 「中世の武士思想」が弱まると、「近世の家(イエ)制度」も弱くなっていきました。この列島独自の思想と制度が弱体化していった挙句、徳川幕府は崩壊します。そのことから、私は、徳川幕府が崩壊したのは(1)が弱まってしまったからではないか、という仮説を立てました。

 そこでもう一度徳川時代以前に戻り、武士たちが生み出した統治思想を整理しました。

L<天道思想について>
M<預治思想について>

 さらに現代の目で、それに欠けていることを追加し、

(1) 騎馬文化(中世武士思想のルーツ)
(2) 乗船文化(武士思想の一側面)
(3) 漢字文化(律令体制の確立)
(4) 西洋文化(キリスト教と合理思想>

をバランスよく機能させる統治思想を考えてみました。それは、

〇 中央政治(外交・防衛・交易)は預治思想による集権化
〇 地方政治(産業・開拓・利害調整)は天道思想による分権化
〇 文化政策(宗教・芸術)は政治と切り離して自由化

〇 列島の預治思想では天命=天道とする
〇 天道=自然現象=民意
〇 民意を上手く掬い上げるために代議制を導入する
〇 代議制のベースは家(イエ)とする

といった内容です。

N<新しい思想>

 この新しい統治思想の骨格は、今の時代でも通用するのではないか。その有効性をさらに検討すべく、世界および日本(徳川時代まで)の宗教・思想を概観しました。

O<宗教・思想基本比較表>
P<国学について>
Q<蘭学について>
R<日本陽明学について>
S<安藤昌益と三浦梅園>
㉑<伊藤仁斎と荻生徂徠>
㉒<新井白石>
㉓<武士の土着>
㉔<武士の再興>

 また、戦国時代の統治実態や、(1)と(3)の背景についても再検証しました。

㉕<天道思想による統治>
㉖<関東戦国時代>
㉗<信長の城>
㉘<騎馬民族と農耕民族>

 それらをベースに新しい統治思想の論点を補強。

㉙<一所懸命と天下布武>
㉚<「神国日本」論>
㉛<百姓の家(イエ)の成立>

 そして今回、天道思想と預治思想における代議制のロジックを纏める所まで論を進めることができました。

㉜<代議制>

 これからは、幕末の開国から昭和の敗戦、さらに戦後へと続く歴史を振り返ってみたいと思います。そのうえで、今の時代に通用する列島の統治思想を纏めてみたいと考えています。
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 以上だが、日本の国家統治能力(父性)不在についての考察は、『百花深処』と並行して、ブログ『夜間飛行』の方でも(どちらかというと)経営的観点から綴ってきた。

「経営の落とし穴」(12/3/2017)
「教義と信仰」(1/6/2018)
「徳川時代の文化興隆」(2/10/18)
「反転法」(2/12/2018)
「経営の停滞」(3/19/18)
「内的要因と外的要因」(3/30/18)
「評伝小説二作」(5/5/18)
「江戸時代の土地所有」(6/16/18)
「新しい家族概念」(6/24/18)
「田沼意次の時代」(7/29/18)

特に「新しい家族概念」の項では、21世紀の家族概念と近世の「家(イエ)」システムとの近接性を指摘。この点は今後の列島の統治思想の鍵になると思う。

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posted by 茂木賛 at 13:54 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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