先日パラパラとスポーツ系雑誌を読んでいたら、ダイエットが成就しない背景には誤った思い込み=認知の歪みがあるとして、幾つかの例が書いてあった。経営についても、業績が伸びない背景に同じことがあると思うので、ここにそれを引用しておきたい。
(引用開始)
減量が成就しない背景には、誤った思い込み=認知の歪みが隠れていることが多い。いくつか典型例を挙げてみよう。
まずは二分割思考。全てか無か、白か黒かと物事を両極端に捉える完全主義者の思考で、一度でもサボると減量を放棄する恐れがある。
過度の一般化も困りモノ。過去のネガティブ体験から、一足飛びに結論を急ぐ傾向である。減量のペースが少し落ちるなど、ちょっとしたつまずきで「まだダメだ↓」とやる気が大幅ダウンする。
悪い面だけを見て、良い面を評価しないのが選択的抽象化。ちゃんとできている目標があるのに、なかなかできない目標ばかりが気になると、成功体験が得にくい。
最後は何事も「〜すべき」「〜してはいけない」と決めつける教義的思考。決め事を少しでも破ると罪悪感が生じ、負い目から行動目標を完全に投げ出しかねない。(後略)
(引用終了)
<“Tarzan”(マガジンハウス)No.619 113ページより>
経営において、これら二分割思考、過度の一般化、選択的抽象化、教義的思考といった「認知の歪み」に陥らないためにはどうしたらよいか。雑誌では、減量のためには他の考えがないか自問自答を繰り返すことを推奨している。
このブログでは、そういった認知の歪みに陥らないために、「複眼主義」という考え方を提唱している。減量といったシンプルな目的の場合は、他の考えがないか自問自答を繰り返すことで足りるだろうけれど、経営といった複雑なオペレーションの場合などは、もっと体系的な考え方が必要だと思う。
体系的といっても、幾つかの視点を並行的に組合わせただけでは、認知の歪みはなかなか取れない。近視の矯正眼鏡と遠視用の眼鏡を一緒に掛けても正しい像が得られないように。
複眼主義では、思考に複数の軸を設定し、生産と消費、理性と感性、男性性と女性性、母音語と子音語など様々な二項対比や双極性を相互に関連付け、世の中を包括的に理解し、バランスの取れた考え方を実践しようとする。
誤った思い込みのまま世の中を見ていると、正しい行動の指針が得られない。得られないどころか、行動が間違った方向へズレてしまい、人生を台無しにしかねない。複眼主義は、
(一) 世の中の二項対比・双極性の性質を、的確に抽出すること
(二) どちらかに偏らないバランスの取れた考え方を実践すること
(三) 特質を様々な角度から関連付け、発展させていくこと
を通して世の中を見、人生における行動の指針を得ようとするものだ。経営にも役立つ考え方だと思う。
今回、「評論集“複眼主義”について」で紹介した本に加え、「複眼主義入門」をiPad-Zine(iPadで読める無料電子書籍サイト)から上梓した。複眼主義のエッセンスを、図を多く用いてわかりやすく解説したので、是非お読みいただきたいと思う。