夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


動的平衡とは何か

2014年04月29日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 『動的平衡 ダイヤローグ』福岡伸一著(木楽舎)を読む。副題に「世界観のパラダイムシフト」とあるが、この本は、『動的平衡』(木楽舎)及び「動的平衡 2」(木楽舎)の著者福岡氏による、新しい世界観についての対談集だ。

 動的平衡とは何か。本書のプロローグの一部を引用したい。

(引用開始)

 私は、とがった鉛筆で紙の上にくるりと丸い楕円を書いてみせた。そして、若い学生たちに向かってこんなふうに問いかけてみた。

 ――ここに細胞があるとしよう。生きた細胞が一粒。では、いったいこの細胞のどこに生命が宿っているか、指し示すことができるかい。

 百人の学生がいたとすれば、その百人ともが、そんなことは明らかです、ここです、と楕円の真ん中をさすことだろう。

 でもそれは違う。細胞の生命は、細胞のなかにあるんじゃない、そこにあるのは細胞が囲い込んだ単なる液体だ。そして細胞の外にあるのも、細胞が追い出した液体にすぎない。では細胞の生命はどこにあるといえるのか。それは、まさにここにある。

 私は鉛筆の先を、さきほど一筆で書いた細い線の上にそっとおく。

 生命の本質はその動きにある。生命は細胞の内にあるのではない、むろん生命は細胞の外にあるわけでもない。生命は、内と外のあいだ、つまり境界線上にある。

 でも境界線――つまり細胞のうちと外を仕切る境界線――そのものが生命だというわけでもない。生命は境界線上の動きにある。外側から物質とエネルギーと情報を選り分けながら取り込み、内側から溜まったイオンと老廃物とエントロピーを汲み出す、そのたえまのない動きのなかに、生命の本質がある。

 細胞膜という存在そのものではなく、細胞膜という状態を考えること。構成要素ではなく、要素のありようによって何かを語ろうとすること。『動的平衡』(二〇〇九年)、『動的平衡2』(二〇一一年)を通じて、私が語りたいと思ったものも、そういう「場」のことだった。

 動的平衡という場においては、合成と分解、酸化と還元、エネルギー生産とエネルギー消費、コーディングとデコーディング、秩序の構築と無秩序の生成、そういった相反することが同時に行なわれる。そこには明確な因果律がない。原因は結果となるが、結果もまた原因となる。そして同じ原因は同じ結果を二度と生み出すことはない。動的平衡という場においては、すべてが一回性の現象として生起する。その上で、そこには一定の平衡、一方向の反応とその逆反応とのあいだの速度にバランスが生み出される。そのような動的なものとして生命を再定義したい。それが動的平衡である。

(引用終了)
<同書 1−3ページ>

対談の相手は、各分野で活躍する作家や画家、建築家など8人。カズオ・イシグロ、平野啓一郎、佐藤勝彦、玄侑宗久、ジャレド・ダイアモンド、隈研吾、鶴岡真弓、千住博といった面々。

 福岡氏の「動的平衡」という生命の本質を示す言葉は、要素還元論や機械論に対するアンチテーゼとして、モノコト・シフト時代(モノよりもコトを大切に考える新しいパラダイム)の世界観を代表するものだと思う。これからも、この生物学者の仕事から目が話せない。

 尚、福岡のほかの著書について、以前「マップラバーとは」「イームズのトリック」「贅沢な週末」の項などで紹介したことがある。また、本書の千住博氏との対談の内容は、先日「21世紀の絵画表現」の項で一部を引用した。併せてお読みいただければ嬉しい。

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里山システムと国づくり II 

2014年04月22日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 『しなやかな日本列島のつくり方』藻谷浩介著(新潮社)は、『里山資本主義』(角川oneテーマ21)の共著者藻谷氏による、日本再生へ向けた対談集だ。対談の相手は、現場に腰を据えた各分野の専門家7人。

第一章「商店街」は起業家精神を取り戻せるか――新雅史(社会学者)
第二章「限界集落」と効率化の罠――山下裕介(社会学者)
第三章「観光地」は脱・B級志向で強くなる――山田桂一郎(地域経営プランナー)
第四章「農業」再生の鍵は技能にあり――神門善久(農業経済学者)
第五章「医療」は激増する高齢者に対応できるか――村上智彦(医師)
第六章「赤字鉄道」はなぜ廃止してはいけないか――宇都宮浄人(経済学者)
第七章「ユーカリが丘」の奇跡――嶋田哲夫(不動産会社社長)

ということで、商店街、限界集落、観光地、農業、医療、鉄道、街づくりについて、現状を踏まえた上で、21世紀の展望を語る内容となっている。

 『里山資本主義』については、以前「里山システムと国づくり」の項でも紹介したことがあるが、藻谷氏は、最近の新聞インタビュー記事の中で次のように語っている。

(引用開始)

 「日本には偶然にも自然環境に恵まれた住みやすい場所にある。その結果、金銭換算できない資源が多く、経済成長していない田舎でも生きていける。そのことを計算に入れないで日本はダメだダメだと言っているのを見直しましょうという話です」
 「マネー資本主義の最大の問題は、お金をもうけるのに未来から奪い取るやりかたをすること。簿外資産を消費して蓄財している。簿外資産は地下資源や水、大気、そして子どもです」
 「未来から子どもを奪い取り、未来に汚染物質の借金を残している。里山資本主義では資源の循環、再生が可能な範囲でほどほどに稼ぐ」。

(引用終了)
<東京新聞 3/30/2014>

 この対談集において、藻谷氏はこういったご自分の考えを、分野別に専門家と共に検討し、具体的な解決策を見出そうとする。その意味でこの本は、『里山資本主義』の続編、実践編といっても良いだろう。地域密着型スモールビジネスの起業を目指す人にとっても、大切なヒントが詰まっていると思うので、是非手にしてみていただきたい。

 尚、新雅史氏の著書『商店街はなぜ滅びるのか』(光文社新書)については「近代家族」の項で、神門善久氏の著書『日本農業への正しい絶望法』(新潮新書)については「日本の農業」の項で、それぞれ紹介したことがある。併せてお読みいただければ嬉しい。


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地形と気象から見る歴史

2014年04月15日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 『日本史の謎は「地形」で解ける』竹村公太郎著(PHP文庫)、その続編『日本史の謎は「地形」で解ける 〔文明・文化篇〕』同著(同文庫)という2冊の本を面白く読んだ。著者の竹村氏は、元建設省河川局長で現在は日本水フォーラム事務局長。新聞の書評によってまず後者の内容を紹介しよう。

(引用開始)

風土から知る意外な事実

 地形と気象の考察を根幹として、歴史の意外な事柄が推論により解き明かされてゆく。幕末、欧米が日本を植民地化しなかったのは、地震の多発とコレラを恐れたことによるという。一九二一(大正十)年を境に乳児死亡率が減少したのは、化学兵器として考えていた塩素をシベリア出兵撤退で水道の殺菌に回したからで、それを行なったのは、細菌学専門の後藤新平(元外務大臣・東京市長)であったと述べる。
 過去、通常では考え得なかった歴史読解の鍵や事柄が随所に示される。徳川家康の鷹狩りは実は地形調査であり、江戸の発展は森林エネルギーに拠るとする。江戸の消費生活を支えたのは参勤交代で出てくる地方の大名たちで、いま東京に出て来て消費生活を送る学生と仕送りをする地方の親は「現代版の参勤交代」であると指摘。
 著者は海外にも目を向け、約百基のピラミッドはナイル川の堤防治水事業で、台地の三基のピラミッドは灯台であったと論じる。一方、日本は既存のダムを利用すべきだと説くなど、河川技術の専門家である著者ならではの立論も示す。歴史の謎に風土に即した工学の光を当て、新しい推理のプロセスが楽しめるオリジナル文庫だ。気温の温暖化に関連して、広大な北海道が百年後の「食料自給のための切り札」となると予測するなど、未来の光明を見る思いがする。「文化は消費である」「弱者のベンチャー企業こそが、新しい工夫をして未知の世界に挑戦していける」と説く。心に残る文章だ。
 地形や地質や災害に悩むのではなくそれを巧みに利用する大切さも学ぶ。民族の性格はその土地の気象や地形が決めるという説も傾聴に値する。古地図や写真など図版も豊富だ。
 なお、同じ著者による『日本史の謎は「地形」で解ける』(同文庫、昨年十月刊)も、京都が千年以上都であり続けた理由を陸路・海路の起点という地形の上から説明するなど、独自の論を展開していて興味深い。

(引用終了)
<東京新聞 3/16/2014(フリガナは省略)>

内容には勿論異論もあるだろうが、竹村氏は河川技術の専門家として、現場に足を運び、データを集め、異なる事象間の関係を推理して、歴史の常識にチャレンジする。だから面白い。

 竹村氏の文明構造モデルについて、『日本史の謎は「地形」で解ける 〔文明・文化篇〕』から引用しておこう。

(引用開始)

 文明は、上部構造と下部構造で構成されている。文明の下部構造は、上部構造を支えている。その下部構造は、地形と気象に立脚している。下部構造がしっかりしていれば、上部構造は花開いていく。下部構造が衰退すれば、上部構造も衰退していく。
 社会の下部構造とは、単なる土木構造物ではない。
 下部構造は「安全」「食糧」「エネルギー」「交流」という4個の機能で構成されている。

(引用終了)
<同書 6ページより>

上部構造(文化)は、「産業」「商業」「金融」「医療」「教育」「芸術」「スポーツ」と分類されている。「地形と気象から見る歴史」とは、このような考えに基づく仮説形成なのである。私が特に面白いと思った章は以下の通り。

『日本史の謎は「地形」で解ける』

第3章 なぜ頼朝は鎌倉に幕府を開いたか
源頼朝が幼少の頃配流になった「伊豆の小島」とは、伊豆半島の中央にある「韮山町蛭ヶ小島」だったとは知らなかった。それだから、彼は少年時代湘南地方を縦横に駆け巡り、やがて土地勘のある鎌倉に幕府を開設したのだという。

第5章 半蔵門は本当に裏門だったのか
江戸城の地形から推理した結論は、西側の半蔵門が江戸城の正門だったとのこと。そこから話は第6章 赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したか、へと繋がっていく。家康と徳川幕府の話は、ほかでもいろいろと分析されている。利根川東遷、参勤交代が果たした役割、江戸への集積システムなどなど。

『日本史の謎は「地形」で解ける 〔文明・文化篇〕』

第3章 日本人の平均寿命をV字回復させたのは誰か
上の新聞書評にもある通り、なぜ日本が世界一の長寿命国になれたかは、大正10年に東京市長だった後藤新平に拠るところが大きいという。改めて後藤新平の伝記を読みたくなる話だ。

第16章 日本文明は生き残れるか
その地形の特色から、日本では分散型の水力発電において、新しいダムを作らずに、全国の既存ダムの運用変更やダムの嵩上げによって、試算上、新たに出力930万kW(100万kWの原子力発電所9基分!)の水力発電が可能という。

 2冊の本には、この他、地形から来る日本人の縮み志向、小型化志向、もったいない精神などについての分析や、気象からくる日本人の気性、将棋誕生の秘密などなど、盛り沢山の内容となっている。皆さんも是非目を通してみていただきたい。

 尚、竹村氏と養老孟司氏との共著『本質を見抜く力』(PHP新書)について、以前「流域思想 II」の項などで紹介したことがある。併せてお読みいただけると嬉しい。養老孟司氏もそうだが、科学技術者の一般書には、新鮮な発想が多く、起業のアイデアとしても様々参考になると思う。

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差異と同一性

2014年04月08日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 『養老孟司の大言論 II 嫌いなことから、人は学ぶ』養老孟司著(新潮文庫)を読む。先日「足に靴を合わせる」の項で、『養老孟司の大言論 I 希望とは自分が変わること』の内容を一部紹介したが、このII巻目では、感覚世界(差異)と内部世界(同一性)を巡って、金や言葉、モノに関する考察が進められる。

 ここで興味深かったのは、ヒトが考え出した「同一性」という内部世界は、コラムという小さな機能単位が繰り返される大脳新皮質の特徴に基礎づけられているのではないか、という仮説である。どいうことか、その部分を引用しよう。

(引用開始)

ヒトが動物として特異な社会を作るのは、脳が大きくなったからである。なかでも大脳新皮質が拡大した。その新皮質は、コラムという小さな機能単位を繰り返す。おそらくそのことが「同じ」というはたらきを生み出したと思われる。感覚でいうなら、コラムはどこから入力を受けるかが違うだけで、コラム自体の機能がそれぞれ異なるわけではない。それが「同じ」というはたらきをおそらく基礎づけている。

(引用終了)
<同書 137ページより>

 ヒトの意識には二面ある。一つは、外界に開かれている面で、主に感覚世界を司る。もう一つは、内部に閉じられた面で、主に精神世界(内部世界)を統率する。養老氏によると、前者は「違う」という世界であり、後者は「同じ」という世界だという。動物一般が持つ感覚世界は、外界にあるものを個物として把握するからすべてが違って捉えられるのに対して、ヒトだけが持つ(と思われる)内部世界は、違ってみえるそれらのものに共通性(同一性)を見出すことに始まるからだ。

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」

という複眼主義の対比でいえば、感覚世界はB、b系であり、内部世界はA、a系といえるだろう。

 以前「脳は自然を模倣する」の項で、ヒトが観察から「意味」を紡ぎだすのは、自然界が離散的なエレメントから「形」を生成する様の模倣ではないかと書いたけれど、大脳新皮質のコラム形態と、「同じ」というヒトの意識形態の類似性は、脳のはたらきが自然を模倣するという点で似たような現象に思える。

 何かと何かを「同じ」と考えるヒトの意識は、「同じ」から外れる「差異」を分類する(できる)ようになり、やがて、それを俯瞰した「階層性」の認識へと辿り着く。「差異」とは「違う」ということだから、ヒトは「何かが違うぞ…」と呟きながら、一度動物的直感に立ち帰るわけだ。そしてまた「同じ」に戻って、今度はさらに「階層性」を認識する。階層性を自然の観察で考えれば、大脳新皮質におけるコラムの6層構造を思い起こすのも良いかもしれない。そして、「階層性」の認識から「弁証法」の発明までは指呼の間だ。

 自然の観察から、「同じ」と考える意識や合目的性の起源、階層性(弁証法)の由来、デジタル・アナログ変換と「意味」の生成、などについて考えるメタレベルでの人間科学は、モノの研究からコトの研究へ、と移り変わるべき21世紀のscienceにおける重要な分野だと思う。

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デンマークという幸せの国

2014年04月01日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 「社交のための言葉」「議論のための日本語」「議論のための日本語 II」の各項において、複眼主義の、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」

という対比から、A、a系の言葉の強化が、近代的社会にとってどれほど重要かということを論じてきたわけだが、ここでその例として、デンマークという国について考えてみたい。

 『デンマーク流「幸せの国」のつくりかた』銭本隆行著(明石書店)という本から、デンマークと日本を比較した文章を引用しよう。

(引用開始)

 デンマークと日本を比べたときに、なにが異なるのだろう。たしかに制度は異なる。しかし、その制度を利用する国民の姿勢そのもに大きな違いを感じる。国民そのものが制度を支えている。ただの客体ではなく主体なのである。自ら積極的に参加し、自分の住みやすい社会を作り上げている。世の中を変えるには、この主体性というものはとても大切だ。
 対して受身の日本人。しかし、ただの制度の受け手では、いつまで経っても望むものは手に入らない。日本人が“主体的国民”となるためのヒントを、これまでみてきたデンマークがら得たい。それはデンマーク人のだれもが持ついかの3つの姿勢である。

「自己決定」
「連帯意識」
「民主主義」

「自己決定」とは、読んで字のごとく、自分で決定するということである。日本人は、自分でものごと決めているだろうか? たとえば、多くの外国人が日本人を評して、「おとなしい」「いうことを聞いてくれる」。しかし、これらは裏を返せば、「意見をいわない」「自分の考えを持たない」と消極的な意味も含まれる。
「連帯意識」とは、他人との共同である。自己主張が強いデンマーク人は、この意識を強く持っている。考え方や背景が違えど、「同じ人間」ということで、手をお互いに差し伸べあう。妬み、嫉み、お互いの足の引っ張りあい、が常態の日本とは大きく異なる。
「民主主義」とは、政治システムの話ではない。簡単にいえば、「徹底的に話し合ってものごとを決める」という姿勢である。これは、デンマーク人に徹底的に浸透している。デンマーク人と話していると、1時間に1回は絶対に「デモクラシー(民主主義)」という言葉がついて出てくるほどだ。
 こうした「民主主義」が機能する前提として、「自己決定」と「連帯意識」の原則は不可欠である。つまり、「自己決定」をする主体的な国民が、相手の意見も認める「連帯意識」を持つことで、はじめて「民主主義」は可能なのである。「自己決定」「連帯意識」「民主主義」のいずれかひとつが欠けても、デンマークという国は成り立たない。

(引用終了)
<同書 227−228ページ>

私はデンマーク語が分らないし、まだ訪れたこともないから、この本に全面的に依存するしかないのだが、「主体性」を主格中心、「受身」を環境中心と言い換えれば、銭本氏の主張は、複眼主義の対比構造に当て嵌まるように思う。

 デンマークは、最近のいくつかの幸福度調査において世界1位に輝いている。勿論近代国家の幸福度は、地理的な位置、自然環境や歴史状況、国のサイズなどにも左右されるだろうが、言葉の力も大きい筈だ。デンマーク語は英語と同じ西欧の言葉だから、A、a系の言葉が強いものと思われる。国連による2010−2012の間の国別幸福度ランキングを見ても、

1.デンマーク
2.ノルウェー
3.スイス
4.オランダ
5.スウェーデン
6.カナダ
7.フィンランド
8.オーストリア
9.アイスランド
10.オーストラリア

ということで、西欧系の国々が上位を占めている。

 『デンマーク流「幸せの国」のつくりかた』を読むと、社会が抱える問題点も含めて、デンマークのことが多少わかる。新聞の書評も載せておこう。

(引用開始)

 さまざまな「幸福度調査」で一位となり、高福祉で知られる国デンマーク。本書はその社会保障制度などをわかりやすく解説する。
 著者は、福祉や教育を専門とするデンマークの国民高等学校「日欧文化交流学校」の学院長。時事通信と産経新聞で11年間の記者経験がある。豊富な経験と取材に基づいて、この「幸せの国」の歴史や文化を、ユーモアを交えた筆致で紹介。有名な高い税金、若者の生活保護や薬物依存の増加、高い犯罪率など、負の側面にも鋭く切り込んでいる。
 それにしても、福祉の充実ぶりには改めて驚かされる。法定の「週37時間労働」が順守され、「夫が午後3時に帰宅するのがストレス」という妻の声も。転職経験は平均6回、資格取得のために休職する間も給与が支払われる支援制度……。日本では考えられないことばかりだ。
 社会を支えているのは、自分の意思を貫く「自己決定」、他人との協調を重んじる「連帯意識」、そして徹底的に話し合う「民主主義」というデンマーク人気質。著者は日本人に向けて、この3点こそが「“自分の人生”を生きていくために役立つツール」だと説いている。

(引用終了)
<毎日新聞 11/4/2012>

 複眼主義の考え方が間違っていなければ、以前「日本語の力」の項でみたように、日本語のような母音言語は世界でも珍しいから、B、b系の力(現場で与えられた環境を守り何かを紡ぎだしてゆく力)ランキングでは、日本は世界一なのではないか。これで、我々が少しでもA、a系の力を鍛えれば、全体としての幸福度ランキング上昇は間違いないと思われる。皆さんも是非この本などを読みながら、言葉の持つ力に想いを馳せていただきたい。

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