前回「政治と経済と経営について」の項で、経済とは、「自然の諸々の循環を含めて、人間を養う社会の根本の理法・摂理である。経済とは、人間集団の存在システムそのものであり、通貨のやり取りはそのごく一部でしかない」と書いたけれど、ここでその「経済」の全体構造について、コト経済、モノ経済、マネー経済、という三つの層に分けて考えてみたい。
「コト経済」とは、食・睡・排といった人の生命の営みそのものを指すと同時に、それ以外の、人と外部との相互作用全般を表す。私の造語だが意味は理解していただけると思う。
「モノ経済」とは、衣・食・住といった生活必需品の循環であると共に、その他、ハコモノ、贅沢品など商品の交通全般を表す。
「マネー経済」とは、モノの循環を助ける潤滑剤としての役割と共に、信用創造と金利を通して、計算上の利潤を齎す会計的仕組みを表す。
纏めると、
「コト経済」
a: 生命の営みそのもの
b: それ以外、人と外部との相互作用全般
「モノ経済」
a: 生活必需品
b: それ以外、商品の交通全般
「マネー経済」
a: 社会にモノを循環させる潤滑剤
b: 利潤を生み出す会計システム
ということになる。
このブログでは、21世紀を「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト(略してモノコト・シフト)」の時代としているが、それは、20世紀の大量生産・輸送・消費システムと、人のgreed(過剰な財欲と名声欲)が生んだ、「コーポラティズム」のような“行き過ぎた資本主義”に対する反省として、また、科学の「還元主義的思考」によって生まれた“モノ信仰”の行き詰まりに対する新しい枠組みとして、(動きの見えないモノよりも)動きのあるコトを大切にする生き方・考え方への関心が高まっている、という意味である。
“行き過ぎた資本主義”と“モノ信仰”は、地球環境の破壊と貧富格差の拡大を齎した。
モノコト・シフトの時代においては、経済の各層において、a領域への求心力が高まってくると思う。a領域(生命の営み、生活必需品、モノの循環)は、地球環境の破壊に直面する人々にとって、より重要な関心事となるからである。
とくにこの時代、(greed以外の)人々の間では、「コト経済」(a、b両領域含めて)に対する親近感が強くなってくるだろう。貧富の格差拡大に直面する人々にとって、所有よりも関係、私有よりも共同利用、格差よりも分配、独り占めよりも分担、といった生き方・考え方が切実なものとなってくる筈だからだ。
a領域(生命の営み、生活必需品、モノの循環)への求心力と、「コト経済」に対する親近感。「経済」をこのように、コト経済、モノ経済、マネー経済と分けて考えることで、今の時代のニーズがより良く見えてくるのではないだろうか。