夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


ヒト・モノ・カネの複合統治

2014年01月29日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 前回「nationとstate」の項で、

(引用開始)

 これからのstateの統治のあり方は、他の地域でも、EU方式の延長線上にあるのではないだろうか。すなわち、ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること。それが、これからのstateの統治に求められるのではないだろうか。

(引用終了)

と書いた。今回は引き続きこのことについて考えてみたい。ヒト・モノ・カネは、「経済の三層構造」それぞれの主役である。

「コト経済」<主役:ヒト>

a: 生命の営みそのもの
b: それ以外、人と外部との相互作用全般

「モノ経済」<主役:モノ>

a: 生活必需品
b: それ以外、商品の交通全般

「マネー経済」<主役:マネー>

a: 社会にモノを循環させる潤滑剤
b: 利潤を生み出す会計システム

という具合だ。

 「nationとstate」の項で述べたように、stateのあり方は、nationの側でその「理念と目的」を定めるわけだから、『ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること』とは、nationに帰属する人々が、その「理念と目的」に基づき、自らの「コト経済」(a、b)、「モノ経済」(a、b)、「マネー経済」(a、b)、それぞれについて、その「居場所と機構」(と各層の連携)を考えることに他ならない。

 モノコト・シフトの時代、多くの人々の間では、特にa領域(生命の営み、生活必需品、モノの循環)への求心力と、「コト経済」(a、b両領域)に対する親近感が増す。一方で、一握りのgreed(過剰な財欲と名声欲)に囚われた人々の間では、「マネー経済」、特にb領域への(国境を越えた)固執が強まるだろう。

 これらを前提に、たとえばnationを「○○流域人」と仮定し、そこでは、ある程度の農業資源があり、観光資源も豊富だったとしよう。その場合、

「コト経済」<主役:ヒト>

a: 生命の営みそのもの →「地域密着の福祉型」
b: それ以外、人と外部との相互作用全般 →「芸術立国を目指す」

「モノ経済」<主役:モノ>

a: 生活必需品 →「多品種少量生産」
b: それ以外、商品の交通全般 →「輸出入で賄う」

「マネー経済」<主役:マネー>

a: 社会にモノを循環させる潤滑剤 →「地域通貨+グローバル通貨」
b: 利潤を生み出す会計システム →「特区の設置」

といった基本方針が考えられる。「○○流域国(state)」は、その「理念と目的」を国内外に明示し、この基本方針に沿って、ヒト・モノ・カネの複合統治システムを設計すれば良い。ただし、安全保障や外交に関しては、隣国や他国と条約を結ぶ必要がある。

 勿論、現実には様々な柵(しがらみ)があって、「○○流域国」の樹立は空想的だが、モノコト・シフトが進行する中、そう遠くない将来、人々はこのような道筋で、自分たちの暮らすstate(居場所と機構)について、考えを巡らすようになると思うがいかがだろう。

 この「ヒト・モノ・カネの複合統治」、別の角度から見れば、以前「世界の問題と地域の課題」や「地方の時代 II」の項で指摘した世界の問題点:

1.コーポラティズム、官僚主義、認知の歪み
2.環境破壊
3.貧富格差の拡大

に対する改善策の一つとして捉えることも出来る。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 10:52 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

nation と state

2014年01月21日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『老楽国家論』浜矩子著(新潮社)を読んでいたら、nationとstateに関して、次のような文章があった。

(引用開始)

 国民国家を英語でいえば、nation stateである。nationが国民すなわち人々だ。stateが国家である。国民国家という日本語を使うと、どうも、国民と国家が表裏一体・渾然一体となっている感が強くなる。だが、nation stateと言い替えてみると、いささかイメージが違う。人々の集団としてのnationがある。その集団を構成員とし、その集団のために存在する居場所と機構としてのstateがある。こんな感じである。

(引用終了)
<同書 81ページ>

nationとは、文化や言語、宗教や歴史を共有する人の集団、すなわち民族や国民を意味し、stateとは、その集団の居場所と機構を意味するという。日本は、歴史的な経緯から「民族・国民」と「国家」の一体性が強いが、二つは必ずしもイコールではないわけだ。

 以前「里山システムと国づくり」の項で、「民族国家」という概念は20世紀の遺物なのではないだろうか、と述べたけれど、ここで、改めてnation(民族・国民)とstate(国家)について考えてみたい。

 まずnationについて考えてみよう。このブログでは、21世紀はモノコト・シフトの時代、すなわち、モノよりもコトを大切にする生き方・考え方の時代だと指摘してきた。それは、20世紀の大量生産・輸送・消費システムと、人のgreed(過剰な財欲と名声欲)が生んだ“行き過ぎた資本主義”に対する反省として、また、科学の「還元主義的思考」による“モノ信仰”の行き詰まりに対して生まれた、新しい時代のパラダイムだ。

 人々が共有する価値観を紡ぐ“コト”は、常に「場所」において生じる。従って、モノよりもコトを大切にする集団の規模は、“モノ信仰”の時代よりも、小さなものになると思われる。勿論、集団の文化や言語、宗教や歴史、あるいは経済状況によってその規模はまちまちだろうが、総じて、今のnationという括りは、これからより分裂圧力を高めると思われる。スペインのバスクとカタルーニア地方、イタリアの北部同盟、イギリスのスコットランド、日本の沖縄などなど。そもそも1991年のソ連崩壊はその前兆だったのかもしれない。

 次にstateについて考えてみよう。nationと違い、stateは人々の「居場所・機構」である。従ってそれは、人々の間で合意された「理念と目的」に基づいて、合理的に統治・運営されなければならない。『老楽国家論』で浜氏は、

(引用開始)

 国家とは、基本的に国民を顧客とするサービス業だ。顧客満足度の極大化こそ、国家の仕事だ。

(引用終了)
<同書 88ページ>

と述べておられる。今は、ヒト・モノ・カネが国境を越える時代だ。nation(民族・国民)という括りへの分裂圧力と、ヒト・モノ・カネの流動性の強まり。そういう時代、state(集団の居場所・機構)の統治は、昔に較べて、遥かに複雑なものにならざるを得ないと思われる。その一例が欧州連合(EU)の統一通貨政策だろう。ヒト・モノとマネー管理を分離することで複雑な時代に対応しようとしているわけだ。

 これからのstateの統治のあり方は、他の地域でも、EU方式の延長線上にあるのではないだろうか。すなわち、ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること。それが、これからのstateの統治に求められるのではないだろうか。ヒト・モノ・カネを一元的に管理・運営しようとする(民族国家のような)統治は、これからの時代にそぐわないものになってきていることは確かだと思われる。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 10:35 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

脳は自然を模倣する

2014年01月14日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先日「勝負の弁証法 II」の項で、人(の脳)が考え出した弁証法というロジックは、自然界の出来事や生物進化の様子を模倣したものに違いないと書いたけれど、他にもいくつか、人の脳が真似たと思われる自然の特徴を挙げてみたい。

 例えば脳の合目的性。養老孟司氏はその著書『脳と自然と日本』(白日社)のなかで、人の脳が持つ合目的性(予測とコントロール)は、生物が進化の過程で積み重ねてきた合目的的な遺伝子情報システム(本能)の模倣ではないかと論じておられる。

 例えばデジタル情報のアナログ変換。『面白くて眠れなくなる素粒子』竹内薫著(PHP研究所)に、

(引用開始)

 実際、私たちはテレビを見ていても、ピクセルごとに分解してみているわけではありません。
 ピクセルごとに分解するのがデジタルの本質ですが、私たちはなめらかな映像があると認識する。人間はアナログ的にとらえるのです。
 おそらく人間の脳は、アナログ処理をするようにできているのでしょう。しかし、世界の本質はデジタルなのです。

(引用終了)
<同書 88ページ>

とある。人の脳は、目や耳から入ったデジタルな情報を、「意味」というアナログ情報に変換するが、これは、原子や分子を集めて「形態」を生成する自然界の模倣ではなかろうか。構造としてのデジタルと、機能としてのアナログ。

 世界の本質はデジタルだが、自然界は、ゆらぎによって形態を生み出し、多様な階層性を作り出してきた。弁証法は、自然界の「階層性」の模倣だった(生物の階層性については以前「階層性の生物学」の項で触れたことがある)。「形態形成」と「階層性」、それとさきほどの「合目的性」。人の脳は、このように、自然の様々な力を模倣しながら、都市や文明を作り出してきたようだ。

「階層性」=弁証法
「形態形成」=D/A変換
「合目的性」=予測とコントロール

 21世紀のモノコト・シフトは、20世紀の大量生産・輸送・消費システムと、人のgreed(過剰な財欲と名声欲)が生んだ“行き過ぎた資本主義”に対する反省として、また、科学の「還元主義的思考」によって生まれた“モノ信仰”の行き詰まりに抗して表出した新しい枠組み(コトを大切にする生き方・考え方)だが、それが、これからどのような社会の「形態形成」として結実するのか、人々がそこにどのような意味を見出そうとするのか、今から楽しみだ。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 10:34 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

流域地図

2014年01月07日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『「流域地図」の作り方』岸由二著(ちくまプリマー新書)が出た。副題に「川から地球を考える」とある。このブログでは、「山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして考える発想」=流域思想(もしくは流域思考)を、「流域思想」や「流域価値」の項などで紹介してきたが、これはその提唱者である岸氏の新著で、地図作りという遊びを通してその思想を伝えようという、いわば流域思想の入門書だ。まずは新聞の紹介記事によって本の内容を紹介しよう。

(引用開始)

 温暖化や生物多様性危機で変貌する地球環境について、川を軸にして広がる「流域」から考察した環境革命の入門書。
 まずは身近な川で流域地図を作ってみる。道路地図などを用意して、自宅周辺の川を探し、源流と河口をたどる。すると川が最源流につながる本流に支流が合流して大きな流れになっていることが分る。その本流と支流を合わせ水域といい、水域を中心にして広がる雨の集まる大地の範囲を「流域」と定義するそうだ。その流域を一つの単位として、エネルギーや流通の要としての川の役割、生物たちの食物連鎖、そして水循環から地球規模の課題までを考察する「流域思考」の勧め。

(引用終了)
<日刊ゲンダイ 12/12/2013>

 地図といえば、私は相当なマップラバーで、パノラマ地図や立体地図に目がない(「立体地図」)。流域地図は、山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして描くわけだから、それこそパノラマや立体地図に相応しい。日本の109の一級河川(やその他の川)を、源流から、支流、河口まで辿る立体地図があったらどんなに有意義で、且つ楽しいことだろう。しかし、岸氏も本書で述べているが、市販の一般的な流域地図はまだ存在していないようだ。

(引用開始)

 市販の一般的な流域地図はまだ存在していないので、いまはまだ、必要とする個人や団体などが自力で描くほかはない。もっとも有望なインターネットの地図サービスの領域でも、本文でもふれた「Yahoo!」の水域マップまでが現状で、どこでもボタンひとつで地域の流域配置がわかるようなサービスは、まだない。

(引用終了)
<本書 153ページ>

 インターネットを使った流域地図サービス、視点を360度自由に操作したり、拡大や縮小が可能な流域立体地図を作成・提供するのは、技術的にはそれほど難しくないはずだ。「流域価値」の項で述べたように、流域によって生み出される分散型エネルギー、街づくり、文化価値などは、モノコト・シフト時代における重要な基盤となる。そういうビジネス(流域地図作成・提供)を立ち上げたいとお考えの出版社、もしくは起業家がいれば、私も是非お手伝いしたいと思う。

TwitterやFacebookもやっています。
こちらにもお気軽にコメントなどお寄せください。

posted by 茂木賛 at 10:48 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

夜間飛行について

運営者茂木賛の写真
スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)主宰の茂木賛です。世の中には間違った常識がいっぱい転がっています。「夜間飛行」は、私が本当だと思うことを世の常識にとらわれずに書いていきます。共感していただけることなどありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

Facebookページ:SMR
Twitter:@sanmotegi


アーカイブ

スモールビジネス・サポートセンターのバナー

スモールビジネス・サポートセンター

スモールビジネス・サポートセンター(通称SBSC)は、茂木賛が主宰する、自分の力でスモールビジネスを立ち上げたい人の為の支援サービスです。

茂木賛の小説

僕のH2O

大学生の勉が始めた「まだ名前のついていないこと」って何?

Kindleストア
パブーストア

茂木賛の世界

茂木賛が代表取締役を務めるサンモテギ・リサーチ・インク(通称SMR)が提供する電子書籍コンテンツ・サイト(無償)。
茂木賛が自ら書き下ろす「オリジナル作品集」、古今東西の優れた短編小説を掲載する「短編小説館」、の二つから構成されています。

サンモテギ・リサーチ・インク

Copyright © San Motegi Research Inc. All rights reserved.
Powered by さくらのブログ