前回「nationとstate」の項で、
(引用開始)
これからのstateの統治のあり方は、他の地域でも、EU方式の延長線上にあるのではないだろうか。すなわち、ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること。それが、これからのstateの統治に求められるのではないだろうか。
(引用終了)
と書いた。今回は引き続きこのことについて考えてみたい。ヒト・モノ・カネは、「経済の三層構造」それぞれの主役である。
「コト経済」<主役:ヒト>
a: 生命の営みそのもの
b: それ以外、人と外部との相互作用全般
「モノ経済」<主役:モノ>
a: 生活必需品
b: それ以外、商品の交通全般
「マネー経済」<主役:マネー>
a: 社会にモノを循環させる潤滑剤
b: 利潤を生み出す会計システム
という具合だ。
「nationとstate」の項で述べたように、stateのあり方は、nationの側でその「理念と目的」を定めるわけだから、『ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること』とは、nationに帰属する人々が、その「理念と目的」に基づき、自らの「コト経済」(a、b)、「モノ経済」(a、b)、「マネー経済」(a、b)、それぞれについて、その「居場所と機構」(と各層の連携)を考えることに他ならない。
モノコト・シフトの時代、多くの人々の間では、特にa領域(生命の営み、生活必需品、モノの循環)への求心力と、「コト経済」(a、b両領域)に対する親近感が増す。一方で、一握りのgreed(過剰な財欲と名声欲)に囚われた人々の間では、「マネー経済」、特にb領域への(国境を越えた)固執が強まるだろう。
これらを前提に、たとえばnationを「○○流域人」と仮定し、そこでは、ある程度の農業資源があり、観光資源も豊富だったとしよう。その場合、
「コト経済」<主役:ヒト>
a: 生命の営みそのもの →「地域密着の福祉型」
b: それ以外、人と外部との相互作用全般 →「芸術立国を目指す」
「モノ経済」<主役:モノ>
a: 生活必需品 →「多品種少量生産」
b: それ以外、商品の交通全般 →「輸出入で賄う」
「マネー経済」<主役:マネー>
a: 社会にモノを循環させる潤滑剤 →「地域通貨+グローバル通貨」
b: 利潤を生み出す会計システム →「特区の設置」
といった基本方針が考えられる。「○○流域国(state)」は、その「理念と目的」を国内外に明示し、この基本方針に沿って、ヒト・モノ・カネの複合統治システムを設計すれば良い。ただし、安全保障や外交に関しては、隣国や他国と条約を結ぶ必要がある。
勿論、現実には様々な柵(しがらみ)があって、「○○流域国」の樹立は空想的だが、モノコト・シフトが進行する中、そう遠くない将来、人々はこのような道筋で、自分たちの暮らすstate(居場所と機構)について、考えを巡らすようになると思うがいかがだろう。
この「ヒト・モノ・カネの複合統治」、別の角度から見れば、以前「世界の問題と地域の課題」や「地方の時代 II」の項で指摘した世界の問題点:
1.コーポラティズム、官僚主義、認知の歪み
2.環境破壊
3.貧富格差の拡大
に対する改善策の一つとして捉えることも出来る。