夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


脳と身体 II

2016年09月28日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 黒川伊保子さんの『「ぐずぐず脳」をきっぱり直す!人生を変える7日間プログラム』(集英社)という本が出た。彼女の語感分析法ついては最近「タノシイとウレシイ」の項で書いたが、こちらは、黒川さんの人工知能/脳科学コメンテーターとしての書だ。本帯(表紙及び裏表紙)と本カバー表紙裏には、

(引用開始)

脳を活性化する16のこと

「なんだか、さえない」「毎日、楽しくない」「人生、イケてない」「最近、モテない」……それは、あなたのせいではなく、「ぐずぐず脳」のせいだった!
治すのは、意外と簡単。この本は、そんなジリ貧状態から抜け出すための、「脳のメンテナンス」の指南書である。

「ぐずぐず脳」でくよくよ考えるのは、もうやめよう。脳を活性化するのに、頑張りも、反省も必要ない。食べ方や眠り方、ちょっとした身体や言葉の使い方――、そんなさりげない生活習慣こそが、脳を劇的に変えるのである。

脳のちからは、頑張って出す精神力じゃない。いくつかのホルモンによってもたらされる、れっきとした機能なのである。それらのホルモンが出ていれば、精神力は強く保たれる。好奇心は勝手に湧いて止まらない。朝起きたら、今日もいいことがありそうな気がするはずなのだ。誰にほめてもらえなくたってめげないし、意欲は一秒たりとも萎えたりしない。そしてそホルモンは、生活習慣さえ変えれば、何歳からだって増やせるのである。

(引用終了)

とある。

 黒川さんの脳科学の所見ついては、これまで「男性性と女性性」「現場のビジネス英語“sleep on it”」「流行について」の各項で紹介してきたが、この本はそれらを体系的に纏めたもの。「脳と身体」のバランスの大切さを考える上で奥深い内容となっている。目次から項目を抜き書きしよう。

第一章:脳の取り扱い説明書
まず、脳に良いこと、悪いことの基本を知る

脳のトリセツ@ 脳は、光の強弱に支配されてホルモンを分泌する
脳のトリセツA 脳は、眠っている間に進化する
脳のトリセツB 脳にとってなによりも怖いのは、「血糖値の乱高下」
脳のトリセツC 脳は「いつも使う回路で」で世の中を認知する
脳のトリセツD 脳神経回路のほとんどは、無意識の領域で使われている
脳のトリセツE 有酸素運動、泣くこと、笑うことは、脳神経に良い効果がある
脳のトリセツF 脳には、「7日一巡感」がある

第二章:7日間プログラム
さりげない生活習慣こそが、脳を劇的に変える

Program 1 夜のてっぺん(午前0時)は寝て過ごす
Program 2 朝、5時45分に起きる
Program 3 寝る前の甘いもの、アルコールをやめる
Program 4 朝の卵は金
Program 5 足裏を磨く
Program 6 ひとり活動をしてみよう(一日1時間、孤高の時間を持つ)
Program 7 ブレーキ言葉を使わない
Program 8 人をとやかく言わない
Program 9 人にとやかく言われよう

第三章:7日間の中で、トライしてみよう
ネガティブな「思い癖」をブロックする

Program 10 くよくよしたら、とにかく寝てしまう
Program 11 身体を動かす
Program 12 ときどき後ろ向きで歩いてみる
Program 13 ダンスか外国語か楽器を習ってみる
Program 14 自分にしか話せない得意分野をつくる
Program 15 口に出して言ってみよう
Program 16 最終目標はハグ。自分も相手も抱きしめよう

 詳細は本書をお読みいただきたいが、脳と身体のバランスに大切なことばかり。若い読者向けの人生指南書という体裁ではあるが、起業家の皆さんにもお勧めしたい。参考にすべき習慣が見つかると思う。

 尚、ホルモンの働き、腸内環境の大切さについては、このブログでも「神経伝達物質とホルモン」「脳腸バランス」の項などで書いてきた。併せてお読みいただきたい。

 思えば「脳と身体」の項を書いたのは2008年9月のこと。あれから早8年が経った。このブログを始めたのは2007年12月、今から9年前のことだ。光陰矢の如し。この本にある7日間一巡感ではないが、7年間一巡感を過ぎ、そろそろブログに幕を下ろす時期かもしれない。

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posted by 茂木賛 at 12:27 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

文化財的家づくり

2016年09月21日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『いい家は無垢(むく)の木と漆喰(しっくい)で建てる』神ア隆洋著(文春文庫)という本を有意義に感じながら読んだ。本カバーの裏表紙から紹介文を引用しよう。

(引用開始)

紙とビニールで作られた幅木、中身がボール紙のドア、重くて耐久性のないセメント瓦――住宅メーカーの言いなりになるとこんなひどい材料の家にされてしまう。無垢の木と漆喰を使った家こそが「いい家」であるという信念で自然素材を使った住宅を造ってきた著者が、理想の家とは何かを豊富な実例を使って明らかにする。

(引用終了)

 無垢の木を使うとは、青森ヒバやヒノキ、松などの材木をそのまま角材や板として使うことだ。合板よりも強度があり美しい。漆喰とは、石灰を焼いて生石灰にしさらに水を吹きかけて消石灰にしたもの。ビニールクロスなどよりも清潔で味わいがある。無垢の木と漆喰の組み合わせは調湿作用があり身体にもよいという。目次よりいくつか本の内容を示す言葉を拾ってみる。

(引用開始)

● 合板フローリングの床で「いい家」と言えるのか
● 集成材や米ツガの土台にビックリ
● 「いい家」は自然素材を使って建てる
● なぜ木は温かくすぐれた断熱材なのか
● 漆喰はなぜ快適な住まいを造るのか
● 有名メーカーだから素材も良質は限らない
● 無垢と合板のフローリングを比べてみる
● なぜ土台に青森ヒバが優れているのか
● 使い勝手のいいキッチンのレイアウト
● 床暖房は借金してでも入れる価値がある
● 長く住み継がれる文化財的家づくりを目指して

(引用終了)
<同書帯裏表紙より>

 このブログでは、これからの日本の街づくりに必要なコンセプトとして、「庭園・芸術都市」(庭園や里山、邸宅美術館や芸術劇場を持つ流域都市)を提唱しているが、その住宅には、長く住み続けることができるこういった家屋が相応しいと思う。 

 同書第4章「後悔しない家づくりの知恵」から神ア氏の言葉を引用したい。無垢の木、漆喰、石、タイルなどの自然素材を使うことは、文化財的家づくりの原点であるという。

(引用開始)

 これまでにたくさんの家を建てさせていただいたが、多くの建築主が、「住み心地がいい」「快適な家」と言ってくださる。これは、無垢の木と漆喰をはじめとする自然素材の力のおかげである。
 文化財というと、法隆寺など歴史のある貴重な建造物が思い浮かぶ。後世の人がいい建築だとその価値を認めてくれれば、文化財となる。家づくりも同じである。今の流行の建物が、今後も末永く生き延びるものなのか、疑問を感じる。
 合板や木片を接着剤で固めた新建材、ポリウレタン、ポリスチレンなど石油化学製品が蔓延する時代、マスコミも頻繁にシックハウス症候群の原因が接着剤や塗料などに含まれる化学物質にあると報じているにもかかわらず、建材メーカーは相変わらずそんな建材を生産販売し続けている。住宅メーカーも、ホルムアルデヒドなど大きな問題になった物質を、害の少ないものに代えることで「安心です」と言っている。
 このような時代の流れに対して、無垢の木、漆喰、石、タイルなど、自然素材を用いた、真に人にやさしい家づくりが、もう一つの大きな流れであると、私は思う。無垢材、自然素材の利用は、文化財的家づくりの原点である。木もヒノキ、松、杉、青森ヒバ、ナラ、タモなど、さまざまな種類を適材適所に使っていくことが大切ではないだろうか。
 本当に「いい家」とは、建築主に満足を与えるだけでなく、普遍的な価値を持つものではないだろうか。そうした価値のある家を、普通の人が少し努力すれば手の届く価格で建てられるようになれば、多くの人に喜ばれ、社会に貢献することになるだろう。そのために力を尽くしたい。
 二一世紀は、自然との調和の世紀になってほしいし、そうならなくてはいけない。そのためにも、正しい意味での文化財的家づくりが、大きな意義を持つ。建てた家が一〇〇年、二〇〇年と歳月を重ねてこそ、素晴らしい建築といえるのである。次の世代に住み継がれる家づくりは、建てた人の誇りとなり、住む人に心の豊かさや安らぎ、喜びや愉しみを感じさせてくれることだろう。

(引用終了)
<同書 303−305ページ>

日本の山には杉や檜の林が多い。そういう材木を使うことは資源リサイクルとしても理に適っている。文化財的家づくりは日本の「庭園・芸術都市」を支える大切な基盤となるに違いない。

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posted by 茂木賛 at 12:53 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

クラフトビールの研究 II

2016年09月13日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「クラフトビールの研究」の項で、クラフトビール(小規模のローカルな醸造所で職人がこだわりをもって造るビール)における各地のブルワリー(や酒店)を十幾つ列記したけれど、ビール造りを事業として考えた場合、大事なのは、どういう「ストーリー(物語)」紡いでいくかだと思う。

 このブログで再三論じている「理念(Mission)と目的(Objective)」からそれは導かれるわけだが、『美味しいクラフトビールの本』エイムック3424(別冊Discover Japan)を参考にしながら、いくつかパターンを考えてみたい。尚、このブログでは会社の理念(Mission)と目的(Objective)について、

「理念(Mission)」:その会社がどのような分野で、どのように社会へ貢献しようとするのかを表現した声明文。

「目的(Objective)」:その会社が具体的に何を達成したいのかをまとめた文章で、理念の次に大切なもの。

と定義している。「ストーリー(物語)」とは、この「理念(Mission)と目的(Objective)」をわかりやすく顧客に伝えるものと捉えてよいだろう。

パターン(1):日本のクラフトビールの特質(品質だったり材料だったりテイストだったり)を広く世界にアピールするストーリー。→「常陸野ネストビール」など。

パターン(2):都会的なライフスタイルの一部として陽気でカーニバル的な「場」をつくりクラフトビールの魅力を訴求するストーリー。→「スプリングバレーブルワリー」など。

パターン(3):ローカル食材とのマッチングや生活文化との接点を考えてクラフトビールと共にその地方の魅力を発信するストーリー。→「ベアレンビール醸造所」など。

パターン(4):地域コミュニティとのつながりを大切にして(商店街の一角などに)交流の「場」を設け日々新鮮なビールを提供するストーリー。→「西荻ビール工房」など。

 もちろん物語はどれか一つである必要はなく、パターンの組み合わせ技もあるし、これ以外のパターンもあるだろう。上記はあくまでも『美味しいクラフトビールの本』から拾い上げたもの。例として挙げたブルワリーも記事からの印象に過ぎない。だが「クラフトビール」という特性を考えると、ストーリーは概ねこれら4つのパターンに集約されるのではないだろうか。

 パターン(1)は、輸出産業としてのクラフトビールである。日本の独自価値追求型といえる。このパターンの逆もあって「カピオンエール」では「日本でイギリスのクラフトビールのおいしさを伝えたい」ということで、麦芽やホップといった素材はすべてイギリス産を使っているという(『美味しいクラフトビールの本』140ページ)。

 パターン(2)は、都会的なライフスタイルにおけるクラフトビールの魅力を探るもので、都市的「モノコト・シフト」追求型といえる。例として挙げた「スプリングバレーブルワリー」の経営元はキリンビール。クラフトビールとビール市場全体の活性化を目指しているという(同誌134−135ページ)。代官山と横浜に専門の店舗があり、そこでは音楽とのコラボやビールセミナーなども行われる。

 パターン(3)は、観光業も視野に入れた地域起こし追求型。他業種とのシナジー追求型でもある。例に挙げた「ベアレンビール醸造所」について、『美味しいクラフトビールの本』には、

(引用開始)

「僕らは『クラフトビール』という言葉はあまり使いません。あくまで『地ビール』なんです」と話すのは、「ベアレンビール醸造所」の専務・嶌田(しまだ)洋一さん。地域の人たちと一緒に岩手のビール文化をつくっていきたいという思いを「地ビール」という言葉に込める。

(引用終了)
<同誌 041ページ>

とある。

 パターン(4)は、地域コミュニティ密着型。クラフトビールの新鮮さが売りで、例に挙げた「西荻ビール工房」の店の写真には、200リットルが醸造可能なタンクの上に「ただ今、発酵中。」という札が置いてある(同誌141ページ)。

 以上、4つのパターンをみたが、事業が軌道に乗って次のステップを考えるとき、同じパターン内でストーリーを広げるのか、別のパターンとの追加統合か、まったく新しいパターンを考えるのかは、企業戦略(持てる資産と市場の分析に基づく最適なビジネスモデルの構築)に拠る。

 その際、留意すべきポイントを一つ。このブログでは会社の「理念(Mission)と目的(Objective)」の重要性を説いているが、その存在を忘れると、物語としての一貫性が失われて失敗する。地域密着型でやってきたのに売り上げを伸ばしたいから他所で委託販売を始める、いろいろな活動で「場」を盛り上げてきたのに予算が減ったから活動を抑える、地道な活動で地域文化に貢献してきたのに儲かりそうだからインバウンド向けの地ビール量産に走る、などなど。成功しかけた会社が往々にして陥る落とし穴だ。

 以上、クラフトビールのストーリー(物語)について考えたが、こういったことは他の業種でも参考になると思う。

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posted by 茂木賛 at 16:31 | Permalink | Comment(0) | 起業論

クラフトビールの研究

2016年09月06日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 「皆と同じ」から「それぞれのこだわり」へ、という21世紀のトレンドについて、クラフトビール(小規模のローカルな醸造所で職人がこだわりをもって造るビール)を例に「ビール経済学」を書いたのは、今から2年前(2014年9月)のこと。その後も、このトレンド「モノコト・シフト」を背景に、クラフトビールは特に先進国で順調に売り上げを伸ばしているようだ。

 今年の7月に出版された『日本クラフトビール紀行』友清哲著(イースト新書Q)は、そういったクラフトビールの醸造所(ブルワリー)や酒店を日本各地に訪ねる本だ。カバー裏表紙の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 クラフトビールの登場により、ビールは「とりあえず」で注文するものから、メニューを熟読して好みの銘柄を選択するものへと変わりました。本書は、日本全国、北は北海道から南は沖縄まで、15のブルワリーを巡って出会ったビールの物語。背景を知ることでビールはより一層旨くなり、また、訪れた旅先の景色を楽しむように土地のビールを堪能することは、現代ならではの醍醐味と言えるのではないでしょうか。ビール党も、そうでない人も、最高の一杯と出会う旅に出ましょう。

(引用終了)

ということで、同書には以下のブルワリーや酒店が登場する。クラフトビール製造は、1994年の酒税法改正によって可能になった事業だからまだ日が浅く、その分若い人の起業が目立つ。

● 神奈川県厚木市・サンクトガーレン有限会社
● 滋賀県長浜市・長濱浪漫ビール株式会社
● 岡山県岡山市・宮下酒造株式会社
● 北海道江別市・SOCブルーイング株式会社
● 東京都品川区・品川懸株式会社
● 福島県いわき市・浜田屋本店
● 青森県南津軽郡・そうま屋米酒店
● 京都市左京区・一乗寺ブリュワリー
● 静岡県伊豆の国市・株式会社蔵屋鳴沢
● 北海道小樽市・小樽倉庫No.1
● 東京都墨田区・ミヤタビール
● 東京都西多摩郡・VERTERE
● 沖縄県沖縄市・コザ麦酒工房
● 沖縄県南城市・株式会社南都
● 沖縄県名護市・ヘリオス酒造株式会社
● 埼玉県飯能市・株式会社FAR EAST

何処にもユニークな経営者がいて、それぞれの起業物語を持っている。分野は違っても、起業の際の参考になると思うので一読をお勧めしたい。

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posted by 茂木賛 at 12:01 | Permalink | Comment(0) | 起業論

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